第111話 説明します

レイがドラゴンに謝らせて、満足したところで。


「で? 鬼神はなにゆえにそのようにちいさくなったのだ?」


「あ、それは僕から説明します」


首を捻るドラゴンに、アキヒサは片手を挙げて存在を主張した。


「そう言えば、お前はなんじゃ?」


ここでようやくドラゴンがアキヒサに興味を持ったようだが、いつまでもドラゴンの背中にいるのも変なので、アキヒサはレイをお腹にくっ付けたまま背中から降りて、ドラゴンの正面に立った。

 そして、改めて自己紹介をする。


「僕は戸次明久と言いまして、このレイの保護者です」


「ホゴシャ? とはなんじゃ?」


この説明ではまだ不十分なようだが、詳しく話す前にこちらからも聞きたいことがある。


「あの、あなたはレイを『鬼神』と呼んでいますけど、この子の正体を知っているということですか?」


「正体とな? ああ、生体兵器であることか?」


アキヒサの確認に、ドラゴンは別段特別なことではないと言った調子で話す。


「やはり、ご存知だったんですね」


まずは一つ確認が取れて、アキヒサが「なるほど」と頷いていると。


「そりゃそうじゃろう、ワシの同類だからな」


ドラゴンがぶっこんで来た単語に、アキヒサの思考が一瞬停止する。


「はい?」


 ――同類って、このドラゴンも生体兵器ってことか!?


 驚きの事実を急に告げられ、アキヒサはあんぐりと口を開ける。


「じゃあ、鑑定が通らなかったのはそのせいだったのか?

 いや、けどレイは普通に鑑定できるぞ?」


大混乱してうっかり思考が口から漏れているアキヒサに、ドラゴンがギョロリと目を動かす。


「お前、鑑定スキル持ちか?

 鑑定できなんだのは、ワシが鑑定を弾くようにしておるからじゃろう」


ドラゴンに教えられた内容に、アキヒサはさらに驚く。


「え、鑑定を弾くなんてことができるんですか!?」


「なんじゃ、知らんのか?」


そして驚かれたことに、ドラゴンの方もまた驚いている。


「己よりも高レベルの相手には通じないが、下の連中相手には有効じゃぞ」


なんとまさかの、スキルについてドラゴンの方が詳しいという事実が発覚だ。


「どれ、試しに見えるようにしてやろう」


そう言ったドラゴンの目の前に、アキヒサが扱うのと同じようなパネルが出てきた。

 ただし、ドラゴンサイズで画面がデカい。そのパネルを器用に尻尾で操作するその姿が、なんだか可愛くも見える。


 ――サイズ感は可愛くないんだけどな。


 呆然として眺めていると、「これでよし」とドラゴンが呟く。


「ほれ、もう一度見てみよ」


「はあ、じゃあ鑑定」


ドラゴンに促されて、アキヒサは再び鑑定する。


~~~


名 前 無し

性 別 無し

年 齢 不明(忘却)

職 業 生体兵器No.02

レベル 999

スキル 地神レベル(最大値) 威圧レベル(最大値) 彫刻レベル63


~~~


本当に生体兵器だった。

 しかもレイより一つ上のNo.02。

 確かNo.01が謎理由で欠番なので、となるとこのドラゴンが一番古いということだろう。

 それにレベルが999というのは、もしかしてカンストというヤツなのか?

 鑑定を弾くのが自分よりもレベルが下の相手に有効となると、レベルがカンストしているドラゴンであれば、全ての相手に有効ということだ。


 ――しかも年齢が不明(忘却)って、数えるのが面倒になって忘れたってこと?


 さらに見ると、『地神』なんて凄そうなスキルだが、しれっとある『彫刻』というスキルが気になる。

 デカい図体だけど、チマチマとした彫刻をするのが趣味なのか?

 これらの色々を踏まえて、ドラゴンが話ができるのは魔物じゃなくて生体兵器だったからだろう、とアキヒサは考える。

 魔物のドラゴンみたいな見た目だけど、やはり身体のつくりが魔物とは違うのだろう。


「今度は見えました。

 今はスキルについて詳しい人がいないんで、教えてもらえて助かります」


ともあれ、アキヒサがお礼を言うと、ドラゴンはきょとんとした顔で「そうなのか?」と首を捻る。


「なんと不自由な世になっているのぅ。

 スキルを知らずに暮らすとは、不便だろうに」


憐れむような口調でそんなことを話すドラゴンは、世俗に疎いようだ。

 そのあたり、あのコンピューターと同じらしい。

 アキヒサがそんな事を思っていると、ドラゴンが問題発言をかましてきた。


「ところで、おまえもワシらの仲間かのう?」


「はい!? なんでですか!?」


アキヒサはギョッとする。

 自分はどこまで驚けばいいのだろう? とドキドキする心臓がもつか心配になってきた。

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