第一場

〔オープニング〕


 舞台に雷鳴が轟き稲光が光る。

 SE・戦闘の叫び声。ぶつかり合う剣や鎧の金属音。

  

 異世界、炎に包まれている魔王アラマンダの城塞。

 舞台中央に少し距離を開けて、互いの武器に手をかけて睨み合い対峙している『勇士パーティー戦士団長・カオル』と『魔王軍騎士団長・ルイ』


 魔王軍兵士の声(兵士の姿は舞台上にはない、声のみ)

魔王兵士E「勇者のパーティーが城に侵入してきた!」

魔王兵士F「強すぎる!皆殺しにされるぞ!」

魔王兵士E「騎士団長!ルイ騎士団長!」

魔王兵士F「どこですか?」


 舞台のそでから逃げてくる魔王兵士G・H。

 兵士たちには、カオルとルイの姿は見えていない。カオルとルイが武器を構える。

 

魔王兵士G「魔王の城塞はもうダメだ、逃げろ」

魔王兵士H「わぁ!殺戮勇士のパーティが迫って来た!」


 魔王兵士GとHを追ってくる、その他の勇士パーティーメンバー1・2 3・4

四人に襲われ斬られ、苦しそうに腹と胸を押さえて舞台のそでに引っ込む、魔王兵士GとH。


 続いて魔王兵士GとHが消えた方向から、今度は魔王兵士EとFが現れ逃げてくる。

 その間も、互いの隙を狙っているカオルとルイ。


魔王兵士E「アラマンダさまが勇者のパーティに倒されたぞ!ルイさまぁ!騎士団長のルイさまぁ!どこにいますか!」

魔王兵士F「ルイさまぁ!ルイさまぁ!」


 逃げる魔王兵士を、その他の勇士パーティーメンバー1・2・3・4の四人が追って舞台を横切っていく。

 1・2・3・4の一番最後を走っていた一人が、カオルとルイの近くで立ち止まり。

 カオルとルイを捜しているような素振りで、数回見回してから走り去っていく。


 SE・城の石柱や壁が崩壊する音。


 カオルがルイの体を剣で刺し貫く。

 SE・刃物が体を貫く音。

 赤い光りに染まる舞台。カオルが悲しそうな声で呟く。

カオル「すまない、こうするしか方法がなかった」

 すべてを許すように首を横に振るルイ。

ルイ「これでいい、これでいいんだ」

 ルイ、短剣をカオルの背中に突き刺す。

 SE・短剣が刺さる音。


 カオルとルイを包む闇……舞台に書物を持った『灰色魔導士カルマ』が現れる〔どこから現れるかは演出次第〕

 カルマだけを照らすライト。


 ライトの光りの中で魔導本を開き、語りはじめる魔導士カルマ。

〔この間に、場面転換準備、カオルとルイ、闇にまぎれて舞台上から去る〕


カルマ「愛すること自体は悪いことではありません……人が人を愛するのは自然の摂理、しかし時として愛は罪人〔つみびと〕を生み出す……それは灰色魔導士のわたしにも、防ぎきれない愛の呪い……えっ、わたしが居る場所はどこかって。ここは、遥かな過去に滅んでしまった剣と魔法の世界の小国……国の名前など知る必要はありません。なぜなら歴史にも地図にも残っていない小さな国で起こった些細な出来事ですから……おやっ、寒いと思ったら雪が降ってきたようですね……それでは、また後ほど」


 カルマ去る。

 入れかわるように見習い白魔導士A・B・C・Dが現れ、歌うように喋る。


(見習い)白魔導士A「愛は罪……愛することは罪?」

白魔導士B「それは誰にもわからない、わからない」

白魔導士C「見つけよう、見つけよう……本当に愛が罪なのか、見つけよう」

白魔導士D「そうしよう、そうしよう……長い旅がはじまる、はじまる」

白魔導士A・B・C・D

「あははははは……あはははは」

 去っていく見習い白魔導士たち。


 暗転──SE・芝居のテーマソング流れる。

 テーマソングがフィードアウトすると、舞台が明るくなり。

 現代の演劇部の部室に場面転換している。

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