第86話 クリーミートマトスープ

 鎌倉美月は、皆の手前「はい」とは言えなかった。

「ま、ま、未だ、です」

「まあ、こんなに可愛い子を放っておくと、誰かに取られちゃうわよ。マツモトクン」


 小野梨沙は慌てて、エレンの手を引っ張り移動した。

「もー、ママ恥ずかしいよ! ダイニングテーブルに戻っていてよ! 

喋らすとこうなるのだから、皆ごめんね」


 松本蓮、鎌倉美月、中山美咲、林莉子は唖然とした。林莉子は小さい声で聞いた。

「ねえ、梨紗! 学校の事、お母さんに話しているの?」

「うん。ママね、日本に引っ越して来てから、私を心配をしているの。それで学校で有った事を話しをするのよ。私は兄妹がいないしね、ママも喜ぶのよ」


 松本蓮は恥ずかしかった。

「仲が良いのは良い事だけど、俺の事は恥ずかしいな」

 鎌倉美月は照れた。

「私は恥ずかしいけど、梨紗のお母さんなら良いかな。さっきハグされて、そんな気になっちゃった。きっと姉妹のような関係なのかもね」海斗は言った。

「そうなんだ、エレンおばさんはフレンドリーなんだよ。たまに過ぎるけどね」

皆は笑った。


 海斗は仕切り直した。

「じゃあ、次は数学でもやる?!」松本蓮は賛同した。

「そうだな、コッチは区切りが良かったけど、美咲も莉子もキリが良かったら、海斗に数学を海斗に教えて貰らおうよ」

中山美咲と林莉子はうなずいた。


 皆は英語をしまい、数学のノートを開いた。海斗は講師となった。

「解っている人もいるけど、今回のテスト範囲で使う公式のおさらいをするよ」

 海斗は幾つもの公式と、例題を使って解き方を教えた。中山美咲は質問をした。

「ねえ、海斗、ココを、もう一回教えて!」

 海斗は中山美咲の隣に座り体を寄せた。解き終わる頃に小野梨沙も質問をした。

「海斗、ココが解らないよ。私も教えて!」

続け様に、林莉子も質問をした。

「海斗!コッチも」松本蓮も

「海斗、俺も!」


 海斗は立ち上がった

「もー! 皆、もう一度、初めからやるよ!」

 皆は声を合わせて言った

「はーい!」


 エレンは思った。海斗君は面倒見の良い青年なんだ。天国に居る明子さんは見ているかしら。良い子に育ったわよ。


 エレンはキッチンに向かい、スープとフライドポテトを作り始めた。お昼前になり、差し入れのサンドイッチと料理をテーブルに並べた。

 小野梨紗はエレンに歩み寄り、皆に声を掛けた。

「ママ、有り難う。みんな食事にしましょう!」


 皆はダイニングテーブルに着いた。海斗はエレンを見た。

「エレンおばさん、さっきから良い匂いがしていたんだよ。とっても美味しそうだね」

「有り難う、海斗君。それではランチにしましょう」


 エレンは子供達の顔を見渡し、下を向き小さな声でつぶやいた。続けて小野梨紗も同じ仕草を始めた。皆は二人の様子を見て、海斗に情報を求めた。海斗は両手を合わせた仕草を見せると皆はうなづいた。

 エレンは顔を上げた

「どうぞ、召し上がれ」


 皆は声を合わせて言った。

「いただきます!」

 皆は熱々のスープを口にして笑顔になった。

「美味しい!」小野梨紗は皆を見た。

「今日のスープはクリーミートマトスープよ」

 中山美咲は味わった

「美味しい! トマトスープに生クリームかしら? 珍しわね」

 エレンは中山美咲に話しかけた

「中山さん、エクセレント! 流石、お料理の出来る子ね。日本では生クリームが入ったトマトスープは珍しいでしょ。トマトスープと言えば、ミネストトローネが、ほとんどよね。アメリカではクリミートマトスープも多く食べられているのよ」

「エレンおばさん、私、知らない料理を食べられて嬉しいです」

「まあ、簡単なスープなのよ、後でレシピを教えてあげるね」

「わー、嬉しい。有り難う御座います」

 林莉子も楽しく食べた。

「クリーミートマトスープとフライドポテト、そしてサンドイッチ。

エレンおばさんのお陰で、アメリカンなランチになったわね」


 エレンは調理実習を思い出した

「そうそう、皆さん、先日は梨紗に料理を教えてもらい有り難う御座いました。梨紗が覚え立ての料理を私達に作ってくれたのよ。私は和食は作れないからパパも私も嬉しかったのよ」

 海斗も嬉しくなった。

「良かったね、梨紗。やっぱり美咲先生が良かったのかな?!」

 中山美咲は赤くなった

「もー、ヤダ、恥ずかしくさせないでよ!」

中山美咲の赤くなり照れた顔を見て、皆は笑った。

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