第22話 箱根旅行(2)

 箱根の朝は横浜より清々しく、いろいろな野鳥と虫の声が聞こえた。皆は八時にビュッフェスタイの朝食を取った。休憩を取った後に準備を整えてヨネッサンへ向かったのだ。


 ここヨネッサンは、屋内外に沢山のプールがあり、中には変わり風呂と称してワイン風呂や日本酒風呂がある。箱根を代表する全天候型の大型レジャー施設だ。


 海斗と松本蓮は、更衣室からプール側に出て女の子の達を待った。

「海斗、楽しみだね。こんなハーレムは無いよなー! はやく女子の水着姿を見たいよね」

「蓮! 分かる、分かる! 俺も楽しみにしていたよ!」

「ウ、ハ、ハ、ハ」

二人は妄想モード突入で笑い顔が止まらないのだ。


 そして女子がおしゃべりをしながら現れたのだ。その姿は神々しく輝いた。女の子達はビキニを着け、悩殺ボディーを露わにしたのだ。


 小野梨紗が駆け寄って来た。

「海斗、松本君、お待たせ! 早く遊ぼう」

輝く白い肌にフリルのビキニが良く似合っていた。海斗も小野梨紗に手を振った。

「小野さん、可愛いね、とっても似合っているよ!」

「有り難う海斗、海斗も似合っているよ」


 他の女の子は、まとまって歩いて来ると、中山美咲が声を掛けた。

「伏見君、松本君、お待たせー!」

恥ずかしそうに両腕で体を隠した。

「中山さん、とっても似合っているよ」

「有り難う伏見君、でもちょっと恥ずかしいな」

 中山美咲のふくよかな胸にビキニが良く似合っていた。恥じらう姿がとてもかわゆい。

 次は葵ちゃんの登場です。葵はセパレートと思いきやビキニを着けていた。その姿は、とても初々しかた。

「お兄ちゃん、どうかなあ」

葵は振り帰り、左手の人差し指をあごに着けてポーズを取った。

「葵、とっても可愛いよ」

鎌倉美月は、ガン見の松本蓮に言った。

「蓮、あんまり見ないで、恥ずかしいよ!」

細身の林莉子は、堂々としていた。胸は平らだがスタイルが良いのだ

「どうせ、私はちっぱいですよー!」


 ふと海斗は鎌倉美月のパンチラを思い出した。動物園での出来事だ。一、二秒見えただけであんなに怒るのに、こんなに見せ付けて怒らないのはなぜだろうか? 疑問を持ったが折角なので見る事にした。


 皆は屋内プールから入った。最初に水に入った小野梨紗は、後から入る友達に水を掛けた。海斗も加わり、皆で水掛タイムとなった。皆の笑い声が響いたが林莉子は苦しんでいた。

「止めてよ、止めて! 息が出来ないわ」

 林莉子は最後に入水した為、皆の的になり集中的に水を浴びた。

「ゲホゲホ」

 松本蓮は指を指した。

「今度は、あっち行こうぜ!」

 咳き込んだ林莉子は取り残された。

「ちょっと待ってよー! ゲホゲホ」

林莉子は慌てて追いかけた。


 次はジャグジー風呂に来た。皆の体は癒やされた。海斗は中山美咲の横のジャグジーブースに並んだ。中山美咲は無意識に言った

「は~、気持ちいい~」

 海斗はその一言に耳を澄まして聞いていた。海斗の隣には松本蓮が並んだ。

「なんか色っぽい声出すよな~、何か良いよね、海斗」

「蓮、分かる、分かる! ずーと聞いていたいよね。あっ!」

鎌倉水貴は正面に立った。

「あんた達、また良からぬ事を、考えているでしょう!」

鎌倉美月は感が効くのだ。


 海斗達は洞窟にやって来た。ちょっと薄暗く、浅く水の張った洞窟を進んだ。鎌倉美月と松本蓮は一緒に歩いていた。その時だった、鎌倉美月が足を滑らせた。

「キャー!」

 松本蓮はすっと彼女の手を取り、沈みかけた体を引っ張り上げた。

「蓮、有り難う。蓮はいつも私を助けてくれるのね。大好きだよ!」

 鎌倉美月は松本蓮を抱きしめた。濡れた肌が触れあい松本蓮は赤面した。


 遅れて海斗達が洞窟を歩いた。小野梨沙が最初に歩き、海斗、中山美咲、林莉子、葵の順に進んだ。鎌倉美月と同じ場所で、小野美咲は足を滑らせた!

