第84話 梨紗の家に行こう
海斗は説明をした。
「だって梨紗は英語を喋らなかったじゃん。お陰で梨紗とは親しくなったけどね。エレンおばさんが家族と話す時は英語だったでしょ。だから英語に親しくなったのは、エレンおばさんのお陰だよ!」
小野梨紗はホッペを膨らました。
「実は中学に入って英語の授業を受けた時、皆よりストレスが無くむしろ興味を持って学べたんだ。これは英語を喋るエレンおばさんと、見た目はアメリカ人で日本語を喋る梨紗と接していた経験が良かったんだと思うんだ。あ~、そうなると、エレンおばさんと梨紗のお陰だね。有り難う、梨紗」
小野梨紗は急に赤くなった。林莉子は気付いた
「さっきまで、怒っていたのに、急にしおらしくなるのね」
皆は笑った。
中山美咲は不思議に思えた
「どうして梨紗は、英語を喋らなかったの?」
「実はね、子供とは言え日本人の会話の中で英語が出ると、会話が止まるの。それはショックなのよ。だから小さい時から日本語で話せるように努力したのよ」
「へー、苦労したのね。それなのに海斗は努力に気付かないなんてね」
「そうでしょ、美咲! あんな言い方をするのは意地悪よね!」
「ゴメン、ゴメンね、梨紗」
海斗は小野梨紗に深く頭を下げると、小野梨紗はニコッと笑った。
林莉子はまとめた。
「じゃあ、今度の勉強会は梨紗の家ね」
今度の勉強会は小野梨沙の家で行う事になった。小野梨紗は学校の友達をエレンに見せたかったのだ。良い友達が出来て母親にも喜んで貰いたかったのだ。
(勉強会当日)
小野梨沙は自宅で待ち、海斗が皆を案内した。皆は関内駅で待ち合わせをしてお菓子と飲み物、サンドイッチを買いバスに乗り本牧に向かった。
車中で林莉子は言った。
「梨沙はバス通学なのは知っていたけど、案外学校の近くに住んでいるのね」
皆はうなづいた。
「俺もホームパーティーをするまで、本牧に住んで居るなんて知らなかったよ。あそこからなら自転車通学も出来る距離だよね」
林莉子は緊張していた。
「ねえ、海斗、私ね。外国の人と合うと、緊張しちゃうの」
中山美咲の表情も固かった。
「私も緊張をしちゃうわ。大丈夫かしら」
海斗は二人に安心をさせた。
「大丈夫だよ! 優しくて明るい人だよ。でもね、冗談が強いかな。あっ、言い忘れていたけど、玄関で靴は脱がないでね」松本蓮は続いた。
「へー、聞いた事があるよ。外国では靴を脱がないで入る習慣が有るんだろ」
鎌倉美月も続いた。
「日本で有っても、やっぱり外国の人なのね」
皆はうなづいた。すると海斗は言った
「うっそー! 」
「ムカッ!」
皆はムカついた。松本蓮は困った顔をした。
「おい、海斗! テンションが可笑しいぞ、嘘なのか?」
「そうかな、なんかテンション変みたい。靴は脱がないよ。日本と同じだよ。でもね、普段の食事は箸は使わず、ナイフとフォークなんだよ。それとね、食事の前に
イエス・キリストに感謝のお祈りをするんだ。いただきますとは、違う意味なんだよ!」
林莉子は疑った。
「海斗、今度はホントなの?」
「ホントだよ、莉子」
中山美咲は疑いの眼差しで海斗を見た
「海斗は随分、小野さんに詳しいのね」
「そうよ、しょっちゅう行っている、見たいじゃないの?!」
「いや、二回だけだよ。一回目はホームパーティーと二回目は、葵がエレンおばさんにアメリカンクッキーの作り方を教わりに行ったんだ。その時に小野家の習慣を知ったたんだよ。エレンおばさんは、お母さんが亡くなる前に交流か有ったママ友なんだ、だから俺、会うのを楽しみにしているんだ」
浮ついた空気が、生前の母親の話を聞いてしゅんとした。
中山美咲は反省をした。
「海斗、ごめんね。変な事を言っちゃって」
「ううん、ちょっと調子にのっちゃったね」
鎌倉美月はお互いの立場を理解した。
「しょうが無いよ、皆は初めて会う外国人に緊張しているし、海斗はお母さんの
思い出がある人だもんね」林莉子は思った
「やっぱり幼馴染みなのね。ねえ、蓮、海斗のお母さんは、蓮のお母さんとも
交流が有ったんでしょ?」
「う、うん、幼稚園の頃は有ったよ。小学校に入ると働き始めたからね。それからは話題には出るけど、交流は無かったと思うよ。話の最中だけど、そろそろ降りるバス停だよ。じゃあ、停車ボタンを押すね」
「ピンポン」
「あー、誰だよ! 俺が押したかったのに! 美月だろ?」
「私じゃ、無いわよ」林莉子は笑った
「甘いわよ、蓮!」
皆は笑った。
(小野梨紗の家にて)
小野梨紗は部屋とリビングを、バタバタと行ったり来たりしていた。エレンは心配をした。
「梨紗、そんなにバタバタしていたら怪我をするわよ」
「ねえ、ママ、この服、似合っている? 可笑しくない?」
「ええ、良く似合っているわ。だから落ち着きなさい。勉強会なんでしょ!」
「わ~、なんか緊張してきた」
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