第94話『トネリの右腕3:切断』
孤児院にやってきた漣とルクレは、膨張した左腕を押さえ、もがき苦しんでいるグラウスを見つけ、彼に近づいていきました。
「グラウス! どうしたの? その腕!?」
「漣さん、勇者殿、・・・丁度いい所に来てくれました・・・」
額からとてつもない量の汗を流しながら、苦痛に歪む顔を、グラウスは必死に笑顔に作り変えました。
「悪霊がグラウスの左腕に憑依してしまったのよ!」
アグニがやって来た二人に簡潔に状況を伝えます。
「悪霊? なんですって? 一体どういうこと?!」
「訳わからないよ~」
漣とルクレは状況が飲み込めず、多少困惑していました。
「もう時間が無い。今はまだこの腕のみですが、この霊体が全身に回る前に、・・・左腕を、切断してもらいたいんですっ」
グラウスは悲壮なる決断を下しました。
「なっなんですって。」
グラウスの発言に、アグニは驚きの表情を浮かべました。
「漣さん、勇者殿、どちらでも構わない。今すぐ私の左腕を切断してくれっ」
グラウスの無茶苦茶な要求を聞いたルクレは怯え始めました。
「なっ何いってるんだよ、グラウス君! そんなことしたら、キミは・・・うわあ、僕には出来ないよ~っ」
「早くしてくれっ時間がないんだっ」
グラウスの覚悟を感じ取った漣が、決断し、両掌から巨大な大鉈を顕現させました。
「おい漣?! キミ、何する気だよぉ!?」
「私が・・・グラウスの左腕を、・・・切断するっ」
「ありがとう漣さん、助かる・・・」
苦痛に顔を歪めながら、グラウスはそれでも漣に笑みを見せました。しかし額からは脂汗が噴出しており、非常に苦しそうです。
「行くわよ!」
漣はグラウスに近づき、彼が突き出した、膨れ上がった左腕の肘から下を右腕に持った無骨な大鉈で切り落としました。
その余りの激痛に、グラウスは悲鳴を上げ、そして失神し、その場に突っ伏してしまいました。
「グラウス師匠ーーーっ」
アグニはグラウスに駆け寄り、彼の体を抱き起こしました。
「ルクレ、グラウスの回復をお願いっ止血してっ」
「わっわかったよ・・・ひええ~~~」
ルクレは倒れこむグラウスに近づくと、彼の患部に回復魔法をかけ始めます。
そして地面に落ちたグラウスの左腕から、再び悪霊が現れました。
「これは・・・一体!!?」
現れた幽霊に、漣は一瞬戸惑いましたが、直に臨戦態勢に入りました。
「我はクシャーダの亡霊。トガレフ様の配下。愚かな人間よ、朽ち果てよっ」
「くっそ・・・何言ってるのか解らないけど、どうやら戦闘になりそうね・・・望むところよ! かかって来なさいっ」
漣は威勢よく霊体に立ち向かっていきました。
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