第42話 やっぱりスキルは「買う」らしい
――というか、あれって機械? もっと言えばタブレットに見えるんだけど?
「あの、なんですかそれ?」
素直に疑問をぶつけるアキヒサに、兵士は朗らかに笑った。
「ああ、初めて見るのか?
そこそこデカい街にしかないだろうから無理もない。
これは遺跡から見つかった古代遺物を利用しているもので、遠い場所とも手紙みたいなのが瞬時にやり取りできるっていう、すげぇ便利なものだ」
兵士はそう言いながら、そのタブレットみたいなものを見せてくれた。
そこにはアキヒサとレイの姿が、まさに写真のように写っている。
リンク村だとファンタジー世界まんまだったけど、やはりあの最初に見たコンピューターのようなものは、ちゃんとこの世界に存在しているらしい。
手紙みたいなものとは、メールのことだろうか?
「じゃあ、ちょっと質問するぞ」
一人で納得するアキヒサに、兵士はそう言って簡単な質問をすると、答えを聞く都度タブレットに聞き取りして得たデータを入力している。
どうやらこうして情報を各地で共有するようだ。
恐らくはどこかに情報を統括している、メインのコンピューターがあるのだろう。
そのタブレットがあのコンピューターの仲間みたいなものだとしたら、もしかして鑑定で見られるようなステータスなどが、タブレットで見れないのだろうか?
そう考えたアキヒサは、兵士に聞いてみた。
「それで、スキルとかは見れないんですか?」
アキヒサの疑問に、兵士はきょとんとした顔をする。
「スキル? そんなもんは教会に行くものだろうが。
なんだお前ら、もしかしてスキルを買いに来たのか?」
あちらはどうやら、アキヒサの疑問が理解できないようだ。
アキヒサはスキルをあのコンピューターから貰ったからこそ、こう考えたのだが。
この兵士の中でスキルというものが、そのタブレットとつながっていないのかもしれない。
――スキルは教会かぁ、一体どういうシステムでそうなっているんだろう?
それにスキルとはやっぱり「買う」ものらしい。
「あなたも、スキルを持っているんですか?」
アキヒサのさらなる質問に、兵士は「ああ」とちょっと得意げに頷いた。
「兵士になると剣のスキルが格安で買えるんだよ。
だから兵士になって剣のスキルを買って、何年か勤めてから転職するヤツが多いかな」
「そうなんですか」
アキヒサはそう相槌を打ちながらも、こっそりこの兵士を鑑定してみる。
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名 前 ミック・デイブ(人族)
性 別 男性
年 齢 32歳
職 業 兵士
レベル 12
スキル 剣術レベル13 掃除レベル10 裁縫レベル15
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確かに剣術スキルはある。
けれどそれ以外のスキルだってあるし、むしろそっちの方がそこそこレベルが高いのはどういうことか?
少なくとも以前に見たガイルの釣りレベル3よりも高い。
スキルを買うのが普通なのだとすると、兵士がいくら掃除や裁縫が好きだとしても、わざわざ高価なお金を出してスキルを買うとは考えにくい。
スキルがなくても、掃除や裁縫はできるからだ。
アキヒサはこの謎をスッキリさせたいものの、初対面の相手から「あなたは掃除や裁縫が好きですか?」と聞かれるのは、果たして相手はどう思うだろうか?
相手がそれを隠していた場合、揉めるかもしれない。
もしかすると、高価なお金を出して買ったかもしれないという可能性も、なくはないことであるし。
――うーん気になるぞ、スキルの謎。
誰かスキルについて詳しく教えてくれる人が、そこいらにいないものか?
アキヒサがそんな風に考えて悶々としている間に聞き取り調査が終わり、次に荷物検査がされた。
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