第二場

 演劇部部室──壁には文化祭のポスター。

 生徒Gが一人で掃除をしている。


 黙々と掃除をしていたG、掃除をやめると。少し周囲を気にしてから呟く。

部員G「今朝の星座占いは一年で最強のラッキーデー……今なら出そうな気がするアレが」

 客席に向かって両手で何かを発射するような、ポーズをするG。


部員G「はぁぁ……出ない(か~○~は~め~はぁぁ)」

 首を傾げて、もう一度、客席向かって。

部員G「何が足らないんだろう、気合いかな?(波○拳!)(北斗百○拳!)(ゴムゴムの~)」

 いろいろな、アニメキャラや特撮ヒーローの必殺技(役者のアドリブ)を出そうと夢中のGを、部室の少し開いた扉のところから覗いている部員H。

〔Hの頭にはケモノの被り物(もしくはケモノ耳)、お尻にはケモノ尻尾が付いている〕

 

 覗いていたH、抜き足差し足で部室に入ってくる、客席に向かってサービスの尻尾フリフリ強調……入室に気づかない様子のG。

 H、Gに近づき声をかける。

 

部員H「なにか出た?」

部員G「わぁ、驚いた!いつから見ていた?」

部員H「さっきから、ずっと……こんなことしていたよね(H、Gのマネをする)」

部員G「誰にも言うなよ……人類のささやかな夢なんだから」

部員H「言わないよ、Gが人に言えない恥ずかしいコト。部室でしていたなんて」

部員G「その言い方は誤解を招く……ところでなんで、そんな変なキャラクターみたいな格好しているんだ?」

部員H「○○〔地元地域の名称やアトラクション施設名〕用に勝手に考えた新しい非公認マスコットキャラ……我が物顔で居座っているマスコットキャラを下克上で追放して、この新キャラが○○に君臨する……SNSで拡散させて我を崇めよ」

部員G「それやったら、確実に訴えられるぞ、他の部員はまだ来て……」


 その時、SEで『平成仮面ライダー』(もしくは、オートバイやモータースポーツを連想させるような曲)が流れ。

 部室に口爆音と口クラクションを鳴らした、部員EとFが乱入してくる。

部員E「ブルンブルン、パッパラパッパラー、どけどけ!」

部員F「※使徒襲来だぁ!バクオンだ!ゆるキャンだ!」※アドリブ可


 オートバイごっこで部室内を走り回っていたEとFの頭を、Gが部室にあったピコピコハンマー〔もしくはハリセンみたいなモノ〕で軽く叩く。

 走り回るのをやめるEとF。

部員E「いたぁ……頭割れた」

部員F「あっ血が」

部員G「あんな叩きで出血するか!まったく、演劇部の部員は……部室に登場の仕方まで個性的なんだから」


 H、ケモナーキャラの格好をGがEとFと会話をしている間に、部室の隅で外し。

 EとFが乱入してきた見えない壁を触る、パントマイムで首を傾げている。

 

部員E「カオルとルイは?メインの、あの二人が来ないと芝居の稽古できないよ」

部員G「きっと、すっごい登場の仕方で部室に入ってくるんだよ……」


 部室の扉が開き、カオルとルイが普通に入ってくる。

カオル「ごめん、少し遅くなった」

 沈黙と間。

部員G「普通に入ってきたあぁ」

部員E「演劇部員なのにぃ」

カオル「はえっ?」

ルイ「いったい何を期待して?」


部員H「とにかく、二人が部室に来たから文化祭でやる芝居『愛する罪びとたちの輪舞曲〔ロンド〕』の稽古ができる」

部員F「あとは顧問の狩間先生が部室に来てくれれば……」

 部室の扉が、そうっと開き演劇部顧問の狩間が、立ち聞きするように隙間から顔を覗かせ。

 部員たちからの注がれる視線に慌てて扉を閉める。


部員F「あとは顧問の狩間先生が部室に来てくれれば……」

部員H「狩間先生のコトだから、きっと演劇部顧問に相応しいパフォーマンスで入室を……」


 SE・ダンスミュージック。

 狩間、踊りながら部室に入ってくる。

 調子に乗った狩間、客席に向かって手拍子を要求。


狩間「さあ、みなさんもご一緒に……はい、はい、はい」

 音楽が止まって、気恥ずかしそうな雰囲気に包まれる部室……沈黙と間。

部員G「恥ずかしい」

部員H「さすがに、あの踊りはない」

部員E「壁に向かって手拍子して」

部員F「なに考えているのか」


狩間「なんだよ、お前たちが期待していたから。期待に添うような入室してやったのに」

 狩間、部室に置いてあったマンガ雑誌に気づき手にする。

狩間「なんだ、おまえら部室にマンガ持ち込んで読んでいるのか……○○〔マンガ雑誌名〕か、懐かしいな昔はよく読んで……」

 ペラペラとマンガ雑誌のページをめくる狩間、ある掲載マンガを探している様子。

狩摩「○○〔有名マンガ名〕が載っていない……またいつもの作者、都合により休筆か?」

部員G「先生、いつの時代の話ししているの……そのマンガなら、とっくに連載終わったよ」

狩間「なにぃ!?」

 ショックでよろめく狩間。

狩間「ウソだろう…明日から何を楽しみに生きていけば」

部員E「さっき、懐かしいとか言っていなかった?ずっと読んでいなかったみたいな感じで」


狩間「はい、全員注目」

 狩間、誤魔化すように、ホワイトボードにマグネットで『後梅』と書いた紙を貼る〔もしくは、ボードペンで直接書く……消した文字がボードに写り残らないように注意〕


狩間「いいですか『後悔』という漢字は『後』という字に『懺悔』の『げ』と書きます……みなさんも、掲載マンガを読み忘れて人生の後悔をしないように」

部員F「先生、後悔の『かい』の字が違っています。それ梅干しの梅です『あとうめ』か『こううめ』です」


 狩間、何事も無かったようにボードから『後梅』と書いた紙を外して〔消して〕丸めてゴミ箱に勢いよく投げ捨てる。

狩間「チクショーッ!書き間違いに気づくなんて、恐ろしい子たち」


 何も無かったコトにした狩間、演劇部生徒に向かって言う。

狩間「それじゃあ、昨日の半立ち稽古の続きをします……みんな台本持って」

部員「は~い」


 台本を片手に、立ったまま稽古をはじめようとする演劇部の生徒たち。


 暗転──〔部室を白い布やカーテンで隠して、学園の中庭に場面転換〕

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