第75話 美味しいお肉をゲットしよう

というわけで、俄然アーマーバッファローの肉をゲットしたくなったアキヒサに釣られて、レイもやる気になったようで。

 跳ねるような足取りのレイと、それに追いかけるシロを連れて草原にやってきた。

 そして幸運にも到着早々、大きな群れに行き当たってしまった。


「おにくがいっぱい」


レイはそう呟くと、アーマーバッファローの群れに突撃していく。

 アキヒサがアーマーバッファローのことを「美味しいお肉」と説明してしまったものだから、レイの中ではアーマーバッファローの名前は「おにく」になったようだ。

 レイも宿の料理で「お肉は美味しい」とわかったみたいなので、肉を料理してもらうのが楽しみなのだろう。

 あちらこちらで轟音が響き、アーマーバッファローが蹴散らされている。

 強さに食欲がプラスされたレイを止められるような猛者は、群れの中にいないようだった。

 それからしばらくして。


「レイ、そろそろやめてあげようか」


アーマーバッファローを蹂躙し続けている三歳児に、アキヒサは声をかける。


「……」


声が聞こえたらしいレイは無言で振り返り、素直にこちらに戻って来た。

 どうやらある程度満足したようだ。


「それにしても、いっぱいいるなぁ」


アキヒサは目の前の光景にいっそ感心する。

 レイはアーマーバッファローの山をあちらこちらに積み上げていた。

 アキヒサとて逃げてきたアーマーバッファローを多少は魔術で狩ったのだが、それにしても多い。

 アーマーバッファローの群れというのがコレが普通なのかの判断がつかないが、一応報告が必要だろうか?


 ――まあ、念のために伝えておくか。


 アキヒサはそう考えつつ、アーマーバッファローの山を一つずつ解体していく。

 それからその場で昼食を食べて、ニケロの街へと戻った。

 冒険者ギルドに戻ると、今回は受付にニールがいなかったので、別の人にアーマーバッファローを狩って来たと伝えると、倉庫に行くように言われた。


「また、凄い量を持ち込んだものだな」


再びやって来たアキヒサらに、倉庫の責任者のおじさんに呆れ顔をされてしまった。


「まあこれで、アーマーバッファローの肉が安くなるか」


そんな事を言うおじさんに、アキヒサはアーマーバッファローの山をシロと一緒にツンツンしているレイを見た。


「よかったねレイ、美味しいお肉が安くなるってさ」


「おにく」


レイはまだよく理解できないながらも、いいことがあるとだけ分かったらしいくて、ちょっと嬉しそうだ。

 そんなアキヒサらに、おじさんが告げた。


「そうそう、昨日の分は半分程度解体が終わっているから、買い取り金は受付で貰ってくれ」


さすがにあれ全部の解体は、昨日今日では無理だったようだ。

 その証拠にアキヒサの視界に魔物の山がまだ残っているのが入っている。

 あれらは悪くならないのかと思ったら、この倉庫にはアキヒサの鞄のような状態を保存する機能があるという。

 なんでもブリュネがどこかで手に入れた古代の遺物を、この倉庫に使ったのだとか。


 ――太っ腹だなぁ、ブリュネさん。


 きっと個人的に売ればひと財産できただろうに、それを倉庫に使うとは。

 まあこの倉庫もブリュネ仕様だという話だし、ブリュネは園芸同様に狩りが好きなのかもしれない。

 それはともかくとして。


「では、受付に行ってみます」


早速買取金額を受け取るために受付に行くと、今度はニールがスタンバイしていた。

 どうやらアキヒサらが戻ったことを聞きつけたらしい。


 ――忙しいだろうに、いいんだろうか?


 困惑するアキヒサに、ニールが支払いの清算をしてくれた後で告げた。


「トツギさん、昨日持ち込まれた魔物分でランクアップとなりました」


「はい!? もうですか!?」


冒険者になったのは二日前だっていうのに、早すぎやしないだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る