第13話 大鍋と油

優傘は、結局ずっと朧と話しながら会を楽しんだ。

いつもなら速攻で帰っている優傘だったが、今回は朧と一緒にいたため、そのほか全てのことを無視することができる。

そんなわけで今日は朧との楽しい時間を過ごすことができたのだった。


そんな楽しい優傘にとっても楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまい会も最後の催しで締められる事となった。


ホール中がにぎわう中どこからか大きな鍋が持ってこられ、ホールにある祭壇の前に運ばれた。

どうやらその中にはたっぷりと油が張ってあるらしい。


優傘と朧は何が始まるのか検討も付かず、二人で予想を上げ合っていた。


「あんな大きい鍋なににつかうのかしら?やっぱり油も張ってあることですし、揚げ物かしら?」


「え〜ここでまた揚げ物はないわよ。もうお腹いっぱいよ。」


「ん〜そうね〜。何が始まるのでしょうね?」


そう二人で予想をはなしている内に用意が終わったらしく、鍋の下に大きな炎がつけられた。

そしてバチバチと不気味に音を立てる大鍋の上の傍聴席へと和繁が出てきた。


そうして、不気味なくらい晴れやかな笑顔を浮かべると話し始めた。


「今日はとても素晴らしい会だった。そこで最後にこの催しで会を閉めたいと思う。ところで皆も知っていると思うが、我が家は長い間神の御加護を授かって繁栄してきたのだ。」


優傘と朧は急に始まった突拍子もない話に驚き、しんと静まり返ったホールを見渡した。

しかし、周りの貴族たちは当たり前のような顔を浮かべており、なんと祭壇に向かって跪いているものさえいる。


「しかし、この二百年近く長い間、神の御眼鏡に叶うものはいなかった。」


何か嫌な雰囲気を感じ取った二人は、脱出しようと踵を返すがいつの間にかに貴族たちに周りを囲まれていた。


「そんな苦しい日々も今日で終わる。我が家からお眼鏡にかなうものが現れ、その者も17歳をやっと過ぎたのだ。」


優傘と朧は少しずつ小さくなる包囲網から後退っていき、ついには大鍋の前まで追い詰められてしまった。


「あぁ、どんなにこの日を待ち望んだことか。礼を言うよ。忌み子、驟雨優傘。」


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