愛は星屑のように

NOTTI

第1話:形あるもの

菜花は大手メーカーの事務職として勤め始めて今年で5年目になる。そして、彼女はお腹に現在付き合っている3歳下の彼との子供を身ごもっている。そのため、7月をもって産休を取得して会社を休職することが決まっている。幸いにも彼女の会社は産休の場合、出産休暇取得中は通常の残業手当以外の手当と基本給7割が支給される。そして、出産後に出産報告を会社に行い、会社から送られてくる書類に必要事項を書いて送ると、育児手当が5人に増額される。


 ただ、この子は二人の子供だが、彼女には前夫との子供が男女2人ずつ4人いて、養育費を前夫からもらっているため、子供たちの生活には問題は無かったが、長男・康太朗はもう小学3年生になり、末っ子の沙彩はもう4歳になる。しかし、彼女は新たな生命を妊娠したときに子供たちに報告するか迷った。理由として、長男・康太朗と長女・優彩には出産時に立ち会わせてきたが、今年は病院内に第三者は入れないため、子供であっても立ち会いは出来ないと告げられたからだ。そして、彼女はお腹の子と血の繋がらない子供たちにどうやって説明するべきか悩んでいた。


しかし、その心配とは裏腹に子供たちは新しい命の誕生を待ち望んでいた。


 そして、出産予定日の2日前になり、菜花は子供たちが生まれた産婦人科に入院した。そして、子供たちは赤ちゃんが生まれるまで彼氏と過ごすことになった。実は彼と過ごすのはこの時が初めてで、女の子2人は彼氏と長時間過ごしたことがなかったため、どう過ごして良いのか分からず、落ち着かなかった。


 そして、赤ちゃんは予定通りに生まれた。そして、お母さんから彼に送られてきた写真を見るとお父さんである彼にそっくりな女の子だった。


 この報告を受けて、彼は心中複雑だった。理由として、彼は顔に自信が無かったため、自分に似てしまったことでいじめられないかと心配になったのだ。もちろん、彼にとっては初めての子供であり、愛しさは感じていたが、自分に似ていると思うと昔の自分の事を思い出してしまう。


 赤ちゃんが生まれて1週間後、出産後の経過観察と健診が一通り終わって経過良好と認められたため、菜花と赤ちゃんは退院して家に戻ってきた。菜花にとっては約10日ぶりの我が家だが、どこか違和感があった。


 そして、家のドアを開けると子供たちと彼が出迎えてくれたのだ。そして、赤ちゃんを見ると「小さくて可愛い!」・「人形みたい!」と子供ならではの感想が飛び交っていた。


 彼女はこの声を聞いて安堵したが、気になるのは年の差だった。長男は今年10歳になり、次男は8歳、長女は6歳、次女は4歳とそれぞれ2歳ずつ離れている。そのため、登校するときは全員一緒に登校できるが、下校時は一緒に帰ることが出来る保証がないのだ。

そのことを考えた時に彼女が就学時に大変になるかもしれないと今から危惧していたのだった。


 実は長女の時もこの事は同じように悩んでいた。なぜなら、長男と次男を集合場所まで送りに行ったときに聞いたところ住んでいる地区に女の子は5人いたが、高学年の子が3人、低学年の子が2人だった。しかし、低学年の子は1人が今年度で県外に転校することになり、もう1人は来年から4年生になるため、下校時間が異なってしまうのだ。そのため、下校をする際に彼女一人になってしまうのではないかと不安になったのだ。


 そして、実際にその不安が的中してしまい、大変な思いをした。


 その時と同じ状況になり、彼女は不安に感じていた。


 赤ちゃんが生まれてから2週間後、彼女は定期検診で病院に行くと先生から「順調に育っていますが、骨密度が少し少ないような印象です。」と言われたのだ。


 菜花は帰宅後に彼女の出生後の健診の所見を見た。すると健診結果に“発育上の問題なし”と書いてあった。しかし、備考欄を見てみると“背骨・足に異形の疑いあり、次回健診まで経過観察”と書いてあった。そこで他の子たちの母子手帳を見てみると、他の子たちは身長が40cm前後あるのだが、彼女は35cmと少し小さかった。そのため、異形が無かった場合を想定すると他の兄妹たちとそう変わらない事になる。


 そして、名前もやっと決まり、太陽の光のように周囲を彩って欲しいという意味を込めて“陽彩(はるな)”と名付けた。


 菜花と大輔が陽彩の出生届を区役所に提出し、今日からは子供5人と水入らずの新たなスタートを迎えた。これから待ち受ける試練や困難にも家族全員で立ち向かうことになる。


 まだ二人は結婚をしていないが、すでに半同棲状態になっている。


 これから二人の歩みはどうなるのだろうか?


 二人はワクワクが止まらなかった。


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