第8話 お礼のお食事会

 喫茶「純」の娘、森幸乃はクレーマー事件のお礼に食事会を進める為に、海斗のクラスにやって来た。

「ねえ伏見君、松本君、鎌倉さん、この間のお礼に食事会をしたいの。食後に一番人気のスペシャルパフェも付けるからね。来週の土曜日は如何ですか?」

 スペシャルパフェが、鎌倉美月の乙女スイッチを入れた。

「えー! あの一日、五食限定のスペシャルパフェを頂けるのですか」

 松本蓮は鎌倉美月を見た。

「美月、そんなつもりで助けた訳じゃないだろ。迷惑を掛けたのにご馳走になるは悪くないのか!」

「ぜんぜん、気にしなくていいの。お父さんが言っているんだから来て、来て!」

 海斗も続いた。

「なあ、蓮、折角だから、お言葉に甘えて御馳走になろうよ。今回の立役者の美月が、乗る気なんだからさあ」

 森幸乃の表情が明るくなった。

「時間は、夕方四時からにしたいの。お店の都合があってね、比較的空いている時間なんだ。早夕飯のつもりで良いかな?」

 松本蓮は頭を下げた。

「それでは、お言葉に甘えて来週の土曜日に伺います」

森幸乃は微笑み、約束をして教室を後にした。


 小野梨紗は、一緒に行けない事が寂しかった。

「い~な~。ねえ海斗、私も事件に参加したかったなあ」

「それは、お食事会が前提だよね」松本蓮も続いた。

「小野さんが居たら、事件が変わっていたかもね。あっ、校長先生が言っていたじゃん。もし犯人がナイフを持って逆上したらってさあ、なあ美月」

「そうそう、小野さん刺されちゃったかもよ~!」

 小野梨紗は想像して怖がった。

「やっぱり、怖い思いをするのはヤダよ!」

困った小野梨沙を見て三人は笑った。


 (お礼のお食事会当日、喫茶「純」にて)

 海斗、松本蓮、鎌倉美月は部活の放課後に、喫茶「純」に向かった。そこには笑顔で向かい入れる森幸乃とマスターが居た。

「わざわざ来てくれて有難う」

 森幸乃は海斗達を席に誘導をした。

「さあ、さあ、座って、座って」

マスターは話し掛けた。

「先日は、面倒な事に巻き込んでしまって申し訳なかった。学校には正しく理解して貰える様に、私から連絡をしておいたけど大丈夫だったかい?」

 海斗は答えた。

「お陰で学校側には良い印象を持たれ、何も無かったです」

 鎌倉美月は斜を向いた。

「校長室に呼ばれたけどねー……」

「皆、本当に悪いことをした。だからせめてもと、お礼の会を計画したんだ。今日は美味しいものを用意したから、沢山食べてね」

森幸乃はマスターが用意した料理を、次から次へとテーブルに並べた。


 海斗は驚いた。

「凄い、豪華だね、いつもドリンクしか注文しないから豪華な料理に驚いたよ!」

 森幸乃は得意げになった。

「エッヘン、うちのマスターは山下公園の前に有る、あの有名ホテルで修業した

腕利きのシェフだったのよ!」

 更に三人は驚いた。

テーブルに並べられた料理はメニューに無い、特別な料理だった。

「マスター、有難う!」

 鎌倉美月がお礼を言うと続けて二人もお礼を言った。


 確かに一つ一つが見た目も美しく丁寧な料理が並んでいた。四人がけのテーブルに森幸乃も加わり食事会が始まった。招待された三人は、豪華な食事を美味しく頂いた。

「皆は部活に入っているの?」

 鎌倉美月は森幸乃に答えた。

「三人とも写真部だよ。蓮が写真好きでね、私と海斗はつられて入ったの。一月に一回、活動報告として気に入った写真を提出するのよ。毎日放課後を制約されないのが写真部の良い所なのよ!」

「だから、皆は良くお店に来てくれるのね」


 海斗は頬張利ながら言った。

「森さんは部活に入っているの?」

「私は帰宅部なの。時々、家の手伝いも有るしね」

 松本蓮は恥ずかしそうに森幸乃を見た。

「それじゃあ、写真部に入部しなよ。写真に興味がなくてもスマホが有れば、活動報告が出来るし、何より可愛いから大歓迎だよ!」

その顔を見た鎌倉美月は、テーブルの下で松本蓮の足をジリジリと踏んだ。

 海斗も続いた。

「港湾課の生徒もいるし、良かった見に来に来るといいよ」

「そうよ、男子の比率が多いから女性が入ると助かるなあ、女の子も喜ぶよ」

「それじゃあ、見に行こうかな。私ね、普通科の生徒と付き合いが無いから、ちょっぴり楽しみだな」海斗は答えた。

「それじゃあ、今度、部室に来るときは連絡をしてね」

そして四人は連絡先の交換をした。

 

 すると松本蓮が唐突な質問をした。

「森さんは彼氏、いるの?」

 海斗は吹き出し、鎌倉美月は怒った。

「あなたねえ! 友達になり立ての人に、何、聞いているのよ!」

カウンター越しにマスターが客席を覗き込んだ。海斗も興味心身だった。

「うん、うん、俺も知りたい」鎌倉美月は続けた

「ホント、男ってバカよね、応えなくていいわよ」

 森幸乃はためらいながらも答えた。

「いないよ……なかなか機会なくてね」

 聞き耳を立てていたマスターは安心をし、鎌倉美月は森幸乃に理解を示した。

「うん、分かる、分かるー。出会いが無いのよね-!」

 ここからガールズトークあるあるで、二人は男子を置き去りにして、しばらくの間、盛り上がっていた。


 森幸乃は質問をした。

「ところで、写真部は放課後の拘束が緩いのに部室で何をしているの?」

 松本蓮は答えた。

「そう思うよね、部室に居たら写真も撮れないしね。主にミーティングをする為の部屋と隣にはフィルム写真を現像する暗室があるんだ。俺はデジタルカメラ派だから、その部屋は使わないけどね」鎌倉美月も続いた。

「女子は、おしゃべりをしているの。むしろそれが部活動みたいになっているのよ」 

 海斗も続いた。

「それと毎年、学園祭に写真部も参加をしていて、写真の展示があるんだ。それぞれ、気に入った写真を展示するだけ何だけどね」


 その後も四人は港湾課の事、普通科の事、同じ学校だけど知らない事を話した。森幸乃は新しい友達が出来て嬉しかった。

 後日、森幸乃が部室に訪れ入部する事となった。森幸乃は海斗達と放課後を過ごす時間が増えたのだった。

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