Close to you 可愛い女の子達は海斗を求めた

第89話 安 心

　海斗は葵が写ることで安心すると思ったが逆効果だった。

「もー！　何で解ってくれないかな！　葵とクッキー作りを教わった日にエレンおばさんが喜んで、泊まって行くように言ったの。しかも明子さんに電話まで入れて許可を取ったんだよ。俺の着てる寝巻きは孝太郎おじさんのパジャマで、写真を撮っている所は、さっき勉強会をしたリビングだよ。風呂上がりに三人で座って写真を撮ったら倒れたんだ。その時にシャッターが切れたの。ほら、このラグを見てご覧よ、さっき座っていたラグと同じでしょ。それに俺はゲストルームで寝たし、葵は梨紗と寝たんだよ。どう？　理解出来た？！」

　海斗は説明をすると、二人はようやく納得してくれた。鎌倉美月は胸を撫で下ろした。

「は～あ、ホットしたよ」

「海斗、俺は信じていたよ。美月さあ、京野の写真の時もそだけど、余計な心配をしたじゃん！　事情も聞かないで判断するのは、気を付けないとね」

「海斗が、あんな紛らわしい写真を撮るから悪いんでしょ！」

「俺が撮った訳じゃないし、表に出るなんて思ってもいないよ。だいち梨紗も思わないで飾っていたのだろうね。しかし梨紗も困ったもんだな。美咲に見付かったら大変だったよ」

「そうよ、感謝しなさい！」

　すると森幸乃は海斗の肩に手を載せた。

「何を感謝するの？」

海斗達は驚いて森幸乃を見た

「幸乃さん、いつから居たの？」

「今よ！」

　海斗達はホットした。森幸乃はもう一度、聞いた。

「それで、何に感謝するの？」海斗はとぼけた。

「この間、美月が蓮にお弁当を作ったんだ。それで感謝しなさいって、言っていたんだ」

「へー！　美月さん、頑張ったのねー、蓮君は美味しかった？」

「うん、美味しかったよ」

四人は集まると喫茶純に向かった。

　　（喫茶純にて）

　海斗はドアを開け、挨拶をした、

「こんにちは、マスター！」

「やあ、いらっしゃい伏見君、松本君、鎌倉さん、お帰り幸乃。幸乃にお客さんが来ているよ」

　カウンターに京野颯太が居た。海斗は声を掛けた。

「も、もしかして、リクルートの話か？！」

　皆は京野颯太を見た。

「そうだよ！　幸乃さんに直接発表しようと思ってね」

　森幸乃は両手を合わせた。マスターもドキドキした。

「幸乃さん、内定合格です！」

　皆は声を出して喜んだ

「キャー！　、わー！」

　京野颯太は内定合格通知書を手渡した。森幸乃は感謝した。

「有り難う、京野君！　ようやく安心出来るわ」

「済みません、会社の都合が有って待たせしました。これからについては、他の内定者と同じ様に書類が届きます。書面に従って下さい」海斗は京野颯太を見た。

「京野、有り難う。助かるよ」

「そうだろ、伏見君！　友達の頼みだからね」

　海斗達は笑った。すると京野颯太は言った。

「クリスマスの相談が未だのようだったから、マスターにお願いしておいたよ」

　松本蓮は驚いた。

「えっ、京野、有り難う」

　京野颯太は用件を済ませると席を立った。

「じゃあ、僕は失礼するよ」

　皆は京野颯太を見送り、京野颯太は背中越しに手を振った。正面を向くのは照れくさかったのだった。お店のドアが閉まると森幸乃は再び喜んだ。

「お父さん、ヤッター！　内定だって！」

マスターも喜んだ。

「良かったね、幸乃。それと有り難う、伏見君、松本君、鎌倉さん」

海斗も嬉しかった。

「おめでとう、幸乃さん。俺達もうれしいよ。」

「ホント、皆のお陰ね」鎌倉美月も続いた。

「上手く行って良かったわ。出会いは災悪だったけどね」

皆は笑った。

　海斗はマスターに話しかけた。

「京野に先を越されけど、クリスマスパーティーの話なんだけどね」

「ああ、さっき京野君から聞いたよ。ＯＫだよ！」

　海斗達は再び喜んだ。森幸乃は二度楽しかった。

「ああ、楽しみだな－！」

「幸乃、十二月はクリスマスパーティーがあるから、年を開けたら、

皆で内定祝いのパーティーをしようね。皆、今度はご馳走するからね」

海斗達はマスターにお礼を言った。

　海斗はホットコーヒーに口を付けた。

「この間、クラスの友達と酉の市に言ったんだ。そうしたらね、羽衣商事の名前の付いた熊手が有ったんだ。嫌みなぐらい大きいの！　幾らするんだろうね」

海斗は両手を広げて大きさを例えた。するとマスターは五本の指を広げた。

　松本蓮は言った

「ん、五万円？」

「そんな訳ないだろ、松本君。一桁上だよ、きっとね。しかし値段は有って無いようなモノだからね。本当の所は解らないな」

海斗は驚いた。

「それじゃあ、毎年、あの熊手に五十万かけているの？！　すごい会社だね」

　森幸乃は微笑んだ。

「へー、凄いわね」鎌倉美月も嬉しかった。

「幸乃さん、良かったわね。横浜を代表する凄い会社だね」

「うん、有り難う。でも未だ内定だからね。就職するまでは気を緩めない様にするわ」

　この後も楽しい会話が続いた。この日は早めにお店を閉め、家族でお祝いをした。森幸乃もマスターも肩の荷が下りたのであった。