「キャー!」

 沈みつつも後ろの海斗に助けを求めたが、海斗は後ろの中山美咲と話をしていた。慌てた小野梨紗は海斗のパンツを掴んだ。海斗のパンツも合わせて沈んだが、海斗は立っていた。そう、海斗の息子が丸出しになってしまったのだ。


 中山美咲は目線を下げ、しっかり見てしまった。その後ろの林莉子も、更に葵までも見てしまったのだ。

「キャー!」

 三人は目を覆わず口を覆った。恥ずかしくなった海斗は、慌てて反対側を向いた。

「キャー!」

 小野梨紗が叫んだ、上半身を起こした小野梨紗に限っては顔の正面に、海斗の息子に会ったのだ。コレは大人限定の距離だ。海斗は慌ててパンツを上げた。洞窟を出た皆は、全員赤面をしていた。松本蓮と鎌倉美月は自分達の世界に入っていたので、後ろの騒ぎには気付かなかった。


 海斗は大きな声を出した

「もー皆に大事な所を見られちゃったよー! 小野さん、俺の大事な所を見たでしょ!?」

「見てないわよ」

「あんなに、目の前で?」

「海斗、見てないよ!」


 海斗は後ろを向いた。

「中山さんは、見たでしょ?」

「私は見てないわ」

「林さんは?」

「ぜんぜん、見えなかったよ」


 海斗の大事な所を見た女子は、赤面しているのに否定をした。海斗は葵に聞いた。

「葵は見えた?」

「お兄ちゃん、残念だけど大事な所も、お尻も見えちゃったよ!」

 海斗は恥ずかしさがマックスとなった。

「エーー! それじゃあ、フルコースじゃん! 恥ずかしいよ!」

 海斗は真っ赤になって、そこから逃げ出した。海斗は離れたベンチで頭を冷やしていた。


 しばらくすると松本蓮が呼びに来て、海斗は戻りプールサイドに立った。ワニのように水面から顔を出す女子は、赤い顔をして海斗の腰辺りを見ていた。水面とプールサイドでは高低差が海斗に不利に反映された。海斗は恥ずかしくて目線をそらすためにプールに入った。小野梨紗は謝った。

「お帰り海斗! さっきはごめんね。昔は、ちっちゃかったのにね~!」

「うるさい梨紗! やっぱり見たんだろ!」

小野梨紗は照れて頭を掻いた。


 その時だった「ジャブ~ン!」

大きな水しぶきが立ち、京野颯太が現れたのだ。京野颯太は中山美咲の手を取った

「美咲さん偶然ですね。ハハハ」

続けて遠藤駿、橋本七海、佐藤美優、田中拓海、鈴木萌が現れた。

 遠藤駿は松本蓮に耳打ちをした

「ご免ね。アルバイトで海斗達がウチに居ることを知られて、黙っていたけど強引に聞き出されちゃったんだ」


 京野颯太は無理やりでも偶然を装い、中山美咲とプールに入りたかったのだ。いや、中山美咲の水着姿が見たくて、仲間の費用を負担してまで連れて来たのだ。


 海斗達は京野達と合流し、屋外のウォータースライダーに向かった。海斗と松本蓮は最初に滑った。松本蓮は後から滑る友達をスマホで撮った。

 皆は楽しい顔をして滑っていた。入水すると顔まで水に浸かるため、水面から浮上す時に変顔になるのだ。松本蓮はその変化のある表情も撮っていた。


 最後に滑り下りるのは、トリをとるのに相応しい、ミスグランプリの橋本七海だ。彼女はスタート位置に立った。まさにグラビアクイーンの様な出で立ちだ。このまま週間少年漫画の巻頭カラーを飾れそうなのだ。彼女の変顔を撮るべく松本蓮は、連続シャッターを切った。

