第78話 同棲疑惑

 (調理実習2回目の前日)

 放課後に鎌倉美月と松本蓮は喫茶「純」に向かった。二人は声を交わした。

「マスター、こんにちは!」

「やあ、いらっしゃい。松本君、鎌倉さん」森幸乃は言った。

「あら、いらっしゃい。今日は二人なの?! 珍しいわね」

森幸乃はお店で手伝いをしていた。


 すると稲垣京香が話しかけた。

「鎌倉さん、松本君、ご機嫌様」

「ご機嫌様!」稲垣京香は話しかけた。

「先日はハロウィンパーティーに呼んで頂き、有りが乙御座います。とっても楽しかったわ。良い思い出になりました」

 桜井メイは海斗を探した。

「松本君、今日は伏見君は、居ないのですか?」

「今日、海斗は買い物で居ないんだ。だから二人で来たんだよ」

森幸乃は二人を立たしている事に気づき促した。

「まずは座ってよ。話はそれから」


 松本蓮と鎌倉美月は、彼女達の隣のテーブルに着いた。

森幸乃は二人に尋ねた。

「ねえ、ナイショなんだけど海斗君、同じクラスの子と同棲を始めたの?」

鎌倉美月と松本蓮はコーヒーを吹き出した。

「ブー!」

マスターはグラスを落として割った。「パリーン」 松本蓮は驚いた。

「えっ、それ、誰の情報なの?!」

森幸乃は桜井メイを見た。


「あの、言って良かったのか、分からないのですが。多分中山さんだと思います。石川町のスーパーで、お米とか豆腐を二人で楽しそうに買っている所を私、見てしまったんです。」


 森幸乃は眉間にシワを寄せて思い出した。

「そう言えば、夏休みに二人だけで、ウチの喫茶店に来た時が有ったよ。

でも海斗君に、そんな事は出来ないわよね。だいち住む場所がないでしょ」

 桜井メイは興奮して続けた。

「もしですよ、秘密でアパートを借りていたら……、キャー! ダメ、ダメ」

桜井メイの脳裏には二人のラブラブ新婚生活が妄想された。

 松本蓮は記憶をたどった。

「ねえ、その買い物、一週間前だよね」

「はい」

「キャベツときゅうりも、買っていたでしょ?」

「はい、何で分かるんですか?」


 松本蓮と鎌倉美月は笑い出した。「ププ!」

二人以外は、笑う意味が分からず不思議そうな顔になった。


「それ、調理実習の買い出しに、行った時だよ! 今日も海斗が居ないのは、明日の買い出しに行って貰っているからだよ。なあ美月!」

「そうよ、まったく、驚かすのだから!」


 マスターと森幸乃、稲垣京香が笑い出した。

「は、は、は!」

桜井メイも恥ずかしくなり、かしこまった。稲垣京香は謝った。

「済みません。メイが変な事を言ってしまい、申し訳有りませんでした」


 桜井メイは事情が分かりホッとした。

「てっきり、同棲をしているかと思ったわ。変な話をして済みませんでした」

マスターは笑いながら声を掛けた。

「確かに伏見君に、そんな事は出来ないよね。でも勘違いしそうな場面だね」


 森幸乃は女子目線で考えた

「君達は調理実習中なのね。献立は何を計画したの?」

 鎌倉美月は献立を伝えた。森幸乃は言った。

「へー、それ皆で考えたの?」

「中山さんよ、友達の中では一番料理が出来るから、選んで貰ったのよ」

「フムフム、やるわね中山さん。松本君、この献立好きでしょ?」

「うん、好きだよ」

「やっぱりねー、男の子が好きな献立よね。中山さんは伏見君の胃袋を掴もうと

しているのね!」


 皆は驚いた。

「えーー!」


 鎌倉美月は否定した。

「えー、それは考えすぎじゃない?」

「そうかしら?! 女子力をアピールするのに、もってこいの機会よ! 男の子の好きな肉ジャガに豚肉の生姜焼きでしょ。しかも食材の買い出しまで、一緒に行っているんでしょ。目利きの効く所も見せ付けて、出来る女をアピールしているのよ。蓮君なら美月さんが、食材の目利きが出来て、料理が上手なら嬉しいでしょ?!」

「うん、嬉しい」

「ほらね」


 皆は深く考えた。桜井メイは席を立った。

「鎌倉さん、私、今からスーパーに行ってきます!」

「ちょっと、ちょっと! もう、買い物を終えて帰っているわよ」

 森幸乃は冷静になるように言った。

「そうよね、行ったってしょうがないよね」マスターは笑い始めた。

「伏見君は人気者だね、は、は、は」


 するとドアが開いた。買い物を終えた海斗と中山美咲が入って来たのだ。

皆は驚いた。

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