第78話 お昼を食べよう

 それにしても、あれだけスキルレベルが高かったら、使える技も高レベルになるのは当たり前だろう。

 低レベルだと、楽に耕せるとかその程度なのかもしれない。


「このスキルのことを広めたら、きっと農家は仕事が楽よぉ。

 そうなったら『仕事が辛い』なんていう理由で農家を継ぎたがらない若者も、家に残ると思うのよねぇ」


ブリュネがしみじみと言う。

 どうやらこの世界でも、日本と同じような問題があるらしい。

 そしてスキルは本来なら、日本の科学技術の代わりになっているのだろう。

 でもそれが何故か教会に独占され、結果正しい使用方法の伝承が途絶えてしまったというわけだ。


「そのスキルについては、どうなっているんですか?」


アキヒサは心持ち声を潜めて尋ねた。

 あれから大して時間が経っていないけど、方針くらいは決まっているのだろうか?

 これにブリュネは肩を竦める。


「さすがにアタシ一人の手に負えるものではないわ。

 スキルは冒険者ギルド全体にとっても重要な問題ですもの。

 王都の本部長に緊急で連絡を入れて、今は返事待ちよ。

 多分国王陛下まで話が行くんでしょうね」


今、聞きなれない名前が出てきた。

 国王陛下とは、この国の一番偉い人のことだろうか?


「そんな国の一番偉い人にまで、話が行くんですか!?」


「そうよぉ、だってウチの本部長は王族の方ですもの。

 話が通りやすいと思うわ」


想像以上に話のスケールが大きくなってきたことに、アキヒサは少々胃が痛い気がしてきた。

 社畜は偉い名前に弱いのだ。



そうこうしているとお昼になり。


「せっかく畑に新鮮な野菜があるんだから、ぜひ食べていってネ」


そうブリュネに勧められ、ありがたく野菜を食べさせてもらうことにした。

 どうやらブリュネには、ここの野菜で作る料理をアキヒサに教えてもらいたいという下心もあるようだ。


「アタシも料理をすることにしたのよぉ。

 料理スキルがあれば、このコたちをいつでも簡単に美味しく食べられるじゃない?」


というわけで今も簡単なものからチャレンジしているそうで、今回もフレッシュサラダを作ってくれている。

 葉野菜をいい感じに盛り付けるだけという話もあるが、それでも採れたての新鮮野菜はそれ自体が御馳走だし、ご近所さんから貰ったというドレッシングが絶品だそうで、楽しみである。


「あらぁ、レイちゃん上手ねぇ」


レイもブリュネの隣で、野菜を千切るお手伝いだ。


 ――うーん、社会性が育っているなぁ。


 そしてアキヒサもリクエスト通り、一品作ることにした。

 ちょうど鞄に肉が入っていることだし、ロールキャベツを作ろうと思う。

 キャベツの葉を茹でて具を巻くだけの、簡単料理だ。

 ロールキャベツの具は肉種がよく知られているが、これにお米を巻いても、具がリゾットみたいになって美味しい。

 今のところお米料理に行き当たっていないので、この辺りだと米は食べられていないのだろうか?

 でも麦があるなら麦飯ができる。

 そろそろパンに飽きていたから、麦飯に向いた麦を探してみるのもいいかもしれない。


 ――もちろん、お米が見つかるのが理想なんだけど。


 ともあれ、ロールキャベツを作っていこう。

 材料はもちろんキャベツと、具の肉だねにひき肉とみじん切りの玉ねぎと卵にパン粉、それと調味料をいくつか揃える。

 ひき肉とパン粉をどうやって用意したかというと、実は料理スキルのレベルが上がって、『粉砕』ができるようになったのだ。

 物体を細かくする技で、荒い状態から細かい状態まで分けられる。

 これでいつでも挽肉が手に入るので、ハンバーグができるのだ。

 今回はロールキャベツだが。

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