第112話 生体兵器の定義
ギョッとされたドラゴンはキョトンとして返す。
「なんでと言われても、おまえから似た気配がするからだ」
――じゃあ実は、僕も生体兵器だったってことか!?
アキヒサはパネルに自分のステータスを表示するが、詳細鑑定を確認してもどこにも生体兵器の文字はない。
ドラゴンも大きな顔をぬっと突き出してきて、アキヒサのパネルをのぞき見する。
「……」
その近付いた頭をレイが無言でゲシゲシと蹴ろうとするレイを、アキヒサはやんわりと止めさせる。
「レイ、ドラゴンさんは謝ったんだから、蹴ったり叩いたりは止めてあげようか?」
「プン!」
アキヒサが諭すのに、しかしレイは「知らないもん!」と言いたげにそっぽを向く。
どうやらレイは、「一度謝ったらそれで終わり」とはいかないようだ。
――まあそれに、あからさまに嫌々ながらっぽい謝り方だったしな。
ドラゴンはそんなアキヒサ達の様子をちらっと見つつ、「フゥ」と鼻を鳴らして視線を戻す。
「おまえには兵器と呼べるスキルが入ってないか。
ならば、生体兵器ではないだろう」
そうドラゴンから断定され、アキヒサはホッとするやら残念やらな、微妙な心境になった。
ちょっとだけ無双するのに憧れていたのである。
「しかし、お前はどうやってその肉体を得たのじゃ?」
「それがですね」
アキヒサはドラゴンに改めて尋ねられ、最初から語る。
気が付いたらコンピューターの前にいて、この身体を貰ってレイの事を頼まれたことまでを、サラッと話す。
話を聞いたドラゴンが、「なるほど」と頷く。
「マスターのシステムが引っかけたか。
たまぁに妙な物体をどこからか引っかけることはあったが。
生き物を引っかけたせいで、システムダウンを起こしたんじゃな」
ドラゴンの口から「システムダウン」という単語が出てくることに激しい違和感があるが、アキヒサがここにいることは珍しいことではあるものの、あり得る現象ということのようだ。
「ということはお前の身体は、おそらくワシらと同じベースで作られたのだろうなぁ」
ドラゴンはアキヒサについて、そう結論付けた。
ならばあのコンピューターは、生体兵器のノウハウから肉体だけを流用させたということか。
そう言えば、身体を造るのは上手くいったのに、スキルをつけるのにエネルギー不足だったみたいなことを、コンピューターに言われた気がする。
つまり、生体兵器劣化版が今のアキヒサなのだろう。
アキヒサのことがある程度わかったところで、ドラゴンがレイをジロッと見た。
「それにしても、鬼神は初期化されておったのか。
しかも人間の子どもの姿とは、なんとも凝ったことをしたものよ」
「そうなんですか?」
しみじみと言うドラゴンに、アキヒサは首を傾げる。
――生体兵器的に、レイの存在もイレギュラーなのか?
しかし、生体兵器の普通がなんなのか、アキヒサにはわからない。
これに、ドラゴンが解説してくれた。
「生体兵器はたいていが成体の肉体と知識を与えられて造られるもの。
だがマスターは、鬼神には人間のような成長過程が必要と思われたのかのう?」
ドラゴンは「う~む」と唸ってレイに鼻先を近づけるのに、レイはアキヒサの言葉を守ってじっとしているものの、壮絶に嫌そうな顔をしている。
確かに、近付かれると鼻息が生臭いのはアキヒサも認めるところだ。
「にしては、僕に預けられたのはほぼ事故なんですけど」
「そこは、マスターのみぞ知る、じゃな」
アキヒサが気になる点を告げると、ドラゴンはそう言った。
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