第81話 やっと出会えた人
こんな大騒ぎをして、その日は仕事をするのをやめにして一日レイとゆっくり過ごした、翌日。
「今日はどんなお仕事があるかね~」
「まものたいじ」
アキヒサたちはそんな話をしながら、朝から冒険者ギルドへ依頼を見にやって来た。
「あれ……」
すると、建物の中で見たことのある背格好の人を見かける。
「もしかして、ガイルさん?」
「あ? おぉ、アキヒサじゃねぇか」
アキヒサが呼び掛けたのにこちらを振り向いたのは、リンク村で出会ったガイルだった。
「なんだ、やっぱりニケロに来たのか」
「はい、お久しぶりです。その節はお世話になりました」
朗らかに話しかけてきたガイルに、アキヒサはそう応じる。
「お、ちゃんとチビもいるな」
「ん」
ガイルの視線がアキヒサの足元に向くと、そこにいたレイが胸を張って存在を主張しつつ、抱えていたシロを持ち上げた。
「なんだぁ?
ウィングドッグの子どもたぁ珍しいな」
そのシロを、ガイルがしゃがんでしげしげと見る。
――そう言えば、シロについて改めて誰かに聞いたことがなかったな。
「このあたりだと、ウィングドッグは見ないんですか?」
アキヒサがこの際だからと聞いてみると、ガイルが「ああ、そうだな」と頷く。
「コイツらは、もっと離れた場所に住んでいるはずだぜ」
「やっぱりそうなんですね。実は……」
アキヒサがシロを発見した状況を説明すると、ガイルが立ち上がりつつ「なんとまぁ」と零すと、呆れ顔でシロに目をやる。
言外にどんくさいと言いたいんだろう、アキヒサも同じように思ったので、否定はしない。
立ち話もなんだからということで、アキヒサたちは冒険者ギルド内の食堂へと移動した。
「聞いたぞ、新人なのにすげぇ活躍の奴がいるってな。
飛び級で三級だって?
おめぇ、そんなに強かったんだなぁ」
早速ガイルが感心した様子でそんなことを言う。
アキヒサはリンク村でガイルの前で戦闘をして見せなかったので、こちらの実力なんて知るはずがない。
「ははっ、ありがとうございます」
ここで謙遜しても嫌味だろうしと、アキヒサは褒められて素直にお礼を言っておく。
「ありがとござます」
アキヒサがお礼を言うととりあえず復唱する癖がついてきたレイが、同じようにお礼を言う。
「そう言うガイルさんは、これから仕事ですか?」
「あん? 俺ぁ呼び出しだ」
アキヒサの質問にそう話すガイルによると、今日明日にでも出立するという話だったゴルドー山の調査隊だが、それに参加するのだという。
アキヒサはガイルはニケロの街にいると聞いていたのにさっぱり会わないと思っていたら、どうやら依頼で街を離れていて、つい昨日帰って来たようだった。
「それが戻ったとたんにブリュノルドに呼び出しだよ、ついてねぇったらよぉ。
せめて一日休ませろってんだ」
そうボヤくガイルだが、ギルドマスターであるブリュネを本名で呼び捨てだなんて、よほど信頼のある仲なのだろう。
長い付き合いの仲なのかもしれない。
しかし、休む間もないとはちょっとかわいそうに思う。
「なんというか、ご愁傷様です」
「ごしゅーしょーさま」
苦笑するしかないアキヒサが、ガイルにそう言っていると。
「おや、ガイルさんはトツギさんとお知り合いでしたか」
そんな声が聞こえたかと思ったら、背後にニールが立っていた。
「おうよ、コイツらとはリンク村で会ってな」
ガイルの答えに、ニールが軽く頷く。
「なるほど、よくあなたが休暇で向かう村ですね。
のどかで良い村だと聞き及んでおりますよ。
ところでトツギさん、今日はまだなにも依頼を受けていませんね?」
「え、はい、そうですけど」
台詞の最後にニールに突然そう尋ねられ、アキヒサはそう応じる。
どうもアキヒサたちはニール専属みたいな認識が受付の人たちに広まっているみたいで、アキヒサたちが受付に並ぶと「少々お待ちください」と言われて、ニールを呼ばれてしまうのだ。
だからまだニールに会っていない今日は、依頼もまだ受けられていないといことなのだが。
――改めて確認されるなんて、どうしたんだろう?
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