第14話 ドラゴン

いきなりの、ドラゴンの出現に住民達は、慌てふためき王都は、混乱していた。


「ヤバイ、ドラゴンが王都に、来る前に食い止めなきゃ」


 リファとマルセリナさんは、防御魔法、シールドを王都全体に張った。


 王都の、門の前には、ギルドの人達と、王宮の兵士、王宮魔族隊、更には、王宮騎士団までもがドラゴンを待ち構えていた。


 その中には、勿論、王宮騎士団長グランデ様の、姿もあった。


 その光景が、事の重大さを物語っていると、判断した龍は、グランデ様の元に駆け寄った。


「グランデ様、ここは、俺に任せて下さい!」


 龍は、そう伝えると、ある事をを試すしてみる事にした。


 (確か、リファが、魔族はほうきで空を飛べると、言っていたから、俺ならほうきが無くても飛べるかもしれない)


 龍は、そう思うと、頭の中で自分が飛べる想像をした。


 すると、龍の身体は、宙に浮かび始め、気付いた時には、結構な、高さに自分が、居る事に気付いた。


「凄い、飛んでる!」


 龍は、直ぐに空中でも自在に、身体をコントロール出来る事が判ると、ドラゴン目掛けて、飛んで行った。


 通常、魔族の行う飛行は、ほうきに跨っている為、派手な挙動は出来ないが、龍の飛行は、それとは違いどんな動きでも自在に行えた。


 それを見ていた、王都の人々は、龍のその異常さをただただ見ていた。


 龍は、そのまま、ドラゴンに突っ込みながら、おもいっきり拳をドラゴン目掛けて振り下ろした。


「バッコーーン!」


 物凄い音と、共にドラゴンは、空中でまたも粉粉になってしまった。


「しまった、ついやり過ぎた」


(きっとリファ怒るだろうな……)


