第54話 登録盤
「あの、そのタブ……じゃなくて板って、触らせてもらうことはできますか?」
アキヒサはダメ元で彼に聞いてみたところ、彼は「おや」と目を見張る。
「もしやアキヒサさんは、この登録盤を見たことがありませんか?」
「そうなんです、実は初めて見るもので、珍しくって」
男にそう尋ねられたアキヒサはヘラりと笑い、そう答える。
すると彼は登録盤という呼び名らしいタブレットを差し出してきた。
「どうぞ、これから触れる機会はあるでしょうし、慣れておくといいですよ」
あまりに簡単に言うので、アキヒサの方が驚いてしまう。
「いいんですか?」
「はい、どうぞ。それに重要な内容は見れないようになってますので、ご安心を」
そう窺うアキヒサに、彼はそう気軽に言ってくる。
いいと言われるのであれば、遠慮なく触らせてもらいたい。
「どうも、ありがとうございます」
アキヒサはお礼を言いながら受け取ると、登録盤を持った感触はまさしくタブレットだった。
画面はツルンとした指触りで、掲げると目の前にいるブリュネの姿と情報が映し出される。
白い画面に黒い文字で情報が書かれているが、その情報はせいぜい名前と身長や身体的特徴、犯罪歴の有無程度だ。
ちなみにこの画面では、名前が「ブリュネ」となっている。
本名ではなく、登録名なのだろう。
「これ、遺跡の古代遺物を利用していると、兵士さんに聞きましたけど」
アキヒサが兵士に聞いたことを告げると、彼は「そうですね」と頷く。
「古代の遺物には我々では到底及ばない文明の証が多くありまして、ダンジョンから稀に発見される新発見の遺物を、研究者たちが日々研究して再利用の道を探っております。
これもその成果の一つですね」
「はぁ~、ダンジョンですかぁ」
そう言えば、ガイルも妖精の鞄の時にダンジョンがどうのと言っていた記憶がある。
この世界のダンジョンとは、アキヒサのゲーム知識の中のダンジョンと同じ代物だろうか?
少々気になるところだ。
そんな会話をしながら、アキヒサは登録盤の画面を丹念に見ていたのだが。
――あ、画面の隅になんかあるぞ。
それは、黒いひし形のマークであった。
こういう電子機械系に疎い人であれば、画面がちょっと乱れているか、汚れているのかと思うかもしれない。
けれどアキヒサは、これがアイコンに見えた。
アイコンは見つけてしまったら、触りたくなるのが人情だ。
ポチッと触れてみるが、なにも起きない。
ならば長押しかと思い、三秒押してみると。
「あ!?」
なんとというか、やはりというか、反応が出てしまった。
アキヒサが新たな画面が出たのをマジマジと見て、試しに自分やレイにも登録盤を向けてみたりとしている一方で、ブリュネと彼が大きな声を出したアキヒサに怪訝そうな顔をした。
「どうしたの?」
「動かなくなりましたか?」
尋ねてくる二人に、アキヒサは正直に告げる。
「いえ、ブリュネさんの詳細情報が出ました」
数秒、この場に沈黙が流れた。
「ハイ?」
「なんですか?」
ポカンとしている二人に、アキヒサは「えっとですね」と再びブリュネを映した画面を出して見せる。
~~~
名 前 ブリュノルド・マーク(人族)
性 別 男性
年 齢 37歳
職 業 冒険者ギルドニケロ支部・マスター
レベル 63
スキル 剣術レベル35 気配察知レベル25 投擲レベル39 格闘レベル43 園芸レベル58
~~~
そう、画面にはアキヒサが見た鑑定結果と、同じステータスが表示されていた。
この画面を見た二人が、大きく口を開けてフリーズする。
そろそろ口の中に虫でも入りそうだと、アキヒサが心配し始めた時。
「はぁ⁉ ナニコレ⁉」
「どうやったのですか!? というか、スキル⁉ なんでですか!?」
二人が再起動した。
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