 橋本七海はイキヨイよく滑り下り入水した。水面から濡れた顔が出てきた、その時だった。立ち上がった彼女はトップレスだった。ブラが外れた事を気が付いていなかったのだ。

「キャー!」

 先に滑った女子が慌てて、掛けより手で隠した。男子は目が皿になった。こう言う時の女子の団結力は凄いものがある。サーッと何事も無かったかの様に、橋本七海を隠し移動た。海斗のポロリと大違いだった。


 女子が居なくなると、松本蓮の所に男子が集まった。見せろ、見せろ、の大騒ぎだ。松本蓮は写真を再生した。バッチリ写っていたのだ、少年誌なら星印が付いている所だ。男子は歓声を上げた。

「ウォー!」

 京野颯太は既にお金の交渉をしようとしていた。松本蓮は言った。

「これ、惜しいけど消すよ。だから皆、良く目に焼き付けてね」

 遠藤駿はがっかりした。

「えー、それは無いよ。何とかなりませんかねエ松本さん。特上のうな重で手を打ちませんか?」

 流石、遠藤駿も商売人の息子だ。松本蓮は唾を呑んだ。

「やっぱりダメ! 万が一データが出回るような事が有ったら大変だもん。だから良く肉眼に納めてね」


 松本蓮は女子が来ないうちに削除した。遠藤は残念だった。

「あ~、もったいないなー!」

 海斗は松本蓮の肩を持った。

「蓮、それでいいんだよ。写真を撮る者としてコンプライアンスは必要だよ」

 松本蓮は遠藤駿に話しかけた。

「遠藤、見られただけでも価値があったろ。だからこの方が丸くいくんだよ」

「あ、あ、そうだよな、松本」

男子はまるで一等の宝くじを捨てたかのような気分だった。


 そして女子が戻って来た。鎌倉美月は凄い迫力で迫った。

「ねえ蓮! さっき写真を撮っていたよね。スマホ見せなさいよ!」

 林莉子もすごい迫力だった。

「他に写真を撮っていた男子は居る?! いたら出しなさい!」

 松本蓮は答えた。

「ちゃんと消したよ。こう言う事は大事だからな」

 鎌倉美月はスマホに写真が無い事を確認した。男子は恐怖に怯えた。

「大丈夫、写真は削除されているよ、安心して」

橋本七海も、その他の女子も安心をした。


 佐藤美優が橋本七海を見た

「七海は大きいんだから、注意しなきゃダメだよ、分かった?!」

「分かったわよ。松本君、削除してくれて有り難う」

橋本七海は松本蓮に頭を下げた。

 松本蓮は照れて赤くなった。すかさず鎌倉美月が肘鉄をおみまいした。ようやく皆が笑顔になった。


 続けてワイン風呂に移動した。橋本七海は温まりピンク色になっていた。妙に色っぽかった。京野颯太は橋本七海に見とれてのぼせていた。

 遠藤駿は海斗に言った。

「伏見、ちょっと休んでから行くから気にしないで行って。お疲れ様!」

「ああ、遠藤に任せて悪いな、今日は楽しかったよ。またね」


 海斗達は他のプールに移動した。松本蓮は海斗に言った。

「なあ海斗、楽しいな。思いもよらずミスグランプリのポロリまで見られてさあ」

「ホント楽しいね、蓮、今年は特別だね」


 この後も海斗達はいろいろなプールで遊び、帰路に付いた。十七時に小田原に到着し乗り換えた。帰りの東海道線はすっかりお昼寝タイムとなった。皆は夏休みの楽しい思い出が出来た。


 帰宅すると葵は、海斗の独占欲が抑えられなかった。いつもの様に海斗の部屋に行き、夜遅くまでテレビゲームを楽しんだ。葵の箱根旅行はテレビゲームで締めくくったのだ。葵は二人だけの楽しい思い出で締めくくった。

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