第79話 海斗の胃袋

 海斗はマスターと挨拶を交わした。

「マスター、こんにちは!」

「やあ、いらっしゃい。伏見君と中山さん」

「今日はマスター… …、えっ、みんな居るの?!」

森幸乃は海斗と中山美咲を席に誘導した。

「どうぞ、席に着いて」

皆は二人に注目をした。


 海斗は注目されている事に驚いた。

「えっ、なに? 珍しいモノを見るように、見ないでよ! あっ、稲垣さんと桜井さんも居たんだね。ご機嫌様!」稲垣京香は挨拶を交わした。

「ご機嫌よう」桜井メイも交わしたのだが

「ご機嫌よう。伏見君! 伏見君は中山さんに胃袋を捕まれていませんよね!」


 皆はストレートな発言に驚いた! 松本蓮は再び、コーヒーを吹き出した。

「ブー!」

「やだなー、何の話の話をしているの?」

桜井メイ以外はハスを見上げた。

「なあ、蓮! 何なんだ?」


「……いやね、桜井さんが二人の買い物を見て、同姓していると勘違いしているんだよ」


 中山美咲は真っ赤になった。海斗は桜井メイを見た。

「ああ、あのスーパーに桜井さんも居たんだ。声を掛けてくれれば良かったのに」

 中山美咲は説明をした。

「あれは調理実習の買い出しよ。別に二人の食事を買い出しに行った訳じゃ、ないのよ」

「あっ、そっか! 未だ掴んでいなんだ。心配しちゃったわ」

桜井メイはとぼけて、紅茶を飲んだ。稲垣京香は再び頭を下げた。

「伏見君、中山さん、驚かせちゃってゴメンなさい」

「やあ、良いよ。大した話じゃないしね。美咲はコーヒーで良い?」


 森幸乃は慌てた。

「あらヤダ、未だ注文も聞いていなかったわ」

「幸乃さん、コーヒー二つ、お願いします」

「お父さん、ホットを二つ」

「はーい」


 桜井メイは話題をそらした。

「そう言えば、ハロウィンパーティーの帰りね、マスターが松本君のスマホを届けてくれた時、ホント怖かったよね?!」


 皆は笑い出した。松本蓮は謝った。

「あー、ゴメン、ゴメン。ホント怖かった」

 鎌倉美月も思い出した。

「もー、蓮が悪いんだからね!」

 森幸乃は残念がった。

「ああ、私も見たかったな-! 皆の驚いた所。蓮君が悪かったのよね」

「そんな、モノじゃ無いよ。皆、必死だったんだから」

 稲垣京香は笑みを浮かべた

「メリーさんを見た後だからね、余計に驚いたのよ」海斗も続けた。

「うん、うん、そう言えばマスター、あれからメリーさん来た?」

「あれからは来ないよ。来ても困るけどね。来年のハロウィンにまた来たりして! ハ、ハ、ハ」

皆も、つられて笑った。


 海斗は続けた。

「マスターはアップルボビングを知っていたの?」

「ああ、知っていたよ。山下公園前のホテルで働き始めた頃にね、若い連中と余興でやったんだ。あそこのホテルは外国人のお客さんも多くて、ハロウィンパーティーは大きなイベントだったからね。だから、たらいって言われピンと来たよ。伏見君達のアップルボビングも楽しかったね」

「そうそう、パーティーから帰ったあの日。余りにしつこく質問するから答えたの。すると妹の葵がね、私も行きたかったって、しばらく言っていたんだよ。クラスの集まりだからって言ったけどね」

 鎌倉美月は困った顔をして言った

「やっぱりねー、それに楽しかったからね」松本蓮は気遣った。

「一緒に居たら、楽しかったけどね。まあしょうが無いよ」

 桜井メイは質問をした。

「伏見君には妹さんが居るのですか」森幸乃は言った。

「いるのよ。それもブラコンの!」

「えー、それじゃあ禁断の愛なんですか!」


 海斗は慌てて否定した

「禁断とか言わないでよ。兄妹だからね、家族愛だよ」

「会ってみたいな~。ねえ森さん、伏見君と似ているのですか?」

「そう言えば、似ていないわね。ねえ美月さん?」


 海斗の秘密を知る仲間は驚いた。触れて欲しく無い話題なのだ。

「は、は、そうかな~、ほら、ココなんてそっくり」

鎌倉美月は海斗の顔を指して、眉毛、瞳、鼻、口と順に移動して迷ったあげく、

頬を指した。ほらホッペなんか、そっくりじゃない?!」

 松本蓮は追い打ちをした

「そうそう、ホッペはそっくりだな!」

 中山美咲は笑った。

「ププ!」

 すると周りも笑い出した。森幸乃は言った

「もー、ホッペを指すかな~、でもね、とっても可愛い子だよ」

「へー、そのうち会えるよね、伏見君」

「ああ、そうだね。仲良くしてあげてね」

その後も皆は会話を楽しんだ。しばらくして帰路についた。

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