第3話 美しい腕輪
「やばい、なんか押しちゃった?」
急に不安になって音のした壁を見る。
すると、その下からダイアルが出て来るところだった。
この屋敷は二千五百年の貴族制度復活を記念に作られた屋敷だ。
そのため貴族が使う隠し金庫や隠し部屋、それを狙うものを迎撃する罠までもがある。
そのため不用意に壁を叩いたりしないようにと初日から言い含められていたのだ。まさか本当にあるとは思っておらず、話半分に聞いてため忘れていた。
「また小言を言われるよ〜、ハァ…ついてないなぁ」
結構大きな音がしておりそろそろメイドが来てもおかしくないと溜息をつき、メイドが来るのを身構えて待っていると、
〔カシャ、カ、カシャ〕
と勝手にロックが空いてしまったのだ。
「えっ?」
優傘は驚き間の抜けた声を漏らした。
「金庫だよね?防犯ザルすぎるんじゃないの?」
その開いた金庫の中を優傘はおそるおそる覗いてみると、中には大きなガーネットのはまった金の腕輪が入っていた。
その腕輪の模様は金にオオカミのような生物が彫られておりとても綺麗な物だった。
「すごい、綺麗だわ」
優傘はそれを眺めているとついつけてしまいたい誘惑に駆られてしまった。
「どうしようかな〜欲しいんだけどなぁ。でもこれもらっちゃダメだよね、普通に考えて」
普段の優傘ならそこで踏みとどまっただろう。
でも今の優傘は不思議なくらいそれが欲しくなってきてしまった。
そこでこう自分に言い訳をした。
「まぁ、明日使ったらまた帰るときに返せばいいものね?」
そう言って優傘は腕輪を左手につけ、金庫を閉じてしまった。
すると金庫は壁の中に戻っていった。
それを見ながら、優傘は腕輪を光に翳すと満足げに微笑んだ。
「はぁ、なんかこの腕輪を見つけたせいで少し疲れたわ。今日はもう寝ましょう」
そう言って楽な格好になると優傘はベットに入って寝てしまうのだった。
その腕輪のオオカミの目が赤く光るのにも気づかずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます