第13話 ゴールドギルド
王都に到着して、初めての朝を迎えた龍は、目を覚ますと、布団の中に誰か居る事に、気付いた。
「あれ、もしかして俺昨日、大人の階段登ちゃったかな」
思い切って、布団のをめくると……
「ユニ、どうしてここに」
ユニは、眠い目を擦りながらも、その質問に答えた。
「だって、部屋広くて、怖かったんだもん」
「一緒に、寝ちゃダメだった……」
龍は、ユニのその愛らしい言動に、心打たれると、甘やかしモード全開に、なった。
「いんだよ〜 ユニ、怖かったら、いつでもお兄ちゃんと寝ようね〜」
「ユニの、為ならなんでも欲しい物買ってあげちゃうぞ〜」
夜中に、龍の部屋に入ったユニは、扉を閉め忘れた様で、部屋の前を通りかかったリファは、その光景に、絶句した。
「うゎ、マジキモい、ロリコン……」
その言葉だけを言い残して、リファは、去って行った。
リファを追いかけて、慌てて弁解するも、ユニは、今後、ニーニャかリファの部屋で寝る事になった。
朝食を食べ終わると、王都に来たばかりなので、必要な物の買い出しに、行く事にしたがリファは「面倒だからパス」と言うと、部屋に戻って行ってしまった。
メイドの、メリッサさんが、良い店を知っているらしいので、案内してもらう事にした。
「ユニは、なんか欲しい物あるか」
龍がそう聞くと、ニーニャがある事に気付いた。
「ユニちゃん、そのまま、王都に来ちゃったから洋服とか買わなきゃ!」
確かに、襲われて逃げてきたから、村からユニの物は、何も持って来てなかった。
今は、とりあえず背丈が似てるリファの服を着ていた。
「じゃあ、まずは、ユニの服買いに行くか」
そう決めると、メリッサさんが行きつけのお店に案内してくれた。
「そう言えば、メリッサさんもユニと同じエルフ族だけど、エルフ族の村には、住んで無いんですね」
先頭を歩いていた、メリッサさんは、話し易い様に、皆んなと歩幅を合わせた。
「小さい頃は、住んでましたよ!」
「ただ、エルフ族って、結構両極端なんですよ」
(メリッサさんの、話によると、エルフ族は、他の種族とは、暮らさずエルフ族だけで、生活する事を厳守とする、旧エルフ派と現代人らしく、色々な文化や種族との交流を促進する、現エルフ派に別れているらしい)
その観点から行くと、ユニの村は、恐らく旧エルフ派なのだろう。
「うちは、元々旧エルフ派でしたが、両親がやっぱり今の時代は、他の種族との交流が大事だろうって考えて、村から出たんです」
「それで、王都に来て、暮らしていたんで、あまり村の事は、覚えていないので、どちらが良いかは、よく分かりません」
「でも、1つ確かなのは、王都に居たから、今こうして、皆様と居られるのです!」
「だから幸せです!」
そのメリッサさんの、透き通る程綺麗な笑顔に、心温まった。
「着きました!」
メリッサさん、オススメの洋服屋さんに着くと、ニーニャとユニは、見た事のない洋服の数に、衝動を抑えきれず、お店の中に、消えて行った。
暫くすると、ニーニャとユニが沢山の洋服を抱えて戻ってきた。
「ユニ……コレ……欲しいな……お兄ちゃん」
ユニの、あまりの可愛いさに悶絶した。
「ユニ〜お兄ちゃんが〜全〜部買ってあげるよ!」
そう言うと、龍は、ユニとニーニャの持っていた洋服を全て抱えていき、レジへと持っていた。
「龍君、ごめんなさい、私のまで買って貰ちゃって」
龍は、ニーニャのその言葉に「大丈夫だぜ」と煌びやかな笑顔で返した。
その後、色々と必要な物を買い終えると、メリッサさんに案内してくれたお礼として、昼食をご馳走した。
家に戻り、少し休憩をすると、昨日国王様が言っていた、王都の、ギルド、ゴールドギルド会に、ニーニャとリファを連れて、顔を出す事にした。
「ユニ〜ちょとだけお留守番しててね!」
リファは、ユニから中々離れようとしない龍の首根っこを掴むとそのまま外まで、引きずり出した。
「龍、ユニは、赤ちゃんじゃ無いんだから、もうちょっと普通に喋ってくれないかな!」
リファの注意を無視しようとしたが、ニーニャにも怒られた。
「龍君、赤ちゃん言葉は、言語力を低下させるからダメだよ!」
ニーニャにも、怒られた龍は、あからさまに、落ち込んだ。
「以後、気をつけます……」
龍が反省したところで、丁度ギルドの前に着いた。
「ここが、ゴールドギルド会か、パープルの3倍ぐらいは、デカイな!」
「当たり前だろ、王都のギルドなんだから」
リファに、さらりと、当たり前の事を言われた龍は、またしても落ち込んだ。
「じゃあ、中に入ろうとか」
リファがそう言って、扉を開けた瞬間
「うおーーーー」
ギルドで何故か歓声が起こった。
「えっ、何事!」
その異様な、歓声に訳が分からず、立ち尽くしてる3人に、1人の女性が近づいてきた。
「ごめんなさい、ニーニャさん、リファさん、龍さん」
