第五章 ゴルドー山

第87話 やる気満々!

ニケロの街を出て、本日二日目。

 ゴルドー山の麓、アイカ村への道中は順調だ。

 布団のおかげでテントで過ごす夜も身体を痛めずに寝れるので、疲れが翌日に残らないのがいい。

 そして、今日もレイは元気いっぱいに魔物狩りをしている。

 急ぐ旅なのでのんびり狩りはしないと言ってあるのだが、どうやら道沿いがとある魔物の生息域になっているようで、道中の安全確保の意味もあって、それを嬉々として倒しているところだ。

 その魔物というのが、マーダーモンターナというでっかいスズメのような魔物だった。

 スズメと言っても、日本で見るような可愛らしいフォルムではなくて、まず顔が怖い。

 目の周りに赤い隈取みたいな模様があり、つぶらな瞳なんかではなく血走った目でこちらを睨んでいる。

 そしてマーダーという名がついていることからわかるように、敵を認識すると狂ったように襲い掛かってくる。

 けど一度の飛行であまり距離を飛ぶことができないのは、日本のスズメと同じなようで、飛行系の敵とは相性の悪いレイにとっては、数少ない得意な鳥種の魔物と言えるだろう。

 そして鑑定の結果だと、このマーダーモンターナは脂がのっていて美味しいのだそうだ。

 きっとどこかでいい餌を食べているのだろう。

 それにやたらと数が多いので、この連中もどこからか移動して来た口なのかもしれない。

 となるとやはり、放置も良くないということだ。

 そしてレイが張り切ってマーダーモンターナ狩りをしているのは、別に魔物狩りが楽しいからというだけではない。

 そもそものきっかけは、レイが出立初日に食べたアーマーバッファローの牛丼を気に入ったことだ。

 確かに、アーマーバッファローの牛丼は美味しかった。

 レイはブリュネの農園で作った肉団子も美味しく食べてくれたのだけれど、それよりも牛丼の方がより好みだったみたいだ。

 肉らしさを感じられる料理の方がいいのか?

 だったらなんという肉食三歳児なんだろうか。

 なら今度、アーマーバッファロー100%のハンバーグを作ってやると、どんな反応になるのか興味がある。

 それはともかくとして。

 イビルボア(豚肉)にアーマーバッファロー(牛肉)ときたら、アキヒサとしても気になるのは第三の肉である鶏肉なわけで。


「鶏肉ってなったら、どの魔物になるのかな?」


そんなアキヒサの呟きをしっかりバッチリ覚えていたレイにとって、このマーダーモンターナ飛んで火にいるなんとやら、というわけだ。

 そんなこんなで、鳥肉狩りにしばし精を出し。


「よーし、もういないかな?」


「いない」


見渡して死屍累々なマーダーモンターナを見ながら、確認をする。

 レイの気配察知にも引っかからないということは、これで全部なのだろう。

 ならばさっさと片付けなければ迷惑だ。

 ほとんどレイ、ちょっとだけアキヒサが倒したマーダーモンターナを鞄にしまいつつ、これをどうしようかと悩む。


「うーん、スズメ系かぁ」


どんなメニューにしようか考えるアキヒサに、レイはマーダーモンターナを引きずりながら集めつつも、期待の籠った目を向けてくる。


 ――そうか、そんなに鳥料理が食べたいのか。


 けれどアキヒサは解体が出来ないので、どこかでお願いしなければならない。

 アイカ村でやってくれるだろうか?

 それとも今後を考えて、解体技術を身に着けるべきか?

 というか、魔法でパパっとやれる術はないものか。

 そしてスズメ料理というと居酒屋でたまに見た姿焼きを思い出すが、さすがにこの大きさの姿焼きはどうだろう?

 デカすぎて火が通らない気がする。

 あと実は卵とかも回収しているので、それで親子丼を作ってみようか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る