第三場

 暗転の中、舞台の前の方だけ照明。

 一般生徒A・B・C・Dが歩いてきて舞台の前〔上手・中央・下手〕に横並びする。

 それぞれが、運動部系・文系部・理系部・帰宅部の格好をしている。

 生徒・A・B・C・Dが見習い白魔導士たちのような口調で喋りはじめる。


生徒A「遥かな過去に犯した過ち、愛し合ってはならない者たちが愛し合ってしまった悲劇……それは宿罪?」

生徒B「まだ答えは見つからない、永遠に愛の答えは見つからない」

生徒C「見つけよう、見つけよう……本当に愛が罪なのか見つけよう」

生徒D「旅はまだ終わらない、終わらない……終わりがあるのかわからない」


 背後の白い布に投光されるライトの丸い光りの中で動く、怪しい影絵〔もしくは実際に動いている役者〕のシルエット。

生徒A「あははははは……あはははは」

生徒B「大魔王アラマンダがやって来る、やって来る」

生徒C「自分のかけた呪いが、正しいのか確かめるために」

生徒D「アラマンダは近づいている、近づいている、逃げろ逃げろ」


 学園の中庭〔白い布で表現〕

 一般生徒A・B・C・Dそれぞれ、舞台の離れた位置で思い思いのコトをしている。


生徒A「聞いた話しだと、今度の文化祭でやる演劇部の芝居、かなり本気で遅くまで稽古しているらしいよ」

生徒B「ふ~ん、どんな芝居?」

 舞台のそでから、うつ向いた元気がない生徒〔大魔王アラマンダこと、演劇部部長『荒田』〕が一人、トボトボと無言で歩いてくる。


生徒C「なんでも、大昔に、正義の戦士と邪悪な騎士が、禁断の呪いで愛しあった物語だって」

 荒田、地面に落ちていた何かを拾ってすぐに捨てる。

生徒D「狩間先生が台本書いて、昨年の文化祭でやって大ヒンシュク買った創作劇だね……どうでもいいけれど」


 荒田、一度通りすぎてから、もどってくる。

 手には銀紙を貼った段ボールの剣(持っているモノは武器っぽいモノなら限定しない)が握られている。

生徒A「だいたい、昨年の文化祭での大騒ぎの原因は……」

生徒B「演出で使う二酸化炭素のスモーク量が多すぎて」

生徒C「火事と間違った生徒が、パニックで火災報知器押して……」

生徒D「結果、体育館から生徒が避難する大騒ぎに発展した……原因作ったバカはどいつ?」


 荒田、いきなり生徒たちに段ボールの剣(の、ようなモノ)を振り回して襲いかかる。

荒田「(アドリブで必殺技名を叫びながら)○○○○!」

 生徒たちの悲鳴。

荒田「うおぉぉぉっ、あれはちょっとした手違いだ!少しばかりスモークの量が多すぎて、うっかり火災報知器を押しただけだ!一年前のコトをいまだにネチッネチッと話題にして!おまえたちは腐った納豆か!」


生徒D「うわっ!あぶねぇ!なんだコイツ!」

生徒B「この生徒知っている、今の演劇部部長だ」


荒田「そうだ、昨年は一年生でスモーク担当だった荒田だ!あの事件以来、三年生の部員が全員退部して。誰も部長のなり手がいなかったから……責任とらされて、演劇部の部長やらされている荒田だ!うおぉぉぉ」

 段ボール剣(武具っぽいモノ)をメチャクチャに振り回す荒田。


生徒たち「バカから逃げろぅ!」

 舞台からそでに散るように逃げ去っていく。

 生徒A・B・C・Dがいなくなって、赤い照明に舞台が染まる。


 少し落ち着いた荒田の心の声が聞こえてくる。

 少し危ない大魔王顔の荒田、顔のアゴ下から照らされる手持ちライトの明かり。


天の声〔大魔王アラマンダ〕「(録音)確かめなければ……愛の呪詛を、愛の呪いをかけた者が他にもいるのかも……我が名は」


荒田「大魔王アラマンダ、我を崇めよ。うーやーたーっ(最後の掛け声はアドリブで自由に)」


 SE・救急車のサイレンが響く中で──暗転。場面転換。

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