第14話『寝取られ男は家庭教師になる』

「か、家庭教師ですか?」 

「うむ。適切じゃないかと思ってね」

 辺境伯ってもしかして馬鹿なのか?

俺は数日前に勉強始めたばかりの人間だぞ。どうやって貴族に物教えられるんだ。


「お、おそれながら閣下。私はつい最近勉学を始めた無学な村人でして……」

「あぁ。知っている……その上で、君に託したい」

 何考えてるんだこの人。

道楽か?まさか俺がミスったら処刑するつもりなのか?

もちろん、そんなことはないと思うけど勘繰ってしまうほどに怪しく思えてしまう。


「では、私以外でも構わないのでは」

「君は我が息子を階級が貴族だから、ということで見逃さずにきちんと法に基づき行為を止めた。それだけでも十分価値があるのさ」

 うーん、そういうもんなのか?

むしろ貴族に逆らうような人間を身内の家庭教師にするというのもあれだけど。


「えっと、授業はどのようなことをすれば良いのですか?」

「君の得意科目は?」

「あー、歴史です」

 もともと興味があった科目だしな。

ボーグからも興味のある科目から覚えたほうがいいと言われたし。


「では、歴史の授業を。それと君は王立学園に入学希望らしいね」

「はい」

「では、まずは1年ほどの契約で、衣食住を提供した上でその間に君が家庭教師を行っている間は、こちらから好きな科目の教師を君につけよう。それとも教師より給金がいいかな?」

 まじ?

太っ腹だなオイ。余計怪しく思えてきたぞ。


「あの、閣下。大変申し上げづらいのですが、私をそこまで厚遇される理由はなんでしょうか?いくらご子息を止めたとはいえ、それだけでこの扱いは過剰ではないかと……」

「君は疑り深いね。だが、それくらいがいい……ちょうどいい、もう少し後で言うつもりだったが――真実を話そう」


 そこで辺境伯に言われたのは、家庭教師というのはあくまでも名目で本当はヴィクトリアを金髪兄から守ってほしいということ。当主が従者にそのように命令しては子供の管理もできない当主と広められる恐れがあるということ。


 まぁ要約すれば、貴族のプライドを守りたいついでに娘の安全保障をしたい、ということだろう。んで護衛という名目では駄目なので、村の秀才ということで家庭教師として雇ったほうが楽だしスムーズに事が進むということらしいのだ。


 まぁお貴族様から雇われたって言えば家族は喜ぶだろうし、それにお雇いの教師なんてものは非常に金額が高い……ガキが一年働いた程度で稼げる金ではないほどに。


 ボーグに迷惑かけすぎるのもあれだし、コスパは非常に良い。あの金髪兄を牽制して付けられた教師から勉強を教わりつつ、鍛錬なども行っていけばいい。歴史の勉強もまぁ俺が出来る範囲から教えてけばいいだろう。


「さて、どうする。ジョン・ステイメンくん……受けるかい?」

「――こちらとしては断る余地はありません。このしがない村人で良ければ、ぜひともお受け致します」

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