第88話 寝巻きの写真

 皆はクッキーに手を伸ばすし、口々に「美味しい」を連呼した。

林莉子も驚いた。

「エレンおばさんのクッキーは、ホント美味しいわ」松本蓮も続いた。

「京野に見つかったら、エレンおばさんのクッキーって、商売にされるかもね」

林莉子は気付いた。

「それ、どこかで聞いた事が有るお店ね?!」

皆は笑った。中山美咲も続いた。

「とっても美味しいわ、しかも焼きたてのクッキーって香りが良いわ!」


 海斗は自慢した。

「このクッキーはね、小学校の一年生の時に始めて食べたんだ。最初に食べた時は、子供ながらに驚いたんだよ。だって市販のクッキーは小さくて平でしょ。香りだって、ココまで良くないしね。好物だった事をエレンおばさんが覚えていて、再会した時に作ってくれたんだ」


 中山美咲は海斗に優しくにらみ付けけた。

「クッキー作りを教えて貰う時に、私も呼んで欲しかったな~」

 海斗は固まった。林莉子も言った。

「そうよ、海斗、声を掛けなさいよ」

 小野梨紗は皆を見た。

「今度は私も作れるから、教えてあげるよ。皆で一緒に作ろうよ」

 中山美咲は喜んだ

「ホント、梨紗、嬉しい」鎌倉美月も参加した。

「私も教えて欲しいな。昔、家庭科で作ったクッキーとは別物よね。これを食べると、あれは子供だましみたいね」


 松本蓮は羨んだ。

「海斗が一年生の時に、大人のクッキーを食べていたとはね~ 海斗ズルイぞ!」

「小さい頃に、そんな気遣いは出来ないよ。でも今は皆で食べられて良かったよ。梨紗の家で勉強家が出来たお陰だね」

 鎌倉美月は思い出した。

「あっ、思い出した。夏休みに伊勢佐木町商店街で、偶然、海斗と葵ちゃんに出会ったよね。クッキーの材料を買い出しに来たって、言っていたもんね」

「そうそう、その時、初めてメリーさんに会ったんだよね」

 二人は微笑んだが、皆は驚いた。松本蓮は聞き直した。

「あのハロウィンパーティーの時に、会った幽霊?」

「そう、美月に付いて来ちゃって、あの時は驚いたよ。まあ、その話は置いといて。

だからクッキーの材料は輸入食材店じゃないと揃わないんだ。作る時は買い出しからだよ」


 エレンは皆の会話を微笑んで聞いていた。エレンは嬉しかった。

「良かったわ、私の作るクッキーを喜んでくれて。私も教えてあげるね、いつでも来て下さいね」

 皆は喜んだ。その後もエレンとティータイムを楽しんだ。ティータイムを終えると、片付けをして、この日の勉強会を終了した。小野梨紗とエレンは玄関で見送り、皆はバス停に向かった。

 小野梨紗は勉強会では有ったものの、楽しく一日を過ごした。エレンも娘の仲の良い友達と過ごし、楽しい時間を共有した。


 皆で関内駅に戻り解散をすると、鎌倉美月は松本蓮を誘い喫茶店に入った。

「どうしたんだ、美月、俺、悪い事した?」

「梨紗の部屋に行った時、何か、気が付いた?」

「ん? 大人っぽい部屋の事か? 別にないけど」

「別に気が付かなかったなら良いのよ。気付いていたら困るからね」

「だから何だよ?!」


「驚かないで聞いてね、梨紗の机の上に写真立てが有ってね。その写真が問題

なのよ! 海斗と梨紗が寝巻きを着て、寝ているツーショット写真が有ったのよ!」


 鎌倉美月の手の上に松本蓮は手を重ねた。

「どう言う事? もしかして二人で寝たって事?」

二人は驚を共有した。


「なあ、海斗は美咲が好を好きじゃ、なかったのか?!」

「私もそう思っていたけど、二学期からの海斗は、どちらでもないような感じよね」

「きっと体調を気にしていたんだろうけど、それは表の顔なのかな?」

「蓮、五月に最初に合った梨紗は、もっと積極的だったよね」

「うん」

「今はそうでも無いと思わない? と言う事は何かが有ったのかしら」

「え~、え~、海斗と一線を越えたのか?! 見間違えたんじゃないの?」

「蓮! 明日、幸乃さんが来る前に、写真部で海斗に聞くわよ」

「ちょっと、怖いな~、でもホントだったら?!」

「その時は、応援してあげましょう」

「うん」


 (翌日の写真部にて)

 放課後に松本蓮と鎌倉美月は、早めに海斗を部室に誘った。

海斗は話しかけた

「なあ、蓮、今日は早いな。何か決める事でも有ったのか?」

「あのさ、梨紗の家で勉強会をした時に、美月が発見したんだけどさ」

鎌倉美月は困った顔をした。海斗は聞き直した。

「なんだよ、美月?」

「えー、蓮に伝えたんだから、蓮が言ってよ!」

「え~、美月が見たんだろ」

「もー! 何なんだよ」


 鎌倉美月は思い切って言った。

「海斗、梨紗と付き合っているの?」海斗は冷静に答えた

「付き合ってないよ」

「梨紗の机に写真立てが有って、二人の寝巻きのツーショット写真が飾って有ったのよ。私が気付いて、すぐ伏せたの。梨紗は私の行動に気付いて赤くなったのよ。あの時、海斗が梨紗に何か隠しているだろって言うから、それでゲンコツをしたのよ」

 松本蓮は思い出した

「あ~、それでゲンコツだったのかー、キレルの早いなって思ったんだ」

 海斗は何の写真を言っているのか考えていた。

「あっ! 思い出した! あれ見ちゃったの、恥ずかしいな!」


 松本蓮はダイレクトに質問をした

「海斗、梨紗と一線を越えたのか?!」


 海斗は呆れて笑い出した

「は、は、は、もー! そんな事はないよ! まったく可笑しいな」


 海斗は自分のスマホを操作して、当時、小野梨紗から貰った写真をツーショット

になるように拡大して見せた。

「これでしょ!」


 松本蓮と鎌倉美月は衝撃を受けた。松本蓮は言った

「え~、え~! 海斗、言っている事と写真が違うよ!」

「そうそう、この写真よ! やっぱり一線を超えたのね」

海斗は慌てた

「違うってば!」


 困っている二人に、海斗は写真を縮小させた。すると隣に葵が写っていた。

二人は益々驚いた。松本蓮は信じられなかった。

「海斗! お前、これはもっとマズイだろ! 何をしているんだ?!」

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