異世界では幼児が最強のようです～元社畜による正しい生体兵器の育て方

第79話 野菜が美味しい

「やっぱり便利ねぇ、料理スキルって」

アキヒサがあっと言う間にひき肉を作ったのを見て、ブリュネが羨ましそうだ。

　包丁でこの作業をやろうと思ったら凄い労力なので、羨むのもわかる。

「できれば知り合いの料理人の人にも、料理スキルの事を教えてあげたいんですけど……」

アキヒサのこの言葉に、ブリュネが「まだやめておいた方がいいわね」と告げてくる。

「うっかり教会に知られたら揉め事になるわ」

「ですよねぇ」

ブリュネの指摘に、アキヒサも頷きつつも肩を落とす。

　早く誰でもスキルが使えるようになればいいのだが。

　スキルの事は置いておくとして、ロールキャベツ作りだ。

　まずは簡易竈を作ってお湯を沸かし、そこでキャベツの葉を茹でてから粗熱をとっておく。

　次に肉だねの材料を粘りが出るまで混ぜ合わせたら、俵型に整える。

　これを粗熱のとれたキャベツの葉に巻き、スープで煮込めば完成だ。

　ひき肉はイビルボアとアーマーバッファローの肉を合い挽きにしてみた。

「これ、アタシにも作れそうだわ」

「材料さえ揃えれば、混ぜて巻いて煮込むだけですからね」

煮込んでいる鍋をのぞき込むブリュネに、アキヒサはそう返す。

　ブリュネは刃物の扱いが上手いので、手伝ってもらった玉ねぎのみじん切りを綺麗にやってみせた。

　やる気の問題だっただけで、きっと料理に向いている人なのだろう。

　そうこうしているとロールキャベツが出来上がったので、皿に盛りつける。

　ちなみにレイにはロールキャベツはまだ食べにくいだろうということで、肉団子と茹でキャベツというメニューになっている。

　こうして料理が揃ったところで地面にシートを敷いて、三人と一匹で円になって座ると、その中心に料理を並べる。

「「いただきます」」

「アン！」

アキヒサたちの食前の挨拶とは別に、ブリュネは目を閉じて祈るようにしていた。

　なんでもブリュネの故郷では、食事の前に神様に祈りを捧げるのだそうだ。

　それが終わると、ブリュネが早速ロールキャベツに手を伸ばした。

「美味しいわ、それにキャベツの甘味がよくわかるし。

　野菜がメインだなんて、感激だわぁ」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

挽肉をキャベツで巻くことが、ブリュネには嬉しいようだ。

　付け合わせではなくメインに野菜が使われることが、園芸を愛する者として高ポイントらしい。

　レイはというと、この肉団子の食感が初めてなため、首を傾げながらモグモグしている。

　挽肉にするには労力がいるので、屋台でも挽肉料理はあまり見かけないのだ。

　宿で挽肉料理が一度出されたことがあったのだが、すごく粗挽きで滑らかな食感とは言い難いものだった。

　そうそう、ブリュネ作のフレッシュサラダも、ただ野菜を千切っただけなのに美味しい。

　野菜の旨味というものが感じられ、さすが園芸スキル高レベルな人が育てた野菜だ。

　ドレッシングも確かに絶品で、アキヒサも欲しくなってきた。

　こんな風に農園を大満喫したら、あっという間に時間が経っていた。

「アナタたちのおかげで、今日はとっても楽しい休みになったわ。

　これで明日からの面倒なアレコレも頑張れそうよ！」

笑顔のブリュネの面倒とは、きっとアレだろう。

「いよいよ調査隊が出るでしたっけ」

「そういうこと。

　でも高ランクの冒険者っていうのは、癖が強い連中が多くてね～、嫌になっちゃうわ」

その癖の強い冒険者の筆頭がブリュネだろうというのは、言わないお約束なんだろう。

　なんにせよ、ブリュネには頑張ってほしい。