第30話 ぉっぱいがぃっぱい
その言葉を聞き終わる前に、僕は風宮さんの拳を受け止めていた。
僕の手に収まるサイズの小さな手――そこから、想像を絶するくらいの力と衝撃を感じる。全くもって状況が追い付いてこないが、どうやら風宮さんの攻撃を僕は手の平で防いだらしい。らしい、というのは勿論――これをやってのけたのは、僕の意志ではなく天音先輩によるものだからだ。
次々と襲い来る――拳、拳、拳の嵐。
「ひぃ、はあぅ!」
僕の口から情けない声が漏れるのとは正反対に、まるでどこかの達人さながら全ての攻撃を避けて、払って、受け止めて、を繰り返す。
なんてハードな光景なんだろう――率直に言うと怖い。もしも、この攻撃全てが体にヒットしてしまったら、どうなってしまうのか? そ、想像したくもない。
そんなデッドオアアライブよろしく攻防戦の最中、
「蓮の胸を揉め」
天音先輩がポツリと、
ん? 今、なんか激しく卑猥な言葉が――、
「……言動さん。大胆なことをしますね」
――うぉおおおっぱい!
考える間もなく、僕の両手は風宮さんの胸に置かれていた。そして、続けざまに起こるお手々の連鎖――もみもみ。
さ、山脈!?
手の平に収まらないくらい、兎にも角にもでかい! 感動を飛び越えて、言葉にできない達成感が体中を支配する。まさに、至高の一品!
風宮さんは普段と変わらぬ無表情、少し頬を赤く染めているような、
「……いつまで触っているのでしょうか?」
「うわあっ! す、すいません」
慌てて、両手を放す――勢いあまって、尻餅を付いてしまった。
「痛ぅ。……あれ? 体の自由が戻ってる」
「む。気をつけるところは、そこなのじゃよ」
「そこ?」
「普通に喋るくらいならば、特に問題はない。が、ワシの電気信号を上回るほどの、より強力な信号を放ってしまう。自らの強い意志で動こうと思ってしまえば、操作は解けてしまうのじゃよ」
だ・か・ら、と天音先輩は笑顔で指を振りながら、
「くれぐれも注意してね」
「……簡潔にいうと操作が解けた瞬間に、僕はどうなっちゃうんでしょうか?」
僕の純粋な疑問、天音先輩は当然とばかりに、
「死ぬ」
「簡潔すぎますよ! もう一回、操作をし直すのは無理なんですか!?」
「先刻のやり取りを――お主の体内に電気を流す作業を『論争』の最中になど、とてもじゃないができぬ」
「……つまり、なにもせず流れに身を任すしかないってことですかね?」
「む。目の前でどれだけ恐ろしい光景が繰り広げられようが、劇場で映画でも見ていると思えばよい。リアルなアクション映画じゃ」
「そんな気軽に言われても!」
僕の不安な表情を読み取ったのか、
「安心するがよい。これから毎日、お主が慣れるまで特訓してやるからの。エブリディじゃよ。エブリディ!」
エブリディ?
ユニークに言ったつもりだろうけど、全然面白くないからね。あんなの毎日くらったら死んじゃうって。僕に恨みでもあるのかこのお方は――助けを求めるべく風宮さんに視線を移すと、
「安心してください」
おぉ、さすが風宮さん! わかってらっしゃ――、
「恐怖すら感じなくなるまで協力します」
――!?
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