第76話 ランクアップ
驚くアキヒサに、ニールは当然という顔である。
「アースドラゴンを狩る実力のある方を一つ星にしておくなんて、もったいないですから」
そう告げるニール曰く、アースドラゴン級の魔物を相手にするのは、四つ星以上らしい。
冒険者が受けることが出来る仕事は、自分の星の一つ上のクラスまでであるため、アースドラゴン級の依頼を受けるには、せめて三つ星でなければならない。
というわけで、アキヒサは特例として三つ星への飛び級のランクアップとなった。
それならレイも三つ星になるのかと思いきや、こちらは一つ上がった二つ星である。
――レイがアースドラゴンを討伐したと気付いているのはブリュネさんだけだろうし、仕方ないかぁ。
アキヒサはそう思ったのだが、ニールが言うにはどうやら理由はそれとは別にあったらしい。
「三つ星は、大がかりな作戦の際には指揮役になるんですよ」
「それはマズいですね」
コレを聞いたらアキヒサも納得である。
誰でも三歳児に指揮されたら困惑するだろう。
戦闘力だけでなくそういう点も見るのなら、確かにレイは三つ星に上げない方がいい。
揉め事の種は蒔かないに限るのだ。
こうして星が増えたギルドカードを受け取ったところで、ニールに言われた。
「そうそう、忘れるところでした。
ブリュノルドが用があるみたいでしたよ?
なんでも今度、自慢の農園を見せる約束をしているそうですね」
そういえば、そんな約束をしていたのだったか。
忘れていたわけではないけれど、この状況だと無理だと思っていたのだ。
「見せてもらえるのは嬉しいですけど、ブリュネさんは今忙しいんじゃないですかね?」
遠慮がちなアキヒサに、ニールはニコリと笑みを浮かべた。
「忙しいのは冒険者たちを調整する役割である私と、調査に向かう冒険者たちであって、ギルドマスターは平常通りですよ。
第一冒険者ギルドのトップが忙しい時は、かなりの異常事態でしょうね」
言われてみればそうかもしれない。
むしろギルドマスターは、そういう場合の最終防衛を担う人材なのだろう。
そんなわけでアキヒサがブリュネを訪ねて執務室に向かうと、あちらはちょうど休憩中だったようだ。
「聞いたわよぉ、すっごい量のアーマーバッファローを持ち込んだそうね?」
アキヒサたちの顔を見るなり言われたブリュネの台詞に、苦笑するしかない。
「耳が早いですね、ってそうだった」
アキヒサはこのことをニールに言うのをすっかり忘れていた。
なのでとりあえずブリュネに勧められてソファに座り、レイとシロにおやつと飲み物を出してあげてから、改めて報告する。
「今日はアーマーバッファローの群れに行き当たったんですよね。
僕にはいつもの状態がわからないなりに、それにしても数が多いかなと思ったんですけど」
アキヒサの話に、正面に座るブリュネが難しい顔をする。
「アタシも倉庫に持ち込まれた数は聞いたけど、確かにちょっと多いかなとは思うけど、異常だというほどでもないわね。
でも、気を付けるに越したことは無いわ、異常の前触れって考え方もあるわけだし」
ブリュネがそう話しながらメモをとるので、後でニール辺りと相談するのだろう。
こうして前置きを話し終わると、本題だ。
「今度のアタシの休みに、農園へ招待したいの。
小さい子って土いじりが好きでしょう?
きっと楽しいわよ」
「はい、ブリュネさんがよければ、ぜひ伺いたいです」
というわけで、場所と訪ねる時間を打ち合わせ、必ず行くと約束した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます