骨拾いの鎮魂無双

狼二世

プロローグ 人も歩けば女神にあたる

 世の中には色々な人がいる。

 見た目や性格、それに能力。出来ることがそれぞれ違う『個』が溢れている。

 力が強い。知識の吸収が早い。得手不得手は誰にでも存在する。

 そのような違いも、もっと大きな括り――人間も含めた地球上の生物と比べてみれば、僅かな差異でしかない。

 馬のように早く走れる人間は居ないし、ゴリラのような剛腕を持つ人間も居ない。


「ナガレ=エイキチさま!!」


 そう、だから『彼』も一人の人間でしかない。

 世界だとか宇宙だとか、大きな括りの中では一人の人間としか扱われない。


「おねっがい! しやぁぁぁぁっす!」

「落ち着いてください。人が見てますから! 往来のド真ん中で土下座しないでくだい! みんな見てます!! あ、おばさんすみません。なんか僕の関係者がすみませんホントごめんなさい」

「当方新米女神! ミスで世界を滅ぼしました! ミス・ワールドではなくて、ミス・ワールドブレイクなのだわ!!」


 ――その筈である。


「落ち着いて! ワールドブレイカーじゃないだけマシですから!」

「あぁぁぁぁぁぁっっ!! このままだと比喩的にも物理的にも首が飛ぶんで、数多くの世界を救ってきたナガレ=エイキチ様に助力を願いたいところであります!!」

「分かりましたから!!」


 彼の名は『ナガレ=エイキチ』ただの一人の人間である。

 そう、一つの個体でしかないことは確かである。だが、いささか特異な存在であることもまた事実である。


「女神って……これで『何度目』だっけ」


 なにせ、女神に土下座して助力を頼まれる人間なんて、そうそう居ないのだから。


 後に歴史は云う。

 ゲンダイニホンと呼ばれる世界に住む少年――ナガレ=エイキチ。

 朽ちた世界の骨を拾う聖者。魂を鎮めることに関しては、無双の異能者であると。

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