第37話 途切れるリンク
途絶える声。
これは、天音先輩とのリンクが途切れたに違いない。なによりも決定的なのは、体が自由に動くというところだ。
「……っつぅ。今の一撃は効いたぞ」
僕の拳を受け、倒れていた夜凪が起き上がる。
じんじんと、手の甲が熱い。反して、背筋が凍り付く――まずい、まずい! 『自らの強い意志で動こうと思ってしまえば、操作は解けてしまうのじゃよ』と、天音先輩の言葉が頭の中でこだまする。
……そう、僕は戒めを破ってしまった。
後方で待機する天音先輩、風宮さんに視線を送る――二人の表情は暗い。僕の立たされた現状が容易に理解できた。
僕は、僕は――ま、ぇ? 天音先輩がなにかを叫んでいる。まえ、前、前を向け。しまった! と、視線を戻した時にはもう遅かった。
眼前には大きな水の球体――体に衝撃が走る。
「あぁ? 簡単に当たるじゃねえか。……範囲を大きくして正解かあ?」
派手にステージ上を転がる。
激痛で声が出ない。積み重ねも無に、一瞬にして形勢逆転――全身の骨が粉々になった気分だ。いや、気分だけではなく――恐らく、体のどこかは折れているに違いない。
……ある意味で助かった。
もし、開始直後の範囲を狭めた水の球体だったなら、脳天を貫いて即死していた可能性が高い――と、安堵している暇はない。どちらにせよ、何発も耐えることは不可能――意識を繋ぎとめる作業だけでも精一杯だ。
「どうした? まさか、一発で死にそうってか? いくらなんでも脆すぎるぞ! 冗談って言えよ。……いや、冗談って顔付きじゃなさそうだなあ」
悔しいけど、言葉通りだ。
このままじゃ、本当に死ぬ。どうする、どうす――、
「きははっ! それにしても、そのうずくまった姿、苦悶の表情! いいねえ。また妹に治してもらうかあ?」
――っ!
「ほら、命乞いでもしてみろよ」
夜凪は僕に指先を向け、
「誠意の見せ方によっちゃ、命だけは助けてやるよ。土下座してみろ」
「……君に土下座するくらいなら、死ぬよ」
「なら死ね」
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