第80話 肉ジャガ

 (調理実習室にて)

 生徒達は手を洗い、エプロンを着けて席に着いた。長谷川先生は割烹着を着て皆を見回した。

「はい、今日は調理実習二回目です。前回はご飯を焦がすものがいたが、これも経験です。人は失敗して成長するのです。今、先生は良い事を言いました! あら? 反応が無いのね。さあ、今日の献立は煮物です。各班の献立表を見ると筑前煮と肉ジャガが多いいですね。今日も火傷、切り傷の無いように調理を始めて下さい。特に堅い野菜が多いのでしっかり猫の手で、押さえるようにして下さい」


 中山美咲は司令塔となった。

「では、肉じゃが作りを始めます。海斗と蓮は野菜を洗って皮を剥いて下さい」

 海斗と松本蓮はジャガイモを洗い芽を取り除き、ピーラーで皮を剥いた。続けて人参とタマネギの皮を向いた。松本蓮はジャガイモの芽を見つめた。

「なあ、ジャガイモの芽は毒が有るって聞いた事が有るけど、ホントかな?」

 林莉子は答えた。

「そうよ、ソラニンとチャコニンって言う毒が有って、嘔吐や下痢、頭痛がするらしいわよ。だからしっかり取り除いてね」

「へー、可愛い名前をしているのにね。忍者のキャラクターみたいだねニンニン」

皆はニヤリと笑った。


 中山美咲は次の指示を出した。

「次にジャガイモは一口大に、人参は乱切りに、タマネギは、くし切りに切って

下さい」

 海斗には切り方の名前が理解出来なかった。

「乱切り? くし切り? どんな切り方だっけ?」

 林莉子は海斗と、鎌倉美月は松本蓮と交代をした。彼女達はテキパキと刻んだ。林莉子は糸こんにゃくを五センチの長さに切った。中山美咲は次の指示を出した。「次は梨紗の番ね、お鍋に油を入れて野菜とお肉を炒めてから水をいれて下さい。糸こんにゃくは最後に入れるから、未だ置いといてね」


 小野梨紗は切られた野菜を中火で炒めた。火が通ると中山美咲は指示を出し、鍋に水を入れた。

「へー、一度炒めてから煮込むのね」

「梨紗、この方美味しくなるのよ。アクが出て来たからオタマを使ってすくい取ってね」

「アクをすくい取るのね」

 野菜に火が入る頃に中山美咲は次の指示を出した。

「梨紗、次は味付けね。前もって計り取ってあるから、そのまま入れて下さい」

小野梨紗は、顆粒出汁、酒、みりん、砂糖、醤油を鍋に入れて混ぜた。

「最後に糸こんにゃくを入れて、弱火にして十分位煮込んだら出来上がりよ」

 小野梨紗は作り上げた。

「わー、やったー! コレで肉じゃがが作れるようになったよ! 美咲のお陰だよ」

 中山美咲は照れて笑った。皆も料理の過程が終わったので、ニコッと笑った。小野梨紗は火の通り方に疑問を持った。

「ねえ、ジャガイモに火が入ったかどうか、どうやって分かるの?」

 中山美咲は答えた。

「コレよ、この串を使って刺すのよ、火が通れば刺さるでしょ」

「おー、なるほど」


 海斗達は出来上がった料理の盛り付けを始めた。評価用に少量の盛り付つけも終わり、海斗は先生に声を掛けた。長谷川先生は歩み寄った。

「おっ! 今週も早くて綺麗だな。良いお嫁さんと、お婿さんになれそうだな」

皆は笑った 「ププ」

「見た目はA評価だ。味は……」

 長谷川先生は肉ジャガに箸を付けた。

「ん~、美味しいよ。味もA評価だね」


 早速、皆も箸を伸ばした。皆は笑顔になって「美味しい」を連呼した。

 林莉子は感心した。

「ジャガイモの火の入り方がちょうど良いわね。ホクホクで美味しいわよ」

 小野梨紗は、またも感動した。

「始めて、ちゃんとした和食を作ったよ。今度、パパとママに作ってあげるわ!」

 海斗はねぎらった。

「美咲、今日も上手くいったね。流石、美咲だね」

 林莉子は中山美咲を応援した。

「海斗、美咲に胃袋掴まれちゃったんじゃない?!」


 昨日喫茶「純」に居たメンバーは驚いた。中山美咲は強く言った。

「もー! そんなんじゃ、ないからー!」


 林莉子は驚いた。

「えっ! なんで、そんなに怒ったの?」

海斗、松本蓮、鎌倉美月は笑った。そして中山美咲は遅れて照れ笑いをした。

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