R-10

 なにもかもを試した。

 あらゆるものを試した。


 海龍の心臓だろうが、魔法薬だろうが、毒だろうが、ありとあらゆるものを試した。


 でもヴァージル様との子供はできなかった。

 暗い。

 私はいま、どうなっているのだろう。


 私の美しかった体は、いつの間にか醜く膨れていった。三十歳を過ぎれば誰でも太るっていうけど、本当にその通りだった。ローゼリアわたしもそうだった。イラストのように、いつまでも美しいままではなかった。そういえば前世でもそうだったかな。せっかく痩せて可愛い姿になったのに。まさかローゼリアもただの女だったなんて。

 だけどその姿を見たのもだいぶ前だったような気がする。


 いまは暗くて、自分がどんな姿をしているのかよくわからない。

 いつだったか、少し暗い部屋へと移動させられたあと、しばらくして自分の手すら見えなくなってしまった。なんでだろう。そういえば目に包帯をつけさせられたっけ。そのせいかな。でも外すことができない。なんでだろう。

 ふかふかのベッドはあるけれど、暗くて……わからない。

 ここは部屋よりずっと冷えるから、早く戻してほしい。

 だけど歩くことすらできなくて、ずっとベッドの上で寝ていることしかできない。


 ただ、ここは静かでいい。

 みんなうるさくなったから。一人ずつ追い出してやったけど。


 あの処女の女の子。

 海龍の心臓が一番望みがあったのに、あの子のせいで台無しになった。

 誰ともヤッたことないくせに。男を知らないくせに。

 そういえば地下室にそのままにしておいたけど、まだいるかな。もっと言ってやりたいことがあったんだけど。まだ私の気はおさまらないし。だけどもう足の感覚が無くて、自分が立ち上がってるのか寝ているのかもよくわからない。


 化粧くらいはしておきたいな。

 きっとヴァージル様がここまで来てくれるだろうから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る