第14話 ネタバラシ

ついに名前を呼ばれた優傘は意味がわからず和繁へと叫んだ。


「どう言うことよ!当主!」


すると和繁は叫ぶ優傘を見ながら不思議そうに、


「どうもこうも、お前は神にその身を捧げるのだよ。お前はかみの御眼鏡に叶ったからな。まぁいい早く自分でこの中に入り、火をつけなさい。神は自ら捧げることを好んでおられる。」


と、優傘へと催促した。

優傘にとっては神の存在など初めて知り、まして自分の命を捧げろと言われたため、


「断るに決まってるでしょ!馬鹿じゃないの?」


と、和繫の催促を拒否した。

すると和繁はいきなり冷徹な表情になり、


「そうか。」


とだけ言うと、おもむろに取り出した拳銃で経緯を見ていた朧の脚を撃ち抜いた。


「ぐっ…‼︎」


「ね、姉さん!」


押し殺した悲鳴をあげ、足から血を流して倒れ込む朧に優傘は急いで駆け寄る。


「ね、ねぇさん!今楽にする!安静にして!」


「だ、大丈夫よ。私はいいから優傘ちゃんはここから隙を見て逃げて!」


「そっ、そんなことできないよ!一緒に逃げよう!私が背負うから!」


そんな狼狽する優傘を見て和繁は、


「ほら、お前が早くしないせいで大切な人が傷ついた。お前のせいだぞ?ほらまた傷つくぞ?」


と心底馬鹿にした表情で優傘を嘲笑った。


「おっ、お前ええぇー」


怒り狂う優傘に向け、一変させた冷酷な笑みを浮かべた和繁はネタバラシをし始めた。


「最後にお前にいいことを教えてあげよう。元々お前の父は、魂の格の高い者との交配ように育てたのだ。なのに下民と付き合うなどと言うものだから殺そうか悩んだ物だよ」


「‥‥。」


自分が壊れてしまいそうなくらい嫌な予感がその時、優傘はした。この先は聞いてはならない。そう心が止めている。


「あれ、だんまりかね?まあ言い続けよう。何の奇跡か相手は下民のくせに魂の格が高かった。そこで私はこう考えたのだ、『もう少し待ってみよう。』とね。その選択でお前が産まれたんだよ。感謝して欲しいくらいだね。」


「‥‥。」


「優傘ちゃん!聞いちゃダメよ!嫌な予感がする!」


和繁は朧の方も見ずにまた拳銃を床に放ち黙らした。


「うるさいな、黙っていろ。その後お前が生まれた時は嬉しかったよ。やっと願いが叶うって。なのに、勘付きやがったかお前の父は家族を連れて逃げたんだよ、ああ怒りくるったね!」


優傘の周りの炎は優傘に呼応するかのように揺れ始めていた。誰もそれには気づかない。


「お前は両親は事故で死んだと思っているが事実は違う、お前には自殺されては困るから記憶改竄を施した。」


優傘の視界はぐにゃぐにゃと周り始め、自分がどこに立ってるかもわからなくなっていた。

身体は冷えたかと思うと高熱を発し、何も聞こえなかった。


炎はグラグラと揺れ、明らかに大きくなっている。

それに気づいていないのは、優傘本人と自分の演説に酔っている和繫だけだった。


もう優傘の耳には何も聞こえなかった。

優傘を心配する朧の声も、炎に動揺する貴族たちの声も。

しかし、和繁の声だけが鮮明に入ってくる。


「さあ事実だ!お前の両親はお前の前で私が殺した。もちろんむごたらしく原型も残らないほどな?ああ、あれは楽しかった!!」


 そう言って和繫は大声で笑い始めた。

 しかし優傘は茫然とした表情のまま微動だにしなかった。


「ん?おかしいな怒り狂わないのか?予想では、怒り狂ったところを朧を餌に殺そうと思っていたが」


 そういいながら和繫は優傘をみて、やっと炎の不自然さに気づいた。

そのころには炎は大鍋にまで届き中の油も燃え始めていた。

 

「な、なんだあれは。おい忌み子!お前が何かしたのだろう、早く止めろ!」


 そう怒鳴る和繫だったが、優傘は身じろぎ一つせず固まっていた。

 優傘は記憶が取り戻されていたのであった。

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