第8話 回想 朧との出会い
当時の朧はお姉さんぶりたい年頃である。
そのため一人で本を読んでいる、見るからに自分より幼い優傘に話しかけた。
「ねぇ、なんで一人でいるの?寂しくないの?」
「‥‥‥」
当時こころを閉ざし、人と話すのが怖くなっていた優傘にとっては朧は邪魔でしかなかったが、話すこともできず俯いて顔も見ることができなかった。
そんなことつゆにも思わず、返事がなくて心配に思った朧は、
「大丈夫?具合悪いの?お医者様のところ行く?」
と必死に尋ねた。
優傘もそんな自分を心配してくれる朧を見て少し悪く感じ、
「大丈夫‥‥好きで一人で本読んでるの、本だけが楽しいから‥‥」
とだけ小さな声で答えて、朧に遠回しに向こうへ行けと伝えた。
そして優傘はやっと静かに本を読めると安堵していたのだが…
しかし朧は、
「へぇ〜そんな本って面白いんだ!私読んだことあんまりないからなぁ~、そうだ!おすすめの本私に読んでよ!」
と、朧はその意図に気づかず優傘に読み聞かせを催促したのだった。
優傘はまさかそんなことを言われるとは思わず、少しの間固まってしまっていた。
するとさらに、
「ね!お願いいいでしょ?」
「うっ」
と純粋なキラキラした目でお願いされてしまい、優傘には断りきれなかった。
「じゃ、じゃあ、一冊だけね。」
一冊読めばこの邪魔な子も飽きてどっかに行くに違いないと思い、渋々付近にあった本を読もうと手に取った。
「あっ」
「どうしたの?」
しかし、なんの因果かその手に取った本は、母にたくさん読んでもらった思い出の一冊であった。
優傘は朧から顔を背け、つい泣きそうになり堪えてるのを朧から隠した。
「大丈夫?やっぱり、体調悪いんじゃないの?無理しなくていいよ?」
「‥だ、大丈夫、少しあくびがでただけだから」
少し違和感を感じ心配する朧にそう言って、優傘は朧に取り繕い読み聞かせを始めた。
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