第87話 梨紗の部屋
皆はゆっくり昼食を取った後、ローテーブルに移動して休憩をした。小野梨紗はエレンを休ませて、お皿を片付け始めてた。
海斗は歩み寄った。
「梨紗、俺も手伝うよ。エレンおばさん、キッチンに入っても良いかな?」
エレンは微笑み、うなずいた。二人はキッチンに立った。
海斗が洗い、梨紗は食器を拭き取った。
「ねえ、海斗と洗い物のなんて、不思議ね」
「ああ、夏の勉強会は、この時に梨紗が俺の部屋に入ったんだよな」
「あの時は楽しかったなー、海斗の趣味も分かったし、ハハ!」
「梨紗は楽しかったのかも知れないけど、コッチは大変だったよ、もー!」
海斗は食器棚のグラスに気が付いた。
「えー! このグラス……、北海道の?!」
小野梨紗は修学旅行のサンドブラスト体験で作ったグラスを、普段使いをしていたのだ。夏はこのグラスの絵を見て思い出し。ニンマリとして、冷たい飲み物を飲んでいたのだ。
小野梨紗は動揺した。海斗は小野梨紗を見た。
「俺とお揃いじゃん! な~んだ、梨紗も同じ事考えていたの。やっぱり、北海道らしくていいよね」
梨紗は夫婦グラスと言う単語が出てくると思いドキドキしていた。
「ほら、あの時、隠したじゃん。梨紗、俺に気を使ってくれたんだね。そんな気を使わなくても良いのに。北海道らしくて良いデザインだよね」
「そうだよ、気を使ったんだよ! ハ、ハ」
小野梨紗は海斗が騒ぐと思っていたのに、すんなり受け入れられてホットした。
二人は洗い物を済ませてローテーブルに戻った。鎌倉美月は小野梨紗を仰ぎ見た。「お疲れ様、待っていたよ。ねえ、梨紗の部屋を見てみたいな!」
皆も目を輝かして返事に期待した。
小野梨紗は部屋を綺麗に片付けていたので、気軽に返事をした。
「うん、いいよ!」
小野梨紗の後に鎌倉美月が続き、皆が続いた。
「どうぞ入って」
鎌倉美月は言った。
「わー、大人っぽいのね、綺麗に片付いているのね」
皆も部屋に入って来た。中山美咲も感想を口に出した。
「素敵なお部屋ね。落ち着いた雰囲気があるわ」
鎌倉美月は、なにげに勉強机の写真立てを見た。海斗とパジャマを着て寝ているツーショット写真が飾って有った。未だ誰も気付いて居なかったので慌てて伏せた。
小野梨紗は慌てた鎌倉美月を見て理解し、真っ赤になった。鎌倉美月は気づかれないように目と指先で小野梨紗に合図をした。小野梨紗は少しずつ机に歩み寄り、伏せた写真立てを引き出しにしまった。
林莉子も感想を口にした。
「ねえ、部屋まで洋館ぽいのね。家具が少ないからかしら、スッキリしているわ」
松本蓮は思った。
「なあ海斗、若草色の壁のせいか、この部屋大人っぽい感じがするね」
「梨紗に聞いたら、エレンおばさんがコーディネートしたらしいよ。だから、大人っぽいんだよ。前に葵と来た時に女の子の部屋と言うより、大人の女性の部屋みたいって言ったら、どこの女の部屋と比べているのですか、って返したんだよ」
皆は笑った。
鎌倉美月は考えた。
「確かに中学生じゃ、分からないよ。葵ちゃんは面白い事を言うわね」
林莉子は思い出した。
「皆で部屋に居ると、前に海斗の部屋を思い出すわね。梨紗も何かを隠しているんじゃない?!」
小野梨紗と鎌倉美月はドキッとした。松本蓮は返した。
「女の子の部屋だから、そんなモノ無いだろ。そろそろ戻ろうよ」
鎌倉美月も続いた。
「そうね、そろそろ戻りましょう」
海斗は見抜いた! 小野梨紗が赤い顔をしていた。
「梨紗、顔が赤いぞ! 何か隠しているだろ! 探しちゃおうかな」
鎌倉美月は海斗をにらみつけ、ゲンコツを一発おみまいした。
「女の子の部屋に、いつまでも居るんじゃ無いの!」中山美咲も賛同した。
「そうよね、戻りましょう」
皆はダイニングに戻った。
皆はローテーブルに座った。一時になり海斗は気合いを入れた。
「さあ、三時まで頑張ろう!」
午後は各自自習を行った。エレンはジュースを入れテーブルの中央に置いた。解らない問題は、友達同士で教え合い勉強を進めた。集中して行ったせいか、あっと言う間に時間が過ぎた。三時に近づく頃、リビングに甘くて、香ばしい香りが漂った。皆は鼻を奪われペンを置いた。
松本蓮は鼻を泳がせてた。
「なあ美月、美味しい香りがしないか!」
「うん、良い香りだね」林莉子も続いた。
「ねえ、美咲、すっごく良い香りね」
「うん、焼き菓子の香りね、あっ、コレが、海斗が言っていたクッキー?」
皆は海斗の顔を見た。海斗は目を閉じ笑みを浮かべていた。
「そうそう、コレだよ。このクッキーを教えて貰ったんだ。外はサクッと中はふっくらして、とっても美味しいんだよ」
皆はツバを飲んだ。
するとエレンはクッキーをお盆に載せ、ダイニングテーブルに運んできた。
「皆さん、キリが良かったら休憩して下さい。焼きたてのクッキーが有るわよ」
皆はキリなど関係無くローテーブルから離れ、ダイニングテーブルに着いた。エレンは続けて、紅茶とジュース、差し入れのお菓子を並べた。
海斗は喜んだ。
「エレンおばさん、クッキーを焼いてくれて有り難う!」
「きっと、喜ぶと思って焼いたのよ、皆さんの口に合うかしら」
皆は一つ、一つ、手に取った。口を揃えて言った
「いただきます!」
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