第61話 ハロウィンの朝

 (ハロウィン当日の朝)

 海斗は目を覚まし、いつもの様に服を着替えた。すると出窓に飛び跳ねた虫に目が止まった。海斗は覗き込むと、小野梨紗が言っていたクモだった。

「ねえ、ホントにお母さんなの? 今まで、そう言う目で見て来なかったから、良く分からないや。これも文化なんだよね。お母さん、今日はね、初めて友達とハロウィンパーティーをするんだ。楽しみなんだ。あっ、ちょっと待っていて」

 海斗はクモに話しかけると庭に向かった。庭に咲くコスモスを数本取り、花瓶に入れて部屋に戻って来た。クモの居る出窓にそっと飾ったのだ。

「お母さん、会いに来てくれて有り難う。家でゆっくりしてね。

では、行ってきます」

海斗は部屋のドアを開けたまま退室した。


 (喫茶純にて) 

 放課後、森幸乃は真っ先に自宅に帰り、マスターの手伝いをした。海斗達は予定時刻の三十分前に到着し、店内の壁に飾り付けをした。


 京野颯太のグループは壁に飾ってあった、海斗と松本蓮が撮った写真を見ていた。遠藤駿は感心をした。

「へー、良く撮れているね。確かに、この写真は金賞だね。皆の声が聞こえて来そうだ。この写真を見てフェリサの女の子が声をかけて来たんでしょ?」

 松本蓮はちょっと嬉しかった。

「うん、そうだよ。コレ、夏祭りの日に、撮ったんだぜ」

 京野颯太は思い出した。

「あっ、そうだよね、この浴衣を覚えているよ。美咲さんも綺麗だな。コッチの写真も良いね~、幸乃さんが美人に撮られている。確かに良い写真だ。松本君、伏見君、あの写真を売ってくれないか?!」


 海斗はムッとした

「京野は、そう言う所がダメなんだよ。なんでお金かなー?、」

 松本蓮は答えた。

「京野、俺の写真を売ってくれ、なんて言ってくれたのはお前が初めてだよ、有り難う。でもね、彼女たちの許可も必要なんだ。皆が良かったら無料であげるよ、友達だろ」遠藤駿も欲しかった。

「松本、良いこと言うな。許可が出たら俺にも頂戴!」海斗も続いた。

「じゃあ、俺もそれで良いよ、な、京野!」

「お、う、友達……か」

 店内の飾り付けが終わると、男子は仮装を済ませ外へ押し出された。女子は仮装を始めた。


 遠藤俊は狼男の仮装をしていた。

「学園祭を思い出さないか、今度は俺たちもコスプレをして、ワクワクしてきたよガオー!」松本蓮は海賊の仮装をしていた。

「ホント、既に楽しいね。京野も良く似合っているよ」

 京野颯太は吸血鬼の仮装をしていた

「わははは! お前の血を吸ってやろうか!」

京野颯太は松本蓮の首筋を噛む仕草を見せた。

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