第117話『孤高の錬金術師』

 その日の夜、まともに眠れていたのは、幾多の激戦を乗り越えてきた経験豊富なライカールトとマテウスぐらいでした。


 肝の座っているリョウマも、イマイチ寝付けず、レジスタンスのアジト内を徘徊していました。

 

 ちょうどグラウスの部屋に差し掛かったとき、彼がせっせと何かを作っている様子が見えたので、リョウマは声をかけてみることにしたのです。

   

「おん? グラウス? おんしゃ、何しとるんだ?」


「ああ、リョウマさん」


「ウチのことは呼び捨てでいいぞ、仲間じゃろ」


 リョウマは笑顔でグラウスに近づき、肩に小さな手を置きます。


「しかし、私とあなたは友達というわけでは・・・」


「グラウス、友達っちゅーのはな、気が付けばなっとるもんぜよ。ウチとおまんはもう友達だ。だから気楽に行こうっな?」


 陽気な笑みでそう語るリョウマに圧されるように、グラウスはうなづきました。


「ああ・・・そう、だね」


「それで、おまんは今何しとるんだ?」


「実は今、決戦に役立つかもしれない薬を錬金しているところなんだよ」


「薬? どんな薬だ?」


「悪霊を飲むだけで除霊できる薬さ。相手は、悪霊を飛ばしてきたそうだからね。除霊出来るのは私一人しかいないので、もしものときに役に立てばと思って・・・・どれだけ効果があるかは不透明だけど、出来るだけ強力な薬を作ろうと苦闘しているところだよ」


「ふむう、破呪に除霊に錬金術とは・・・何だかグラウスの特殊能力は、珍しいものばかりだなぁ」


「あはは、私はこれでも名の通ったエクソシストだから、こういう能力ばかり覚えてしまったんだよ」


「まあサラバナに入国許されるぐらいだもんな。おまんも全く凄い奴ぜよ」


「さっそくだけど、一つだけ完成したよ」


「ほう、ということは、ウチの出番っちゅーことか?」


「ああ。この薬をキミのカバンで増やしてほしい。あと6時間程でどれぐらい増やせる?」


「オリジナルの薬はレア度とか無いからな。作るのは大変だが、増えるのは超速いぞ。最低でも30個ぐらいは増えるち思う」


「それはいい。では、今のうちに渡しておこう」


 そう言うと、グラウスは出来上がった薬を小さな少女に目線を合わせて託しました。


「おう、確かに受け取ったぞ。あとはウチに任しときっ」


 リョウマはグラウスから薬を受け取ると、笑顔で手をふり、自室へと戻っていったのでした。

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