第49話 ギルドマスター
今まで見た人達の中だとガイルが一番レベルが高かったが、このブリュノルドという人はそれよりもさらに高レベルだった。
スキルも全てレベルが高く、ブリュノルドが強者であることは間違いないだろう。
そして戦闘系よりも園芸スキルが高い。
こんな風にコッソリと鑑定しているアキヒサに、ブリュノルドが尋ねてきた。
「それで、あなたたちはどういった御用でウチにきたのかしらぁ? 依頼?」
これに、アキヒサはココへ来た目的を思い出す。
――危ない、ケンカ沙汰がおさまったら危うく出ていくところだった!
聞いてもらって助かったとばかりに、アキヒサは目的を話す。
「ここへ来たのは、冒険者として登録しようかなと思いまして。
ただ、このレイも登録できますかね?」
ちょうど目の前の人がギルドのお偉いさんらしいとわかり、アキヒサは気がかりだったことを尋ねてみる。
これは事前に宿屋で質問しても、「聞いてみないとわからない」という回答だったのだ。
このアキヒサの懸念に、しかしブリュノルドは目を輝かせた。
「あらぁ、こんな可愛いボウヤたちがウチの子になってくれるなんて、嬉しいわぁ!
じゃあいらっしゃい、アタシがやってあげるから!」
顔の横で手を組んで喜ぶブリュノルド。
そのボウヤたちというのはひょっとして、自分の事も入っているのだろうか?
とアキヒサは思ってしまうものの、どうやらできるらしいのは助かる。
そしてレイはブリュノルドに興味津々な様子だが、オネェさんは御触り厳禁だと決まっているものなのだからして、アキヒサはレイの伸ばしかけている手をそっと降ろしてやった。
こうしてカウンターの受付に何事か話していたオネェさんに手招きされ、アキヒサたちが連れて行かれたのはカウンターではなかった。
カウンターの奥にある扉を潜り、通路を通っていった先にある部屋へと通される。
正直あれだけ目立つことをしたので、視線が痛かったのであの場に長居せずに済んだのは助かった。
もしかして、そのことも気遣われたのかもしれない。
そして部屋の中には立派なデスクとソファーセットが置いてあるものの、可愛らしい小物や植木鉢なども置かれていて、乙女チックな雰囲気でまとめられていた。
「ようこそ、アタシの部屋へ♪」
そう告げてくるブリュノルドに、やはりと納得した。
なんというか「らしい」部屋である。
そして座るように勧められて、ソファーセットにブリュノルドと向かい合って腰をおろしたアキヒサは、一応確認しておく。
「あの、あなたがここのギルドマスターなんですよね?」
アキヒサが尋ねると、ブリュノルドは「そうよぉ♪」と頷く。
「アナタたちって初見でワタシを見ても物怖じしないなんていい子ね!
そっちのボウヤは珍獣を見るような態度だけど」
「すみません、レイは田舎育ちなもんで、そういうキレイな格好を見たのが初めてで、気になるんだと思います」
そう、レイに珍しいかどうかなんていう判断ができるはずもなく、ただただ見たことのないものに興味津々なのだろう。
「あら♪ キレイだから気になるなんて、なかなか隅に置けない男ねぇ」
ブリュノルドが嬉しそうにレイに笑いかけた。
そんな話をしていると、職員がお茶セットを持ってきた。
レイの前にはホットミルクとビスケットみたいなお菓子を置いてくれる。
「ありがとうございます」
「いいえ、可愛い子ですね」
アキヒサがお礼を言うと、職員がレイを見て微笑んだ。
退室する職員を見送ったアキヒサは、とりあえず気持ちを落ち着けようとお茶を飲む。
リンク村ではお茶といえば森で採れる薬草のお茶だったけれど、これは紅茶のような風味だ。
爽やかな味わいで、とても美味しい。
このお茶を飲みながら、アキヒサは気になる事を聞くことにした。
「あの、さっきの人はどうなるんですか?」
「ああ、ちょっと『教育』が必要な子みたいね。
兵士崩れにはたまに、ああいう手合いが出るのよ」
ブリュノルドは自らもお茶を口にしながら、そう言って肩を竦める。
――兵士崩れ? それにいつものことなのか?
「兵士の人だったんですか。
でもああいう手合いっていうのはなんですか?」
アキヒサが疑問を口にすると、「兵士を抱える街だと、どこでもよくある話よ」とブリュノルドは前置きをして、説明してくれた。
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