第7話 回想 幼い優傘
優傘が驟雨家に引き取られまだ数週間、そのころにはもう今と同じ状況であり、まだ幼い優傘にはこの境遇はつらすぎた。
そんな優傘の心の支えは本だった。
本だけが味方だった。
幸い、驟雨家にある巨大な図書室は様々な本が置いていた。
神話や図鑑だけでなく、恋物語や冒険章、果ては一般的な小説までもがあったのだ。
優傘は幼少期から母親の鈴香に本を読み聞かせてもらっていたため、本が好きだ。
それも冒険章や神話などのいわゆるファンタジーが大好きだ。
自分の知らない、体験したことない世界を探検している気持ちになり、そのたびにとてもワクワクしていた。
強大な怪物に剣一本で立ち向かったり、貧しい人々を助けたり、はたまた魔王にとらわれた姫を救いに旅に出たり…
そんな体験が楽しくて毎晩、両親に読み聞かせを迫っていたものだ。
こんなつらい毎日を送っていても、本は変わらず優傘を冒険へと連れて行ってくれた。
そして一人寂しい孤独を紛らわせてくれたのだった。
それに加えて、あの頃の家族との幸せな記憶も本を読んでいれば思い出せる。
優傘が当時、取り憑かれたかのように一人図書室に入り浸っていたのは、当たり前のことだったかもしれない。
そんなある日に驟雨家に来客があった。
しかし優傘はいない物とされているため、放置され、いつも通りにただ一人朝から図書室へいた。
独り静かな図書室に変化が訪れたのは正午を少し過ぎた時だった。
一人の女の子がやって来たのだ。それが当時6歳であった朧だった。
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