 そんな事を考えながら、皆んなの居る場所に戻ると、なんと街の皆んなが、大歓声でドラゴンの討伐を喜んでくれたのだ。


「ありがとう」


「助かった」


「街の英雄だ」


 龍に、向かって数々の言葉が、投げ掛けられた。


 暫く、その歓声は、鳴り止まずに、続くと、気付いた時には、街全体でドラゴン討伐を祝した、宴があちらこちらで繰り広げられていた。


「龍君、王都を守ってくれて、ありがとう!」


「昨日、キミが、王都に着いて居なきゃ、今頃王都は、壊滅していただろう」


 グランデ様はそう言うと、明日話があるので、王宮に来てくれと、龍に伝え、兵士を引き連れて帰って行った。


 その日の、夕食は、料理人のミラノさんが、龍のドラゴン討伐を聞いていたのか、昨日を超える程豪華な料理になっていた。


「龍お兄ちゃん、凄いね、ドラゴン倒すなんて!」


 ユニに、そう言われ、いつもの様にユニに、デレデレになったところで、リファの「キモい」が飛んできた。


 夕食を食べ終わると、リファとユニは、満腹感からか、2人でソファーに、寝てしまった。


 ニーニャと、2人きりになった龍は、2人で庭に出て、星を眺める事にした。


「なんか、久しぶりだな、ニーニャと2人きりで、喋るの」


「そうだね、王都に来てから色々忙しかったしね」


「でも、私王都に来て良かった」


「見た事ない場所、見た事ない物、沢山の初めてがあって今凄く楽しい!」


「それに、ユニちゃんとも会えて……」


 そう言った、ニーニャの表情は、何かを考えている様な感じに見えた。


「どうしたの」


 龍がそう聞くと、ニーニャが話を続けた。


「もしね、私達が、王都に行かなくて、あの日、あの時間に、ユニちゃんの、村の近くを通っていなきゃ、ユニちゃんは、どうなって居たんだろうて考えるとなんだか怖くて」


「それにね、龍君がユニちゃんを引き取るって言ってくれたから、今一緒に、笑ったり出来てるけど、そうじゃなきゃ私、ユニちゃんの事多分ずっと引きずってたと思う」


「だからね、ありがとう、龍君」


 それは、ユニを、心から大切に思っている、ニーニャの愛なのだと、龍は思った。


「俺も、ユニと出会えて良かったと、思ってるよ」


「こんなに、楽しい生活が皆んなで送れてる」


「それに、俺はニーニャが喜んでくれてるのが1番嬉しいんだ!」


「龍君……」


 2人の鼓動が高まり、静かに顔を近づけてその唇に、触れようとした瞬間――


「ガラガラ」と、扉の開く音がした。


「おっと、邪魔しちゃたかな!」


 そこには、顔をニタニタさせながら、2人を見るリファの姿があった。


「リファ、寝てたんじゃないのか!」


 龍は、思わず距離を離してしまったが、なんだか負けた様な気がしたので、リファが見ていたが、ニーニャの顔を自分に引き寄せて、その唇に、触れた。


「な、な、何やってんだよ!」


 リファは、龍の思いもよらぬ行動に、顔を赤らめながらそう言った。


「リファ、俺のニーニャへの愛は、リファ如きじゃ止められないんだよ!」


 龍のその言葉に、ちょと悔しそうな顔をしたが、ニーニャの満更でもない表情を見ると「ユニには、見せるなよ!」と言って、家の中に、戻って行った。


「ニーニャ、ごめんつい……」


 リファが居なくなると、龍は、直ぐに謝った。


「龍君……」


「嬉しいよ」


 そのニーニャの、表情に再び感情が高まった2人は、今度は、アツい口づけを済ませると、2人で中に戻った。


 翌朝、グランデ様に、王宮に来る様に言われていた龍は、朝食を済ませると、直ぐに王宮へと向かった。


 グランデ様と、合流すると、連れて行かれたのは、国王様の所だった。


「龍君、来てくれて感謝する」


 そう挨拶すると、話を続ける。


「まずは、昨日のドラゴン討伐深くお礼申し上げる」


「それで、今日来てもらったのは、そのドラゴンに関しての事だ!」


 国王様は、そう言うと、説明を続けた。


「昨日ドラゴンが、出現した時、一瞬だが膨大な魔力をここからそう遠くない場所で、観測班が感知した」


「恐らくは、私達が探していた、進化物に変化を加えた魔族だと推測している」


「今までは、ドラゴンや変進物が現れた場所が王都から遠かった為に、観測出来なかったが、今回初めてそれが出来た」


「多分、ドラゴンや変進物は、その魔族が操れるのだろう」


「操れる距離にも限界があるから、今回観測班に、観測されたのだと思う」


 そう国王様が説明してくれると、本題を切り出した。


「そこで、龍君にお願いがある」


「その、膨大な魔力が観測した所を、調査しに行ってきて欲しい」


「万が一その魔族がまだそこにいた場合、対処出来るのは、龍君、キミしか居ないからだ!」


「勿論、パーティーメンバーも同行して構わないし、グランデも同伴させるので、どうかお願い出来ないだろうか」


 (確かに、ドラゴンや変進物を直ぐに、対処出来るのは俺しか居ないし、その魔族を捕らえなければこの状況は変わらないか)


 龍は、そう考えるとその依頼を受ける事にした。


「分かりました!」


 その返事に、国王様は、そっと肩を撫で下ろした。


「ありがとう、龍君」


「それと、コレを」


 国王様は、大量の何が入って袋を龍に渡した。


「これは、……」


 中には、何と大量の金貨が入っていた。


(これって、金貨一枚が約1000万円だから、少なくとも100枚は、あるだろ……10億円!!)


「国王様、これは、一体……」


「昨日の、ドラゴン討伐の報酬だ」


「いや、いくら何でも多過ぎじゃ……」


「龍君、死人も怪我人も出ずに王都を守れたのだ、それでも少ない方だと私は、思う」


 龍は、流石に躊躇したが、国王様の面子を保つ為に有り難く受け取る事にした。


 調査は、明日行く事が決まると、家に帰り国王様からの依頼の事をニーニャとリファに話し、同行するかどうかを聞いた。


「もしかしたら、危険な依頼になるかも知れないから、2人は、行かなくて大丈夫だよ!」


 龍がそう言うと、リファは、眉間にシワを寄せながら、「はぁー」とため息を付いた。


「龍、それじゃパーティー組んだ意味無いでしょ!」


「私達は、龍みたいに強い訳じゃないけど、3人居るから出来る事もあると思うんだよ!」


 リファのその言葉に、ニーニャも強く頷いた。


「龍君、私達は、パーティーそうでしょ!」


「だからね、危険な時だって龍君と一緒に着いて行くからね!」


 その2人の、決意に返す言葉は、不要だと思った龍は、3人で行く事にした。


「でも、ユニは、置いて行こう!」


「流石に何かあったら、まずいし、家には、執事のハヤカワさんに、メリッサさん、ミラノさんも居るからそっちの方が安心だろ!」


 そう決まると、龍はユニの部屋に行き、明日は依頼で3人で出掛けるから、お留守番していてと伝えた。


「分かったよ、ユニお留守番してるね」


「龍お兄ちゃん、お仕事頑張ってね!」


 ユニは、そう言うと、龍のほっぺに、「チュ」とキスをした。


 その、可愛すぎるキスに、ユニに頬ずりしながら、

「ユニ〜直ぐに帰ってくるからな〜」と言った所をまたも、リファに見られ「ロリコン、本当キモ」とゴミを見る様な目で言われた。


 明日は、朝グランデ様が馬車で迎えに来るので、遅れない様に、皆んな早めに寝る事にした。


 朝になり、グランデ様が馬車で来ると、ユニとのしばしの別れが、寂しくなり「ユニ〜」と甘えていると、まさかの、ユニに、「龍お兄ちゃん、人を待たせたらダメだよ」とお叱りを受けたので、渋々馬車に乗り込んだ。


 朝の眩しい光が、目につきながらも、それが何となく気持ち良く感じた。


「じゃあ、出発だ!」


 龍の、その声にグランデ様は頷くと、目的地向けて、馬車を走り始めさせたのであった。

 

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