第3話 のりまき君と天津飯君

のりまき君は昔から建っている少し古いマンションに住んでいます。

その向かいには、大きくてりっぱな新しいマンションがが建っています。

そのマンションには天津飯君が住んでいます。

のりまき君のマンションには中庭があります。その真ん中には大きな丸い花壇があります。

いなりさんのお母さんはその花壇の花の手入れが大好きです。

わさびさんのおばあちゃんは、よく中庭のベンチに座って花をながめています。

マンションに住む人たちは中庭で、赤ちゃんを遊ばせたり、話をしたりしています。

ある日、天津飯君がのりまき君のところへ遊びに来ました。

新しい自転車を買ってもらったので、見せに来たようです。

天津飯君の自転車には黄色い星がついています。これはコミパという自転車を作っている会社のトレードマークで、自転車はカッコよくて、性能もいいですが、外国製なので値段はすごく高いです。子供達の間で、コミパの自転車を持っているのは自慢の一つです。

天津飯君は「新しい自転車いいだろ、コミパの自転車だぜ。」言われなくても大きな黄色い星印を見ればすぐわかります。

のりまき君もコミパの自転車がすごくほしいのですが、お父さんは今の自転車で十分だと言って買ってくれません。

のりまき君「かっこいい、僕もコミパの自転車ほしいなあ。」

中庭で、天津飯君がのりまき君に自転車を自慢していると、いなりさんとわさびさんがやってきて、「うわあ、コミパの自転車、天津飯君すごい。」女の子達に言われて、天津飯君は得意満面の笑顔です。

翌日、また天津飯君がコミパの自転車に乗って、マンションの中庭にやってきました。そして中庭の花壇の周りを自転車でぐるっと一周して、家に帰っていきました。

マンションの女の子達がそれを見つめていました。

また次の日も、天津飯君がコミパの自転車に乗ってやってきました。そして中庭の 花壇のまわりを何周かして帰っていきました。

次の日も、次の日も。

のりまき君はいやだなあと思いはじめました。中庭で自転車に乗ると他の人の迷惑だし、やめてほしいなあと思いました。

毎日、毎日、天津飯君はコミパの自転車に乗って、のりまき君のマンションの中庭にやってきます。

ある日から、天津飯君の友達の春巻き君も、一緒にコミパの自転車でやってくるようになりました。中庭の花壇の周りを何周もします。

いなりさんとわさびさんはのりまき君に言いました。「天津飯君に明日から来ないでって言って。」

でも、のりまき君は天津飯君がこわくて言えません。

マンションの大人たちも見て見ぬふりをしています。

今日こそ、天津飯君がこないといいなあと思ったのりまき君が部屋から外を見ると、 天津飯君、春巻き君、そしてシューマイ君たちがコミパの自転車で、一列になって やってくるのが見えました。

天津飯君たちはまたいつものように、中庭の花壇の周りをグルグル回り始めました。ついに、のりまき君は彼らにひとこと言おうと、中庭に出てきました。       いなりさんとわさびさんも出てきました。

いなりさんはのりまき君が天津飯君に、強く「もう中庭に来ないで」と言ってくれることを期待しています。わさびさんも同じです。

のりまき君がコミパの自転車に乗っている天津飯君のところへ行くと、天津飯君は 自転車を止め、のりまき君に「のりまき君もこのコミパの自転車に乗りたいんだろ。 貸してやるよ。」と言いました。

すると、のりまき君は一言「シェイ、シェイ。」



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