第9話 グループ分け
修学旅行先について、二年B組のホームルームが始まった。複数の候補地から話し合いで、北海道と沖縄の二カ所まで絞り込んだ。
担任の長谷川先生は発表をした。
「先日から話題になっていた、旅行先の投票の結果は北海道に決まりました」
生徒達から歓声と落胆する声が上がった。
「二泊三日の内、一日目の札幌と、二日目の小樽で、グループ別に分かれ自由行動をします。このクラスは一グループを六人で分け、五グループ作ります。必ずグループ長を決めるように。分け方は任せるから学級委員長の山田は、このホームルームを使って、大枠を決めるようにして下さい。来週のホームルームでグループを発表します。まとまらない時は出席番号順に分けるぞ。それが嫌なら山田に協力をする事。後は山田よろしく!」
学級委員長の山田翔太は教壇に立った。すこしの間、頭を整理して話し始めた。
「それでは、話し合いの時間を設けます。気の合う友達と六人のグループを作って下さい。六人未満の場合は足りない人同士を足して調整します。私に言って下さい、それでは始めて下さい」
生徒達は席を立ち、グループ作りを始めた。
京野颯太は早々に中山美咲に声をかけた。
「美咲さん、宜しければ私と一緒のグループになって頂けませんか。もちろん自由行動の時はハイヤーを用意しますので、好きな所にお連れしますよ」
京野颯太はアピールポイントも入れて中山美咲を勧誘した。流石京野颯太である。
中山美咲は、考えた振りをした。
「ごめんね、誘ってくれて有り難う。先週、伏見君達に誘われて返事をしたの」
「そっか~、それじゃあしょうがないか~、しょうが無いよねー」
京野颯太はとても悔しかったが、諦めざるを得なかった。この数週間ビジネスが忙しく、クラスの情報収集を怠っていた。またグループ分けは中山美咲本人が決める事なので、思い通りにはいかなかったのだ。海斗達は早々にグループを取りまとめた。
海斗のメンバーは、伏見海斗、松本蓮、鎌倉美月、中山美咲、林莉子、小野梨沙の六人。いつもの仲良しグループだ。京野颯太のグループは、京野颯太、遠藤駿、田中拓海、橋本七海、佐藤美優、鈴木萌の六人。こちらも普段からの仲良しグループである。
そして翌週のホームルームにて、グループが発表された。次にグループごとに別れ自由行動の話し合いが行われた。騒がしい時間となった。
鎌倉美月は皆に話しかけた。
「札幌も小樽も、時間はタイトだからアチコチには行けないわよ」
中山美咲も続いた。
「絞って時間をかけるか、身近な数カ所を速足で回るかと言う事ね」
林莉子は考えた。
「札幌の自由時間は四時間、小樽の自由時間は五時間。確かに移動時間を考えるとタイムロスが多くなるわね、ねえ鎌倉さん」
「まずは、行きたい所をリストアップしましょう」
中山美咲も続けた
「徒歩圏内で探すと意外に限られるのね。確かに遠くに行くなら、一、二カ所ね」
林莉子は大きな声を出した。
「ちょっと、聞いているの! 伏見君に松本君!」
二人は鼻の下が伸びっぱなしで、顔も緩みっぱなしなのだ。既にグループが決まったところで、心は解き放たれたのであった。海斗は中山美咲と旅行が出来る喜び。松本蓮は女の子達とハーレム旅行が出来る喜び。どちらもとっくに上の空である。行先に拘りなど無いのだ。
海斗は林莉子を見た。
「ごめん、ごめん、ちょっと考え事していた」松本蓮はも続いた。
「悪い、悪いわ、俺も考え事しちゃって」
鎌倉美月は見抜いていた。
「あんた達ちゃんと、参加しなさいよね!」
鎌倉美月は二人に拳骨をした。「ゴツン!」
海斗も松本蓮も、緩んだ顔が戻った。林莉子は提案をした。
「エッヘン、テレビ棟が出発と集合場所なら、まず時計台を見て、北海道庁を見て、大通り公園を回り、集合場所のテレビ塔に上がり時間調整するのはどうかな」
中山美咲は賛同した。
「いいわね、莉子、地図で見ても、近い場所にまとまっているしね」
小野梨沙も続いた。
「集合場所で、時間調整出来るのもいいよね」
林莉子は続けた。
「大通り公園に行って見たかったしね」
中山美咲は笑みを浮かべた。
「じゃあ、札幌市内はこれで良いかな。良かったこれで決まりね」
林莉子が参加しない男子に大きな声を出した。
「だから、そこの男二人! 参加しろって、言ってんのー!」
盛り上がる女性陣とは対照的で、下調べをしていなかった男子は、地名も、距離感も分からず、うなずくしかなかったのだ。中山美咲は二人を見た。
「伏見君と松本君は、これでいいの?」
二人はうなずいた。
「うん」
ホームルームでは時間切れとなった。放課後に小樽の自由行動を話し合ったのだ。海斗達は北海道旅行の打ち合わせをきっかけに、皆とSNSのグループを作った。お互いが連絡し易くなったのだ。
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