第104話 山へ登ろう!
というわけで、その翌日。
「よぅし、行くよレイ」
「ん」
村の入り口には、アキヒサとレイがいた。
レイの本日のスタイルは猟師モードで、見送りに来た猟師たちの顔が和んでいる。
――わかる、この激烈に可愛い猟師さんにはホッコリするよな!
ちなみにモーリスは、盗賊に壊された柵や建物を見回ったり修理について話し合ったりで、忙しそうで見送りには来ていない。
というか、「来なくていいですから」とアキヒサから断っておいた。
忙しい人の時間を割くのは申し訳がないではないか。
そしていよいよ出発するという時、あの年嵩の猟師が表情を引き締めて話しかけてきた。
「様子を見てきてくれるのは、正直ありがてぇ。
が、くれぐれも無理するなよ?
命が一番だからな?」
「もちろんです、『命大事に』ですよね」
アキヒサは某ゲームで有名なワードを告げて、ニコリと笑う。
せっかくあのコンピューターに貰った第二の人生を、簡単に手放す気なんてアキヒサにだってない。
ちょっと様子を見に行って、アキヒサとレイでどうにかできそうな相手ならどうにかして、無理そうならとっとと撤収だ。
それにゴルドー山に入れなくなったせいで、山で採れる希少な薬草類が出回らなくなって、薬が一部足りなくなっているそうだ。
だから少しでも足しになるように、色々採取しながら行くつもりでもある
というわけで猟師たちに見送られつつ、アキヒサたちはゴルドー山へと向かうのだった。
アイカ村を出てからサクサクと山を登ったアキヒサたちは、その日の夕暮れ前に中腹までやって来ていた。
ここまで登ってくるとさすがに寒いし、季節も冬に向かっていることもあって風が冷たい。
このゴルドー山は富士山くらいの高さらしく、日本にいた頃のアキヒサだったら、富士山の山頂に登るなんて絶対に無理だっただろう。
しかも五合目の登山道からのスタートなんかではなく、麓から登るのだから。
でも今の身体は息切れこそするものの、足が重くて動かないということはない。
こんな状況じゃなかったら、もっと登山を楽しみたいくらいだ。
ところでレイの方はどうしても身体の小ささから、運動量がアキヒサよりも多いはずなのに、息を乱してすらいない。
高山病みたいな症状もアキヒサもだがレイにも今のところ出る気配がなく、いたって普通だ。
――レイがゼイゼイする時って、どんな状況なんだろうな?
ちなみにシロはというと、登山早々からアキヒサの懐に潜り込んでいる。
たぶん、こちらが子どもとしては普通だ。
まあ、疲れていないのは、運動量が思ったよりも少ないことも原因かもしれない。
「うーん、薬草系の素材はたくさんあるんだけど、魔物がいないなぁ」
アキヒサはここまでくる間にゲットした成果物を確認する。
そうなのだ、ここまでの道中で魔物はいないこともなかったが、隠れてじっとしている感じであった。
このあたりの魔物は夜行性なのかとも思ったのだが、前にトム少年を探しに来た時に夜だったけれど、やはり魔物が少なかった。
となると、先日のあの鳴き声の主を恐れて隠れているのだろうか?
邪魔されなかったから登山がしやすくはあったので、そこは良かったのだけれども。
魔物の謎は置いておくとして。
アキヒサたちはこのあたりで一泊して、翌朝に山頂へ出発する予定だ。
というわけで、アキヒサはいい感じにひらけた場所にテント住宅を出すと、早速屋内に入った。
「やっぱり、外は寒かったなぁ」
寒さに身体が慣れてきたところだが、屋内に入るとやはり外の寒さを実感する。
テント住宅は気密性が高いようで、冷たい風が遮断されただけで暖かさが身に沁みる。
それでもやはり体が冷えているので、アキヒサは暖を取ろうと暖炉に魔術で火を入れた。
――暖炉を使うのは初めてだなぁ。
珍しいからか、レイとシロがアキヒサの真後ろでジィーッと観察している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます