第55話 ステータス
「だから、いじったらこの画面が出てきたんです。こうやって……」
アキヒサは画面の戻るの文字に触れて、最初の名前と注意事項のみの画面に戻り、そこからひし形アイコンを長押しして、出てきた選択メニューから詳細情報の項目を選ぶと、あのステータス画面へと行き着く。
「ウソでしょ?」
「なんという……」
二人は声にならないようだ。
――今まで誰も、この機能に気付かなかったのか?
アキヒサはそう疑問に思うものの、自分で「無理かもな」と結論付ける。
ステータス画面を出すためには、あのひし形アイコンに触れ続ける必要があるのだが、しかしアイコンから手を放すと選択メニューが消えてしまった。
この仕様だと「偶然長押し状態になって発見」という流れになるのは難しいかもしれない。ひし形のある場所が角も角で、偶然握り込んで触れ続ける、ということにはなりにくい場所なのだ。
――スマホの角の×アイコンとか、なかなか反応しないで苛々したもんな。
アキヒサは一人ウンウンと頷く。
ちなみにこの間、レイはずっとおやつを食べている。
時間をかけているが、よく噛んで食べるのはいいことだ。
シロは、レイの足元でウトウトとしている。まだ子犬なのですぐに眠たくなるようだ。
とにかく大混乱の中、アキヒサは登録盤を返して、二人があーだこーだといいながら弄るのを見守っていた。
それからしばらくして。
「トツギさん、よくわかりましたね」
とりあえず満足したらしい男――ニールと言う名前らしい彼がそう言ってきた。
「いえいえ、なんでしょう、無知の勝利ってやつですかねぇ?」
アキヒサが笑って誤魔化すのに、「そんなことよりも!」とブリュネが叫ぶ。
「なによコレ⁉
どういうコトなの!?」
ブリュネが雄たけびをあげるが、すぐにハッとした顔になって立ち上がると、ドアを開けて出ていったかと思ったらすぐに戻って来て、バタンと閉めて鍵をかけた。
「なんかヤバそうだから、人払いをしておいたわ」
ブリュネはそう言いながら席へ戻り、改めて登録盤を見ると、ニールと相談し始める。
「ねぇニール、スキルのことだってもちろん謎だけど、この『レベル』ってなんだと思う?」
「は⁉ そこから⁉」
真面目な顔でそう言うブリュネに、アキヒサは驚きのあまりに思わず叫んでしまった。
――レベルも知らないのか⁉
しかしアキヒサがヤバいと気付いたのは既に遅く、ブリュネたちからジロリと睨まれる。
考え無しに発言しないと決意したばかりであるのに、なんとも迂闊なアキヒサであった。
「なに、アナタは知っていそうな態度じゃない?」
「そう言えば、この登録盤に表示されている内容に、あまり驚きませんでしたね」
せっかく登録盤をいじって詳細画面を引き出したことはうやむやにしたのに、結局二人から怪しまれてしまう。
――仕方ないか。
アキヒサは、ちょっとだけ本当のことを話すことにした。
「実は僕、鑑定のスキルを持っていまして。
そのおかげで、登録盤に書いてあるような内容は『見えて』いたんです」
そう語ったアキヒサは、レイと一緒にここではない遠くから旅をしてきたこと。
鑑定スキルを持っていたので、スキルが突然発生することを知っていたこと、才能や普段繰り返す作業がスキルになるらしいと思っていること、レベルはその成長度合いを数値化したものであること、などを語った。
「実際、僕もこのレイもスキルを持っていますが、昔から持っていてレベルが高いのもあれば、最近身についてレベルが低いのもあります」
こうして「真実ではないけれど嘘でもない」話をすると、ブリュネとニールも全くの嘘だとは思わなかったようだ。
「鑑定? また初耳のスキルですが」
「その登録盤で、僕の詳細情報を見れば出てきますよ」
「あら、見てもいいの?」
訝しむニールにアキヒサがそう言うと、ブリュネがそう尋ねてくる。
個人情報なことを気にしてくれるとは、ブリュネはなかなかいい人のようだ。
しかしそれを言うと、ブリュネの個人情報を登録盤で先に覗いたのはアキヒサの方が先である。
鑑定でコッソリ見るのも、同様に個人情報であることには変わりない。
そう考えると、アキヒサは自分が覗き魔な気がしていた。
――人に対して鑑定を使うのは、緊急事態以外はやめておこうかな。
アキヒサがそう決意する一方で、ブリュネが登録盤を操作して、アキヒサのステータスを慣れない手つきで表示させている。
現れたアキヒサの現在のステータスはこんな感じだ。
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名 前 トツギ・アキヒサ
性 別 男性
年 齢 20歳
職 業 冒険者
レベル 6
スキル 全属性魔術レベル2 鑑定レベル2 探索レベル3 精神攻撃耐性レベル100(最大値) 料理レベル9
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