第81話 目利き

 (三回目の調理実習の前日)

 海斗達はお昼の時間に、机を並べ昼食を取っていた。小野梨紗は話しかけた。

「ねえ、明日は調理実習最終日だね。私、日曜日に肉ジャガを作ったんだよ」

 海斗は驚いた。

「えっ、やるじゃん! エレンおばさん、喜んだでしょ?」

「うん、そうなの! ママもパパも喜んでくれたの。私、嬉しかったわ。ねえ、今日も買い出し行くんでしょ。私も行ってもいいかな」

 中山美咲は首を縦に振った。

「うん、一緒に行きましょう。食材の善し悪しを教えてあげるわ」

 海斗は言った。

「えー、せっかく美咲と二人きりの買い物だったのになー!」

中山美咲は不意に聞いた言葉に頬を染めた。


 小野梨紗は口を尖らせた。海斗は笑って返した。

「嘘だよー! 梨紗も一緒に行こうね」

梨紗は微笑んだ。林莉子も便乗した。

「ねえ、私も行ってもいいかな? 卵が安いんでしょ?」鎌倉美月も続いた。

「へー、それじゃあ、私も行こうかな」

 松本蓮も合わせた。

「なんだよ、みんな主婦みたいな事、言っちゃって。……じゃあ俺も行くよ」


 海斗はまとめた。

「じゃあ、皆で買い出しに行こうね」

 松本蓮はもう一つ欲しかった。

「明日は、豚肉の生姜焼きでしょ。やっぱり、ご飯が欲しいよね。どうせなら、ご飯を炊いちゃおうか?! 莉子上手だったし」

「授業なのよ。勝手な事は出来ないわよ。ねえ海斗」

「それじゃあ、帰りのホームルームで提案しようよ。ウチの班だけだと、良くないからね。だいち主菜を作るのに誰だってご飯が欲しいに決まっているよ」

 小野梨紗は海斗に笑いかけた。

「それなら、海斗に任したよ。ね!」

皆も海斗に期待をした。


 (買い出し三回目)

 放課後に海斗達はスーパーに向かった。松本蓮は店内を見回した。

「へー、このスーパー始めて入ったよ」鎌倉美月も見回した

「コッチは来ないもんね」

 林莉子は値札に注目をした。

「あら、ホント安いわね」


 中山美咲は小野梨紗に言った。

「ねえ、美咲、キャベツは何処を見て選ぶのが良いと思う?」

「ん~、どれも同じに見えるね。水水しいのを探すのかな?!」

「梨紗、一つ目は正解よ! まず色と艶ね。やっぱり美味しそうに見える物には理由が有るモノね」


 海斗は尋ねた

「一つ目と言うからには複数あるんだね」

 中山美咲は得意げに言った。

「ええ、そうよ。二つ目は持って見るの。ずっしり感じたら、しっかり詰まっている証拠よ。スカスカじゃ、味も量もがっかりよね。ほら持って見て」

 中山美咲は複数を持ち上げ二つの例を挙げた。小野梨紗は二つのキャベツを持ち比べてみた。

「ホントだー、持たないと分からないのね」


 中山美咲はキャベツを持ち上げて梨紗に見せた。

「三つ目は真横から見て、葉脈が左右対称な事を見るの。均等に日に当たり、健康に育った証なの。ココね。

 四つ目はひっくり返して裏から見るの。芯は五百円硬貨ぐらいの大きさがベストな大きさなの。食べ頃の成長具合を判断できるのよ。太すぎても細すぎてもダメなの。ついでに切り口の色を見るのも忘れないでね。乾燥していたり、変色しているモノは収穫してから時間が経っている証拠だからね」

 小野梨紗は感心をした。

「へー、こんなに見る所が有るのね、知らなかったわ」

 林莉子は自慢げに言った。

「そうよ、これが目利きよ!」

 中山美咲と林莉子は知っていたものの、その他の仲間はその知識に驚き感心をした。その後も調理実習で使うモノを買い物かごに入れた。ついでに皆は自宅用に、お得な卵を買って帰った。

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