第87話『レジスタンス』
マガゾの街は軍部との内戦によって、どこも荒れ放題でした。崩れがけの建物が多く、人々の多くは厳しい生活を余儀なくされていました。
「今から6年前の戦いで、王位継承者の血筋が途絶えてしまったからな。サラバナだけがクシャーダの知恵目的で経済支援し、内政干渉をしているようだが、他の国はこの惨状を見てみぬフリだ。なんとかしなければならない・・・」
ゼントは苦虫を噛み潰したような表情で喋ります。
「疫病といい、内戦といい、マガゾは大変な国じゃのう」
ピエタはひっそりと呟きました。
「それにしても、マガゾの人はレベルの高い人が多いな。万を超えてる人もおった。驚きぜよ」
リョウマの何気ない発言に、ゼントが反応します。
「ラズルシャーチの民の主な亡命先がマガゾになっているんだ。だから、混血が進んでいる。恐らくはその影響だろう。あの廃屋だ、行くぞ」
ゼントが指差した廃屋は、今にも崩れそうな程にボロボロでした。しかしそこの地下にレジスタンスのメンバーが集まっているのです。早速一同は廃屋の地下に入りました。
ゼントを迎え入れたのはレジスタンスのメンバーでした。
「ゼント殿!! ご無事だったんですか??」
「ああ、無事だ。マクスウェルはどこにいる?」
「リーダーなら奥の部屋にいますよ」
レジスタンスのメンバーに案内され、アグニ達はリーダーのマクスウェルという者の元へ向かいました。
部屋に入ると、マクスウェルがゼントの姿を見て驚きの表情を浮かべました。
「ゼント? ゼントなのか?!」
「久しぶりだな、隊長」
そしてゼントはいつになく軽く柔和な笑みを見せ、マクスウェルと抱き合い、再会を喜び合ったのです。しかし、その瞬間、ゼントの表情が曇りました。
「隊長?」
ピエタはゼントの発言に疑問を投げかけました。
抱擁を終えたゼントが、一同の方を向きます。
「彼は6年前の戦いで、俺とその仲間達を率いていた人物だ。今はレジスタンスのリーダーをやっている。」
「なるほど、そうじゃったのか」
グラウスは、さりげなくマクスウェルのレベルを確認しました。
「(レベル70・・・私と同じレベル。魔法使いか? でも剣を装備しているな・・・)」
「マクスウェルは魔法戦士で、考古学者だ。今は国政を安定させるために活動をしている」
「ゼント、いつも活動資金を送ってくれて感謝するよ。またキミに直接会えてよかった」
「俺もだ、隊長」
「はは、私はもう隊長ではないよ」
しかしゼントは久しぶりに会ったマクスウェルに、多少の違和感を感じていました。
「きゃあ、素敵な殿方!!! 子種を下さいませっ」
容姿端麗なマクスウェルを見たアグニが発情し、彼に向かっていくところを、いつものようにグラウスが首根っこを掴んで必死に止めます。
「ところでハインは今どこにいる?」
「ハインか? 彼女に何か用でも?」
「実は俺の連れが不治の病にかかってしまってな。ハインなら治せると思って探してるんだ」
「彼女なら、先ほど竜に乗って孤児院に向かったぞ」
「孤児院だと? くっそう、入れ違いになってしまったか」
ゼントは悔しそうに言葉を漏らします。
「それよりゼント、キミにぜひマガゾの内戦終結に力を貸して欲しい。この戦いにはキミの力が必要だ」
「それは俺も考えている。だが今はハインに再会することが最優先だ。」
「そうか。彼女なら直にアジトに戻ってくるだろう。待っていたらどうだ?」
「悪いが事は一刻を争うんだ。俺たちはもう一度孤児院へ向かう。積もる話は助けてからだ」
「わかった。街には軍部が放った怪物たちがうろついている。気をつけて行くんだぞ」
「了解した、じゃあ後で」
こうしてゼント達はマクスウェルの部屋を出て、孤児院に戻ることにしました。ゼントの心の奥底では、再会した盟友に対し、何ともいえない陰の雰囲気を感じていたのです。
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