エロゲのモブには荷が重い ~覚醒したスキルがオレにエロゲの美少女を救わせようとするけど、原作知識と固有スキルでみんなの笑顔を守りつつ自由に生きようと思います~
第30話 強制負けイベント? ぶち壊せ!!
第30話 強制負けイベント? ぶち壊せ!!
何も考えずに【アドミニストレータ】に頼ったわけではない。思い当たる節があったからだ。
あれは1周目、ちなつルートの時の話だ。
「ちなつのじいちゃんが封印した土蜘蛛の柩は盗まれたことがあると、神藤ちなつは言っていた。柩自体は戻ってきたものの、柩はもぬけの殻になっていたとも」
なんとなくもう少し先の話だと思っていたけれど、それが実は過去の話なのかもしれない。
「さっき見たドクロのマーク、あれは蜘蛛のようにも見えた。……もし、牌羽メアリをむしばむ呪いが、『岩戸』ゆかりのものならば」
ここから先は推論だ。
あくまで可能性の域の話になる。
「牌羽メアリについて詳しく知れるのは、『凱旋門』ルートではなく、『岩戸』ルート……?」
1周目において、牌羽メアリ――というよりは『凱旋門』とは何度も敵対した。
だが、そんな関係性でありながら、牌羽メアリを『岩戸』にスカウトできそうなイベントがあった。
当時は勝てるビジョンが浮かばず、負けイベントだと結論付けたけど、あれがもし、周回プレイを前提にした難易度調整だったとしたら?
「……あった。スカウトシステム!」
このゲーム、所属陣営以外のヒロインも攻略できるのか!
「そして今まさに本人から聞いた話をゲーム内で聞かされるやつ!!」
ちくしょう!
こんなシステムあるなんて聞いてないよ!!
(これ、まさか各ヒロイン3陣営でそれぞれ異なるエンディングが用意されてるのか!? 待て! それ複数人同時攻略まで考えたら、イベント分岐の数どれだけ膨大なことになるんだよ!!)
一生かかっても完全クリアできないだろ、それ。
……ああ、くそ。
そういうことか。
(……そのための、時間停止ってことか)
一生かかってもクリアできないってのは、人の時間が有限だと仮定したときの話だ。無限の時間を費やせる前提なら、話は180度異なってくる。
「とりあえず、『岩戸』メアリルートを進めるか」
*【ゲーム内イベント】*
「本当に……本当に、呪いを封印するすべがあるのですか?」
銀色の髪が特徴的な、牌羽メアリが震える声でつぶやいた。
原作主人公の
「ああ。ボクが、必ず、メアリを苦しめる呪縛から解き放ってみせる!」
牌羽メアリは、蜘蛛に操られていたのだ。
皮肉な話になるが、人形使いである彼女自身が土蜘蛛の呪いの傀儡だったのだ。
「……それでも、わたくしが、かつての『凱旋門』を潰し、土蜘蛛が過ごしやすい世界になるように、呪いが
「そんなの、関係ない!!」
天月悠斗が叫ぶ。
心を閉ざそうとする少女に届けるために、魂の叫びをあげる。
「大切なのはどう生きたかじゃない! どう生きていくかだ! ボクは、メアリと一緒に生きていきたい」
「……悠斗」
「病めるときも、健やかなるときも、いつだって、どこだって、君となら生きていける。僕は、君にもそう思ってもらいたい。同じ気持ちを分かち合いたい」
天月悠斗が猛る。天月悠斗が願う。
原作主人公の、ひたむきな思いに触れて、メアリは。
「文字通り、ふつつか、ものですが」
泣きじゃくりながら、その手を取った。
「……すべて終わったら、また一緒に、鈴焼でも食べようよ」
「はい……っ、はい!」
向かうはイタリア、ピサの斜塔。
そこで、土蜘蛛の本体が目撃されたんだ。
今の天月悠斗に敵はない。
土蜘蛛を封伐して、ハッピーエンドだ。
*【ゲームイベント外】*
「いや負けるんかい!」
オレは叫んだ。
「今の流れは完全に圧勝する流れだっただろ! なんだ土蜘蛛化け物か!? こちとらラスボスのバーストすら圧倒できるだけの能力とステータスだぞ!? アイテムフルで使い切って倒しきれないってどうなってんだよ!!」
こんなのどうやったって勝ち目がないじゃないか。
負けイベントにもほどがある。
*【ゲーム内イベント】*
土蜘蛛に敗北したメアリと
メアリが
彼女の体には土蜘蛛の呪縛が根付いている。
その状態で呪いと融合すればどうなるか。
「悠斗! わたくしごと、殺しなさい!」
メアリは、土蜘蛛と相成った。
これまで彼女の心をむしばみ続けてきた呪いを、つよい意思と精神力だけで抑え込んでいる。
「こうするよりほかに、道はないのです!! 土蜘蛛を野放しにしておけば、またわたくしのような犠牲者が出る! その前に……!」
「ボクは、ボクは……」
「はやく……もう、私の体に、抑えておけない!!」
その意思の、原動力はどこか。
あえて語るべくもない。
「お願い……牌羽メアリが、悠斗への思いを持ってるうちに、終わらせて」
「……っ」
天月悠斗と牌羽メアリの表情が、泣き顔に染まる。
「……ありが、とう。ゆ……と」
悠斗が技を繰り出し、土蜘蛛を
後には、何も残らなかった。
彼が愛した彼女は、もういない。
「……死んじまったら、もう、鈴焼を一緒に食べれねえじゃねえか。……ばかメアリ」
*【ゲームイベント外】*
「いや胸糞!」
オレは叫んだ。
「強制負けイベントからバッドエンド直行とかふざけんなよ! こんな終わり方しかねえなら最初から用意すんなよ!」
胸糞イベントにもほどがある。
「……ちゃんと、用意されてんだろうな。土蜘蛛を倒す手段は」
こんな理不尽なイベントで、あきらめてたまるかってんだ。
「やってやんよ。なんどだって繰り返してやんよ」
どうせ時間は無限にあるんだ。
さあ、はじめようか。
あきらめるまで終わらない物語を、あきらめることなく終わらせる物語を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます