第2話:愛を教えて

 1994年に菜花は生まれた。家はごく普通の一般家庭だったが、彼女が生まれてから3年後に妹を身ごもっていた母親の茉里奈は二人の父親であり旦那でもあった宏大と別居状態になり、その別居中に妹の悠花が生まれたのだった。そして、宏大と茉里奈は離婚調停を行い、翌年に離婚した。そして、シングルマザーとして2人の娘を育てながら大手商社に勤めていたこともあり、彼女たちとの時間がなかなか取れない日々が続いていた。


そんなときに同じ職場の共通の友人から今の旦那さんである隆一朗を紹介された。この時、隆一朗が30歳、茉里奈は27歳だった。初めて二人が会ったときはどこかぎこちない感じがあり、なかなかお互いの友人がいないと話すことが出来なかった。


そして、二人が出会ってから数ヶ月後に隆一朗が勇気を出して、彼女と付き合いたいと彼の胸の内を彼女に打ち明けたのだ。彼女は彼のひたむきな思いに惹かれて、二人は付き合い始めたのだ。その日から二人は順調に愛を育み、ついに隆一朗が「家族と会わせたい」と言ってきたのだ。


 彼女はその提案を快諾した。そして、約束の日に約束の場所に行ってみると隆一朗の他に2人の男の子が立っていた。彼女は何かの見間違いだと思い、恐る恐る近づいてみると、彼が「これまで隠してきたけど、この子たちは僕と別れた奥さんの子供だ」というのだ。


この紹介を聞いて彼女はあっけにとられた。なぜなら、彼に子供がいるとは想像することが出来なかったからだ。しかも、長男の正貴君は中学1年生、次男の知貴君は小学校4年生と茉里奈の子供である4歳になったばかりの菜花と1歳になったばかりの悠花と同じ年齢差であることにも驚いた。


そして、彼らは祖母に迎えに来てもらい、途中で帰宅した。彼女は「この人なら再婚しても問題ない」と確信していたが、どこか前の夫のことで引っかかっていた。そのため、付き合うことは出来ても“結婚”という二文字にはまだ遠く及ばなかった。そして、二人の交際は進み、次のデートからはお互いの子供を連れて子供同士の相性を確かめることにした。これも結婚するためには必要な事だとは思っていたが、娘たちは父親の顔を知らないため、男性に対して恐怖心を抱かないか心配だった。しかも、彼女たちの父親とは物心つく前に離婚していたため、父親からの愛を受けたことがなかった。


 そのため、茉里奈は菜花をリビングに呼んで話をした。すると、菜花は「私はママと一緒が良い」と言ったのだ。理由を聞くと「私はパパがいないほうがいい!」と子供にとって父親を知らないことでパパがいる生活が考えられなくなったのだろう。


 その後、茉里奈は隆一朗と再婚することになり、今住んでいる家は宏大と茉里奈が連名で買ったのだが、離婚調停の際に宏大が財産放棄をしたため、彼女が管理する権利を持っていた。そこで、この家は賃貸として貸そうと決めたのだ。そして、その週の週末には不動産管理会社に連絡し、賃貸として貸し出したいと告げたのだ。


 そして、隆一朗の家へと引っ越す日に何もなくなった我が家を見て「今まで5年間ありがとう。また戻って来られるときまで素敵な人に使ってもらってください」と心の中で感謝していた。


 隆一朗の家は彼女が住んでいたところから約80キロ北上した郊外にある。そのため、移動中はなんとか子供たちの機嫌を損ねないよう


菜花には2人の兄と3人の妹と弟がいる。しかし、彼女と実の兄妹姉妹として血が繋がっているのは母親の連れ子である菜花と妹の悠花だけだ。他の兄弟姉妹は兄・竜也と智也は父の連れ子で異母兄弟、妹の彩菜と優菜は今の父親と母親の実子で異父姉妹なのだ。


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