第11話 課外活動
放課後に、海斗、松本蓮、鎌倉美月、森幸乃は、写真部の部室に居た。森幸乃も写真部の放課後にも慣れことも有り、松本蓮は課外活動の計画をした。
「たまには写真部らしく、写真を撮りに行かないか?」鎌倉美月は答えた。
「そうね、お喋りの時間も楽しいけど写真部だしね。森さんの行きたい所は有りますか?」
森幸乃は考えた。
「そーねえ、みなとみらいでお洒落な風景を撮るのも良いけど、出来れば自然なモノを写したいかな。学校から近いし山下公園はどうかな、松本君」
「んー、景色は良いけど、この時期はお花や植物がイマイチかな、海斗はどう?」
「それじゃあ動物園はどうかな? 花は関係ないし」
松本蓮はピントきた。
「それ良いね! じゃあ、野毛山動物園はどうかな? 森さんは知っている?」
「名前は聞いた事が有るけど、言ったことは無いわ……どんな所なの? 伏見君」
「日ノ出町駅から徒歩二十分位の所に有って、小さい動物園だけど、ライオンもキリンも居るんだよ」
「へー、近いし大きな動物が居のね。行ってみたいな」
「それじゃあ、明日は天気も良いし、放課後に課外活動に行こう!」
皆は賛同した。
その日の夜、松本蓮は明日の天気予報を見ていた。
「続いて横浜の天気は晴れ、所により突風が吹くでしょう……」
松本蓮は晴れを確認し、安心をして一眼レフの手入れをした。
(放課後の課外活動)
四人は野毛山動物園に向けて上り坂を歩いていた。海斗は鎌倉美月に言った。
「いつも思うけど、この坂道きついよね。きつすぎだよ!」
「だって野毛山だもん。山よ、しっかり登っているのよ。お楽しみが有るんだから、このぐらい登らないとね」
皆は動物園の入り口に到着した。森幸乃は入り口を見回した。
「へ~、こんな所にあるのね。しかも無料なのね! 今時、珍しいわ」
入園すると可愛いライオンの形をした募金箱があった。
鎌倉美月は鞄から財布を出して小銭を入れた。
「無料なんて珍しいから、少額だけど協力するの、継続してもらいたいからね」
続けて海斗、松本蓮、森幸乃も鞄から財布を出し、小銭を募金箱に入れた。
四人は歩き始めると、レッサーパンダが出迎えてくれた。森幸乃は駆け寄った。
「わー、かわいー! レッサーパンダだよ」
森幸乃はスマホを取り出し撮り始めた。松本蓮は様子を見て森幸乃に歩み寄った。
「森さん。写真は興味をそそられるモノに被写体を合わせ、シャッターを切る! これが楽しいと思えると、写真を撮る事に興味が湧くんだよね」
しばらくして、松本蓮は森幸乃の写真を見せて貰った。
「いっぱい撮れたね。今度は背景を意識して撮ると、もっと良い写真になるよ。例えばレッサーパンダは中心に置いたまま、木々の緑と空の青が入るように、角度を変えて見るんだ。背景が殺風景な鉄小屋から自然に居るみたいに写るよ。やってみるね」
松本蓮は見本を見せた。森幸乃は関心をした。
「本当だー、背景のお陰で自然に見えるね。松本君、凄い! 」
鎌倉美月は海斗に小さな声で話しかけた。
「私の時には、あんなに優しく教えてくれなかったのに! ねえ海斗、どう思う?」
「そうかもね美月、でも丁寧に教えて貰えば、きっと写真が好きになってくれるよ!」
「もー、そうゆう事を言っているんじゃ無いの! 」
鎌倉美月は、海斗に八つ当たりをした。
森幸乃は首を傾げて考えた。
「なんでレッサーパンダって、小さいのにパンダって、言うんだろうね」
海斗は学者の物マネをして得意げに答えた。
「エッヘン! 森くんは既に答えを言っているんだよ! 元々はね、レッサーパンダをパンダって呼んでいたらしい。パンダは竹を食べる珍しい動物に名付けられた名前なの。後で竹を食べる大きな白黒の動物が見つかって。それをジャイアントパンダと呼び、元々のパンダを小さいパンダ、レッサーパンダって呼んで区別するようになったのだよ。森くん、解ったかな? 因みに動物学的には別の分類の生き物なんだって!」
皆は海斗に拍手をすると、森幸乃は再び関心をした。
「伏見君、すごーい! 博学なのね」
海斗は後頭部を触り照れた仕草をした。森幸乃は続けて松本蓮に話しかけた。
「松本君、今日は空いていて良かったね」
「森さん、平日を選んだ理由は、そこなんだよ。人が邪魔で写真が撮りにくいでしょ」
「流石、松本先生!」
松本蓮も照れた。森幸乃は人を持ち上げるのが上手なのだ。その後も次々とライオン、虎、しま馬、キリンを撮影した。