その女性は、何故か俺達の事を知っていた。
「ちょとうるさいので、こちらにどうぞ」
そう言うと、その女性に、ギルド内にある会議室に、案内された。
「騒がしくて、ごめんなさい」
「皆んな、3人の事待ってたのよ」
「凄腕の剣の使い手のニーニャさんと元王宮魔族隊隊長のリファさん、それに、オールスキル持ちの龍さん、そんな最強のパーティーが来るって国王様が言っちゃたから、あんな感じになっちゃって」
歓声の、謎が解けたところで、その女性が自己紹介をした。
「初めまして、ゴールドギルド会、ギルドマスターのマルセリナと、申します」
まさか、この細身の女性がギルドマスターとは、思っていなかった龍は、少し驚いた。
「マルセリナ、ペラペラ喋んなよな」
リファは、親しげに、そう言った。
「あれ、リファは、知り合いなの」
「当たり前だろ、王宮魔族隊にいたんだから」
リファの、2度目の当たり前発言に、返す言葉も出なかった。
リファの話しによると、マルセリナさんは、リファと同じ魔族で、リファに継ぐ王国2番目の魔法の使い手らしい。
更に驚きなのは、リファがマルセリナさんの魔法の師匠だと言う事だ。
因みに、見た目は、20台後半位だが、実年齢は、150才だそうだ。
「マルセリナさんは、リファより年下なのに大人ぽいんだな」
龍は、そう皮肉を言うと、リファは、龍の顔目掛けて全力で拳を振るった。
「龍さん、国王様から、オールスキル持ちと聞いたいるのですが、本当なのですか」
龍は、説明するよりも早いと思い、ギルドカードをマルセリナさんに見せた。
「何これ…………」
龍の、ギルドカードのステータスを見たマルセリナさんは、動揺を隠しきれなかった。
「私は、国王様からは、オールスキル持ちとしか、聞いていませんでした」
「オールスキル持ちのですら、この世界に龍さん1人だけなのに、通常ステータスもオールMAXとは、龍さんは、何者なのですか」
龍には、もう自分の素性を隠す理由が無いので、マルセリナさんにも素直に、話した。
「はぁ、全異世界、最強の存在……」
あまりに、スケールのデカイ話しに、マルセリナさんは、開いた口が塞がらないまま、ヨダレを垂らしていた。
龍は、そのどこかで見た光景に、この2人は、本当に師弟同士なんだなと、納得した。
「マルセリナ、龍の力は、本物だよ!」
「マルセリナも、龍が、進化物の熊を倒したのは、知ってるよな」
マルセリナさんは、頷く。
「その熊を倒した時、一緒にいたんだが、一撃だ」
「1……撃」
「ああ、一撃でその熊を倒した」
「しかも、その熊、グランデによると進化物じゃなくて変進物らしい」
リファ話しを聞いた、マルセリナさんは、目をギラギラ輝かせると、龍の、技を見たいと言い出した。
リファの時と、展開が同じ過ぎて、マルセリナさんは、リファの血を濃く継いでるなと、心底龍は、思ったのだった。
あの時と同様に、空間魔法、スペースの異空間の中で、戦闘53万の、技をやると、何故か手加減したはずなのに、異空間が壊れてしまった。
「どう言う事だ……」
龍の、疑問にリファが答えた。
「マルセリナの、空間魔法の精度が低いからだよ!」
「マルセリナ、念の為私も、空間魔法を展開していたから大事には、ならなかったが、それが無かったら今頃大惨事だぞ!」
「もっと訓練して、精度を上げろ!」
リファの的確な指摘に、マルセリナさんは、返す言葉も無かった。
ただ、リファのその姿は、ちゃんと師匠らしくて、なんだかカッコよく見えた。
マルセリナさんに、対するリファの説教が終わると、ギルドの利用方法の説明をしてくれた。
「ギルドで、依頼を受ける時は、掲示板に貼ってある、依頼書を持って受付に、提出して下さい」
「その際に、ギルドカードの提示が必要になるので忘れない様に注意して下さい」
「また依頼完了には、証拠品、討伐した物の遺体の一部や依頼人のサインが必要になります」
「それが、確認できますと、依頼の報酬が支払われます」
マルセリナさんの、説明が終わる頃には、日が暮れていたので、依頼は、明日以降から受ける事にした。
マルセリナさんに、挨拶をして帰ろうとしたその時、いきなり大きな音で、警報何なった。
「緊急事態警報、緊急事態警報、王都上空に、物体接近」
その、警報音が、ひたすらに繰り返された。
「皆んな、外に出て!」
マルセリナさんの、緊迫した声に、慌てて外に出た。
未だに、鳴り響く警報音の中、急いで高台に登り空を見回すと、こちらに向かって、何か飛んで来るのが見えた。
「あれって……」
それは、漆黒の翼に、巨大な身体、そうそれは、龍がこの世界で初めて戦った、この世界最強の生物「ドラゴン」だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます