下巻:白薔薇の君へ

R-6

 死闘。

 まさに死闘だった。


 ゲームでやってた時もそうだった。

 ラスボスのモルグと、ラスボス第二弾のレストール。

 周回プレイの中には、キャラを限界まで強くしてプレイするとか、最低レベルクリアとかもやった。でもそれは私の意思だ。今回はみんなが、それぞれ自分の意思で強くなろうとしてくれた。だから、現実のモルグとレストール先生に打ち勝つことができた。


 そのあとの夢のような時間よりも、その死闘のほうが印象に残ってる。

 やだなあ。もういちどヴァージル様からの告白を受けたい。イベントなら何度でも見れるのに。


 でも、そのヴァージル様は私の隣にいる。

 夢みたいだ。

 夢じゃないんだけど。


 そして、何度でも私に愛を囁いてくれる。

 ベッドの中で、私は何度でも顔から火が出るみたいに熱くなる。

 前世では叶わなかったことだ。

 やっぱり夢みたいだ。


 あとはなかなか子供ができないことがネックかな。

 欲を言うならもう少し二人だけで……、いや……、その……、まあ。ごほん。

 他の人たちも「こういうのは授かり物ですから」って言ってくれてるし。

 だから大丈夫。


 それに、まだやることはたくさんある。


 それでも平和が訪れたかというとそうじゃなかった。

 特に、戦争や小競り合いはまだ続いている。

 魔物の出現もそうだ。モルグを倒しても別に魔物がいなくなったわけじゃない。

 定期的に騎士団がかり出されて、何人かが死体で戻ってくる。

 時々、ドラゴンみたいなでっかいのが出てきて騎士団のほとんどがかり出される、みたいな事もあるし。攻略キャラ――っていうか、当時の仲間たちが頑張ってくれていたけど、彼らにも果たすべき義務がある。世代交代は進んでいるけれど、当時のような強さを持った人間が出てきたかっていうと、そうじゃないらしい。

 私の魔法じゃ、死んでしまった人は生き返らせることができない。

 そういえばゲーム中でも、気絶扱いだった。


 怖い。

 この世界で失いたくないものが増えすぎてしまった。

 だってあまりにリアルだから。ゲームだった時とは大違いだ。


 ここって現代と違って医療がそんなに発達してないんだよね。

 病気よりも魔物による外傷のほうが重要視されてる。もちろん病気に対する治療法もあるにはあるけど、それよりも魔物をなんとかするのが先って考えみたい。

 四肢を失えばその後の人生にも影響が出る。

 定期的に彼らの回復にまわっているけれど、間に合わない。


 それに、私に回復じゃなくて、予言の……聖女としての力を求めている人のほうが多い。

 シナリオでの事は記憶してるけど……。それ以外のことを求められると、心苦しい。

 彼らの願いに応えられないことにやきもきしてしまう。

 私の代わりにヴァージル様や、かつての仲間がなんとか応えてくれるけれど。


 がんばろう。

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