松本蓮はキリンの策の前で、鎌倉美月に撮影のアドバイスをしていた。
海斗は森幸乃に話しかけた。
「森さん、今度は俺にも撮った写真を見せて貰ってもいいかな」
森幸乃は海斗に写真を見せると、しぱらく見てアドバイス始めた。
「良く撮れているね。それとねキリンのような大きな動物を撮る時は、自分が移動するのは難しいよね。違う方法でアプローチするの。こう言う時はカメラを置き、構図探しからするといいかな。カメラマンがよくやるポーズ、トリミングポーズって言ってね、両腕を被写体に向けて伸ばし、左右の指でフレームを作るの。そのフレームを覗きながら手前に引くと広角、奥へ伸ばせば望遠。カメラマンがあのポーズを取っている時は、立ち位置から見える景色のどこを切り取ろうか考えているんだ。カメラを覗くと視界が狭くなるからね。対象を決めてからカメラを覗くんだ。
それとキリンの場合、キリン全体を撮ると背景の比率が多くなるから、キリンを撮っているのか、キリン入りの景色を撮っているのか、写真を見た人には、解りづらくなるよね。こう言う時は敢えて肩から上のキリンを撮るの」
海斗は自分の写真を見せた。
「伏見君、凄い。キリンの表情まで見えていいね。伏見君も写真に詳しいのね」
「見る人に何を伝えたいのか考えて撮るの。これも蓮からの受け売りだよ」
海斗は照れて笑った。
歩きながら沢山の動物を撮影した。海斗は話しかけた
「なあ蓮、そろそろ休憩所が有ったよね、休もうよ」
「うん、そうしよう」
四人は休憩室に入り、お互いの写真を見せ合った。松本蓮は森幸乃を見た。
「どうだった森さん、楽しめたかな? 嫌になってない?」
「丁寧に教えてくれるから、とっても楽しかったよ。」
「なら、良かった。また課外活動しようね。それと大事な事だけど。沢山写真を撮ったから、帰ったら選別しないとね。ピンボケや同じような写真とか、要らない写真を削除した方がいいよ。一つ一つ見ていると、結構な時間を取られる作業だからね。これを怠ると収拾がつかなくなるし、無駄にメモリーを占有しちゃうからね。最悪、スマホがフリーズする場合があるから気を付けてね」
「はい、分かりました。しっかり整理しないといけないのですね、松本先生!」
「やめてよ~、先生なんて恥ずかしいよ、森さん」
四人は休憩所を終えると、出口に向かった。鎌倉美月と森幸乃はガールズトークで、盛り上がっていた。どうやら馬車道に新しく出来た行列の出来るスイーツ屋さんの話らしい。
海斗と松本蓮は、楽しそうに話す二人の後ろを歩いた。
「なあ海斗、こうして写真が撮れるのも、お前のお蔭だな。何か悪いな」
「俺は、楽しいよ。ほら前の二人を見てご覧よ、女子だって楽しんでいるだろ」
皆は出口に向かい、階段を上がっていた。その時だった、強い風が吹いた。乙女のスカートが舞い上がったのだ。
松本蓮と海斗は、今日一番のシャッターチャンスに遭遇したのだ。しかしカメラなど準備出来る訳も無かった。松本蓮は肉眼で高速連続シャッターを切った。「カシャー・カシャー・カシャー」いつ、こんな能力が開花したのであろう。一コマずつ映像は脳裏に焼き付けられた。海斗も過去の遊園地デートで、この能力を既に取得していた。
彼女達の舞い上がったスカートと、露呈した乙女の下半身は夕陽を浴びて輝いていた。鎌倉美月はポテッとした柔らかそうなお尻に純白な下着が映えた。森幸乃は小さくキュートなお尻に淡い水色の水玉模様の下着が映えたのだ。
すぐに引力に従いスカートは舞い降りた。そして振り返る女子、海斗達も女子にシンクロするようにそっぽを向いた。更に松本蓮は口笛まで付けてとぼけた。いささか不自然だ。継続して凝視する女子。頃合いを見て海斗達は前方に顔を戻した。
だが未だ凝視は続いていた。女子は海斗達の表情を見抜いた。残念な事に男子の顔は赤面し緩みきっていたのだ。女子の表情は怒に変わった。
「蓮、見たでしょ!」
「美月、見てないよ」
「伏見君は見たでしょ!」
「森さん、絶対に見ていません」
その後も、しばらく女子の追求が続いたが、男達は口を割らなかった。そこから先は突風対策で、海斗達が先頭を歩いた。
それはそれで緩んだ顔を見られなくて都合がよかったのだ。鎌倉美月の追及は解散するまで続くのであった。
鎌倉美月は言った。
「だって、見たって顔に書いて有るじゃん!」
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